第20話 キングウルフの群れ、討伐完了
というのもキングウルフの習性として、ボスを中心に強烈な上下関係があり。
ボスが生きている限りは、群れのキングウルフは群れを離れることが、ほぼないからだ。
つまりボスが生きてこの場にいる限り、この群れ全体がこの場に居続ける。
逆に言えば、ボス・キングウルフを倒してしまうと、群れがてんでばらばらに逃げ出してしまう可能性があった。
ゆえに他のパーティが群れの数を減らすまで、もう少し時間を稼ぐとしよう。
俺ならそれくらいの時間稼ぎは造作もない。
俺は再びボス・キングウルフとへ攻撃を開始した。
鋭い牙と爪による攻撃を受け止めながら、こちらからも適度に反撃をしてダメージを与えつつ、だけど殺しはせずに、俺はじっくりと時間を稼いで「その時」を待つ。
ギャギン!
ギャン!
ギン!
ギャギン!!
「どうしたどうした? おらおら!」
ザシュ!
俺の剣先がボス・キングウルフの右腕の付け根を、浅くだが切り裂く。
グルルルルルルッ!!!
瞳に怒りをたぎらせて、荒ぶるように爪を振るうボス・キングウルフ。
ギン!
ギャン!
ギギャン!
ギン!!
だがそれも俺の剣で全て防御され、最後まで俺を捉えることはできなかった。
そうして俺とボス・キングウルフが戦闘を続けている間に、キングウルフの群れは他の討伐メンバーに次々と討伐されて数を減らしてゆき。
「22体! 残り4体です!」
ついにリーリアから待ち望んでいた声が届いた。
「やっと終わらせられるか」
ここまで時間稼ぎに徹し、力をセーブしていた俺の身体と剣は、爆発的な力を与えられ、流れるように動きだした――!
俺はボス・キングウルフの右爪の振り下ろしを完全に見切り、一瞬にして懐に飛び込む。
「お前の攻撃のリーチも癖も、もう全部とっくに見切ってんだよ」
グルゥアっ!?
ボス・キングウルフの瞳が驚愕に見開かれた時には既に、俺の剣はその首元に迫ろうとしていた。
ブンっ!
鋭い風切り音を立てながら横一文字に振るわれた剣が、ボス・キングウルフの首を薙ぐ!
ザシュッ! という斬撃音のあと、少し遅れてゴトリとボス・キングウルフの首が落ちた。
首から上を失ったキングウルフの巨体は、ビクリと一度大きく震えると、動きを止め。
鮮血がゴプっと噴き出すとともに、糸が切れたように崩れ落ちた。
「ボス・キングウルフを討ち取ったぞぉぉぉ!」
俺が剣を天高く突き上げると、
「うぉぉぉ! やったぜ!」
「さすがは『神童』フィブレさんだ!」
「ドラゴンを倒したSランク冒険者は伊達じゃねぇ!」
他のメンバーたちが一気に沸き立つ。
「さぁお前たち、最後の仕上げだ! この群れはこのままここで全滅させる! ここまで来たらもう1体たりとも逃がすな! 気合を入れ直せ! 完膚なきまでに叩き潰すぞ!」
「おうともよ!」
「行くぜぇぇぇ!」
「うぉぉぉぉぉっ!」
戦闘開始から時間が経ってもなお、味方の士気は極めて高く。
対してボスを失ったキングウルフたちには最早、生き残るすべは残されてはいなかった。
残った4体のキングウルフたちは、ほどなく討伐される。
俺は何かあった時にすぐに助けに入れるようにと、戦場全体に目を光らせていたんだが。
討伐メンバーたちは高い練度で、何事もなく残るキングウルフたちを仕留めてみせた。
この素晴らしい戦いっぷりには、ギルドを預かるギルドマスターとして、ちょっと嬉しさを感じる俺だった。
「26体目! これで全滅です!」
リーリアの声とともに、
「うおおおっ!」
「やったぜ!」
「Aランク魔獣の群れを全滅させたぞ!」
今日一番に大きな歓声が沸き上がった。
最終的に、こちらの被害は軽傷者が数名のみ。
キングウルフの群れは、ボス・キングウルフを含めた全てを残さず討伐。
この戦いは俺たち討伐隊の完全勝利に終わった。




