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【長編version】ギルド移転物語~ギルマスの俺、交渉でウエメセ貴族にさんざん足元を見られてきたので、ギルドを隣町に移転することにした。うちの経済効果のでかさを舐めんなよ?  作者: マナシロカナタ(かなたん)★ネコタマ3巻&恋AIフラグ1巻★発売
第1章 「嫌なら出て行ってくれてもいいんじゃよ? 他にも借し先はいくらでもあるでのぅ」

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第2話 ギルマス秘書、リーリア・エルスマン(17歳)

 俺は冒険者ギルドまで戻ってくると、ギルマスの執務室に入り、古めかしいイスに腰を下ろした。


 俺は冒険者としては平均的な体格であるにもかかわらず、古びたイスはギシギシと不協和音の悲鳴を上げる。


「いい加減、これも買い換えたいんだけどなぁ……はぁ……」


 一人というのもあって、ついついぼやきという名の独り言がこぼれ出てしまう。

 もちろん、まだ使えるものを買い替える無駄金などあるはずもない。


「自分の金で買い替えてもいいんだけど、それはそれで『ギルマスは自分の椅子だけ買い替えた』とか邪推されても困るしなぁ……ま、あと2,3年はもつだろ」


 サー・ポーロ士爵に無理難題をふっかけられた直後なのもあって、ため息とぼやきが止まらないでいると。


 コンコン。

 ノックの音がして、


「フィブレさーん、入りますよぉ」


 明るくて元気な声とともに、俺の返事も待たずにドアが開き、ギルド職員の女子制服を身に着けたうら若き少女が1人、執務室へと入ってきた。


 ポニーテールの明るい金髪がトレードマークの少女の名前はリーリア・エルスマン。


 先代ギルマスのお孫さんで、Bランクの冒険者だ。

 今は17才だったかな。


 喜怒哀楽が素直な子で、冒険者としては可もなく不可もなくなのだが。

 しかし彼女には極めて優れた特技があった。


 ソロバンと呼ばれる東方の特殊計算アイテムを使いこなす、算術のスペシャリストなのだ。


 4桁、5桁の数字くらいならソロバンすら使わず一瞬で暗算したりと、数字の扱いにはめっぽう強く、今は俺の秘書をやってもらっていた。


 特に経理面では全幅の信頼を置いている。

 ちなみに俺は計算とかそういうのがあまり得意ではなかった。


「いつも言ってるだろリーリア。ちゃんと返事を待ってから部屋に入れってさ」

「やだなぁ、他の人に対してはちゃんとしてますよー。フィブレさんだからじゃないですかぁ」


 俺がやんわりとたしなめると、リーリアは明るい笑顔であっけらかんと言い訳を返してきた。


「俺以外の誰かがいるかもしれないだろ?」


「さっきまで誰もいなかったギルマス執務室に、フィブレさんが一人で入りました。では問題です。中には誰が何人いるでしょう?」


「はいはい、中には俺1人しかいませんよ」

「ふふん! ですよね!!」


 俺の答えに、それはもう満足げな顔を返すリーリア。


 俺も別にバカではないと思うんだが、リーリアは別格だ。

 頭の回転と口のうまさではとても勝負にならない。


 俺は話を変える。


「それで帰って早々、どうしたんだ? 何か急用か?」


「どうしたもなにも、定例協議でのサー・ポーロ士爵との交渉はどうだったか、知りたいんですよぉ」


「ああ、うん、そのことな」


 サー・ポーロ士爵とのやり取りを思い出して、俺は心の中でため息をついた。

 

「ほら、わたしも王都の家賃を調べたりとか、要望書作りのお手伝いをしたじゃないですか? だから上手く行くかなぁ、って気になってたんですよ」


「リーリアにはほんと助けてもらったよ。俺一人じゃあの要望書はとても作れなかったからさ」


 いろんな数字を比較し、説得力のある要望書を作ることができたのは、算術のスペシャリストたるリーリアがいたからに他なかった。


 しかし――


「それでそれで、交渉は上手く行ったんですか!?」


 ポニーテールを揺らしながら、執務室の机にバンっと手をつき、ずいっと身を乗り出してニコニコ顔で尋ねてくるリーリアに、俺は大きな申し訳なさを感じながら言った。


「いいや、むしろ最悪の結果だった。次の契約更新から施設利用料を2倍にすると言われてしまったよ」

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