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第104話 御前裁判(1)フェイス・オフ

 俺とエスコルヌ女子爵が指定された時間に王の間へと入室すると、そこには宰相フローレンスをはじめ、国王陛下を支え国政を司る貴族の重鎮たちが勢ぞろいしていた。


「皆々様におかれましては、わたくしどものためにお集まりいただき、誠にありがとうございました。お忙しい中このようなご迷惑をおかけすること、誠に申し訳なく存じます。フィブレ士爵ともどもまずは皆様に多大な感謝を致しますとともに、心よりのお詫びを申し上げます」


 エスコルヌ女子爵は入室するや否や、まず宰相フローレンスたちに丁寧なあいさつと謝辞を述べた。

 エスコルヌ女子爵の礼に合わせて、俺も深々と礼をする。


「これはこれはエスコルヌ女子爵、そしてフィブレ士爵。遠方よりお越しいただきご苦労様にございます。陛下がお越しになるまでまだ少し時間がありますので、そちらにてお待ちください」


「かしこまりました」


 指定された先に移動しながら、


「クラリス、頼りになるよ。俺じゃあ、ああはスマートにいかない」


 俺は小声でそっとささやいた。

 すると、


「ふふっ、適材適所というものですわ。こういう形式ばったことは、どうぞわたくしにお任せくださいませ」


 エスコルヌ女子爵は小声で、けれど声を弾ませながらそう返してくると、クスリと笑みを浮かべた。


 本当に頼りになる。

 俺じゃ丸暗記したのを、なんとか棒読みするのが関の山だろう。


 それと比べたらかなり心証がよくなったはずだ。

 心証はいいに越したことがないからな。


 そして少し遅れてサー・ポーロ士爵と息子のシグマが、王の間へと入室してきた。


「やぁやぁ皆様方。サー・ポーロ士爵である。今日は国王陛下に呼ばれて参ったのじゃが、ワシらはどこに行けばよいのじゃ?」


 サー・ポーロ士爵はろくに挨拶もせずにズカズカと入室すると、なんとも偉そうな態度で宰相フローレンスに尋ねた。


 宰相フローレンスの眉がピクッとほんの一瞬動いたのを、俺のSランク冒険者としての動体視力が捉える。


 今のは不快感だな、間違いない。


 たしか宰相フローレンスは、侯爵の爵位を持つ大貴族だったはず(エスコルヌ女子爵につきっきりで教えてもらって、徹夜で覚えた)。


 それが初対面の成り上がり士爵に、こうも馴れ馴れしい口調で話しかけられたのだから、不快感を感じて当然だろう。


 貴族とはそういうイチイチ面倒くさい集団なのだ。


(だから俺はずっと貴族になんてなりたくなかったんだが、今さら言っても始まらない)


「向こうの奥へどうぞ。まもなく陛下が参られます」


 宰相フローレンスは、さっきのエスコルヌ女子爵や俺への態度とは打って変わって、事務的にサー・ポーロ士爵を案内した。


「うむ」


 それに気づかずに鷹揚にうなずくサー・ポーロ士爵。


 そして移動の途中で俺と視線が合うと、


「フンっ!」


 サー・ポーロ士爵はいまいましげな表情を見せると、露骨に顔を背け。


「……」

 シグマはそもそも俺と顔を合わせようとはしなかった。


 その態度から見て、シグマは完全にビビっているのだと俺は確信を得る。

 心が折れているのが完全に見てとれた。


 OK、シグマはもう相手にする必要はないだろう。


 ちなみにリーリアは貴族ではないので、この場に直接参加することはできない。

 国王陛下の御前に、平民がみだりに立ち入ることは基本的には許されないからだ。


 ま、リーリアにも後で出番があるからな。

 その時まで少しだけ我慢してもらおう。


 そしてついに御前裁判が幕を開けた。

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