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第102話 復讐戦の始まり――!

 そして足元をしっかりと固めた俺は、満を持してサー・ポーロ士爵との復讐戦に臨んだ。


 まずはサー・ポーロ士爵と息子のシグマに決闘状を送り付けた。

 古来よりの貴族のしきたりに従った、正当な手続きに(のっと)ってだ。


(書式だの文面だのなんだのは、エスコルヌ女子爵がしっかりと事前に文献を調べて準備してくれていたので、スムーズに進んだ)


 が、しかし。

 早々に、決闘は受けないとの書状が返ってきていた。


「『貴公は決闘を申し込まれたが、残念ながら当方には思い当たる節はない』ですか。やはりサー・ポーロ士爵は決闘を受けていただけませんでしたわね」


 エスコルヌ女子爵の屋敷、その執務室にて。

 届いたばかりの書状を読んだエスコルヌ女子爵がつぶやいた。


 執務室には他に、俺とリーリアがいる。


「まぁ当然の判断だよな。想定の範囲内だ」


 俺がすぐさま同意すると、


「はい。フィブレさんと決闘して勝てる見込みなんてありませんから」


 リーリアもうんうんとうなずいた。


「御用商人あがりで戦闘能力皆無のサー・ポーロ士爵が、凄腕の暗殺者すら返り討ちにしてみせたSランク冒険者だったフィブレ様との決闘を受けるなど、どう考えてもありえませんものね」


 書状を読んだエスコルヌ女子爵には、まったく驚いた様子はない。

 もちろん俺にもリーリアにもだ。


「あったら、そいつはよほどの自信過剰か、ただの馬鹿だろうな」


「ですね。そしてこれで、まずは第一段階完了です……!」


「ええ、満を持して次のステップへと参りましょう」


 そう。

 これはあくまで次へのステップにすぎなかった。


 本命はもちろん、国王陛下に裁定をあおぐ御前裁判である。


「さぁ次が俺たちの本命、御前裁判だ」


 そのために証拠や証言を集めてきたのだ。


 俺の大切なリーリアが殺されかけた恨みを晴らすべく、完膚なきまでに、合法的に、誰もが認める形で叩き潰してやる。


「国王陛下の裁定を仰ぐ御前裁判を嘆願するには、まず最初に相手に正式な決闘を申し込み。それが断られ、これ以上の解決手段がないことを明らかにすることが必要……貴族のしきたりは本当に面倒ですよね」


「ふふっ。ですが面倒ゆえに、相手も簡単には逃げられないのですわ。しきたりはわたくし達だけでなく、相手方をも同じように縛るのですから」


 エスコルヌ女子爵は不敵に笑うと、俺に一枚の書状を手渡してきた。


「こちらが国王陛下に訴えるための嘆願書になりますわ。すぐにシノビさんに持たせて、王都に出立させてくださいまし」


「本当に助かるよ。こういう堅苦しいのは苦手だからさ。普段はこういうのを任せているリーリアも、貴族のしきたりまでは知らないし」


「その辺りはこれから必要になってくると思いますので、勉強していこうと思います!」


「ふふっ。リーリアさんは本当に真面目ですわね。もちろんわたくしが一からすべて教えて差し上げますわよ」


 やる気を見せるリーリアに、エスコルヌ女子爵が優しく微笑む。


「ありがとうございます。全力で頑張りますので!」


「そんなに肩ひじを張らなくても、ゆっくりで構いませんわよ。詰め込んだだけのふわっとした知識よりも、丁寧に積みあげた深い知識の方が、わたくしは大切だと思いますから」


「は、はい!」


 リーリアが感銘を受けたようにエスコルヌ女子爵の手をつかんだ。

 しかしすぐに失礼だと思ったのか、ハッとしたように目を見開くと手を放した。


 けれどエスコルヌ女子爵は、リーリアの手をそっと優しく両手で包み込んだ。

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