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第100話 ぶっちゃけ完全な逆恨みな件。それはそれとして・・・

「暗殺者集団がこの契約書をサー・ポーロ士爵に書かせたんだ。これから先に徹底的にゆすりたかりをするためにな」


「でしたらサー・ポーロ士爵はそんな危険な契約書は、とっとと捨ててしまえばよろしいのでは? 残しておく意味がありません」


「まったく同じ契約書を暗殺者集団も持っているはずさ。サー・ポーロ士爵のサインと貴族印の入った契約書を。だから捨てても意味はなくて。逆に捨てたことで信頼関係が崩れただのなんだの言われて、さらにゆすりたかられることになる」


「なるほど……。やはり悪い人たちとはお付き合いしないに限りますわね。くわばらくわばらですわ」


「それこそ骨の髄までしゃぶりつくされるでしょうね」


 それがわからなかったサー・ポーロ士爵ではないだろう。

 そんな大きなリスクを負ってまで、俺を殺したかったのだ。


 ……だがな?

 言わせてもらうがな?


 逆恨みも甚だしいんだよ! 


 俺はただ、法外な家賃が払えなくて仕方なく引っ越しただけだからな!?


 なんで命まで狙われなきゃならないんだ!

 商人ギルドや飲食ギルドなんかの大ギルドがついてきたのも全部、それまでのアンタの行いのせいだろうがよ!


 全部、自業自得じゃないか!

 俺は何も悪くないぞ!


 思わず心の中で叫んでしまった俺だ。


「ええと、フィブレ様? どうされました? なんだかカッカしてるように見えますけど?」


「ああいえ、何でもないんだ」


 どうやらいき場のない憤りが、顔に出てしまっていたようだ。


「それにしても、フィブレ様はそういった悪いことにもお詳しいのですね?」


「一応言っておきますが、俺はそういうことはしていませんよ? 夜の酒場じゃそういう話はまぁまぁ聞くので」


 口の軽い奴がいつにも増して口が軽くなるのが、夜の酒場という場所だった。


 これはもう仕方がない。

 酒を飲んだら口が軽くなる。


 情報屋が酒場に入り浸るのは昔からの常だし、むしろ(とが)める方が間違っている。


 ゆえに俺がギルド移転の話をギリギリまでギルドメンバーに伝えなかったのも、ある意味しかたがなかったのである。


「ふふっ、なんだか楽しそうですわね。わたくしも一度、夜の酒場というものに行ってみたいですわ」


「さすがに夜の酒場に貴族の女性は連れてはいけないかなぁ」


 それはもう低俗な言葉が投げかけられて、大変に不快な思いをすることは想像に難くない。


 それがわかっていてエスコルヌ女子爵を連れていくことなど言語道断である。


 ちなみに同じ理由で、リーリアも夜の酒場に連れて行ったことはなかった。

 まぁリーリアはお酒よりも、甘いお菓子が好きな子だけど。


「あらら、残念です」


「お酒なら俺がいくらでも付き合うんで」


「あら、それは夫婦酒(めおとざけ)という意味でよろしいのでしょうか?」


 少しいたずらっぽく尋ねてきたエスコルヌ女子爵。

 明らかに俺をからかおうとしているのがわかる。


 だから俺は満面の笑みでうなずいた。


「ああ、そのつもりだよ。俺はクラリスを愛しているから、夫婦(めおと)の酒を交わしたい」


「ぇ――、あの――」


 からかい一転。

 狼狽するエスコルヌ女子爵の頬に、俺は右手をそっと添えると、その唇に優しくキスをした。


「愛してるよ、クラリス」


 愛の言葉をささやきながら、もう一度キスをする。


 今度は熱く、強く、深く――なにより情熱的に。


「い、いけませんわ。まだ日が落ちておりませんもの」


 唇が離れた途端、エスコルヌ女子爵が恥じらうようにふいっと視線を逸らした。


 からかっていた時とは打って変わって、初心な乙女のように、その頬は熟れたりんごのごとく赤く染まっている。


「構わないさ」


「明るいと恥ずかしいですわ……」


「俺はワガママなんだ。だから今、クラリスを抱きたい」


「もぅ、貴族になったとたんに強引なんですから。なんだか昔のヤンチャな頃のフィブレ様を思い出しちゃいました」


「昔の俺は嫌いかい?」


「ふふっ、それこそまさかですわ。わたくしを助けてくれたあの頃を思い出して、胸がキュンとトキメキを覚えますもの♪」


 エスコルヌ女子爵が自分から唇を寄せてきた。


 俺は情熱的なキスで応える。

 口づけを何度も交わすと、俺たちは寝室に行って、互いの愛を確かめ合ったのだった――

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