番外編 ソウルレイブ物語
——夢を見ていた。
いや、正確には夢の中で、かつての自分が“ゲーム”をプレイしている光景を、どこか冷めた意識で眺めていた。
指がコントローラーを握り、目の前の画面には懐かしい光景が映し出されている。
『ソウルレイブ物語』——
剣と魔法のファンタジー。 世界は“虚”という、魔力が集まり生まれた存在によって滅びかけていた。
主人公は無名の青年。 そして彼を支えるのは、かつて“人”だった仲間たち。
彼らは命を懸けて戦い、やがて“聖獣”として魂だけの存在になり、主人公と契約し、武具として力を貸す。
ソウルフォージ——魂を宿す武具。
画面の中の戦闘は激しく、どれほど仲間を失っても前に進むことしか許されなかった。
そして——
最終決戦。
意志を持った“虚”が、世界そのものを飲み込もうとする。
仲間たちは、もう“人”の姿ではない。 最後の核となり、ソウルフォージとして主人公の腕に宿る。
『……これが、最後の戦いだ』
自分の声がスピーカー越しに響く。
——画面の中で、主人公は剣を構えた。
誰もいない背後。消え去った仲間たちの核が、静かに光を放っていた。
……ふ、と意識が揺らぎ、俺は目を覚ます。
頬には、なぜか涙の跡があった。
ただのゲーム——そう、ただの……。
でもその胸の奥には、確かに残っていた。
あの時、俺は本気で“命”を背負っていた——そんな気がしていた。