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しかし、すべてがうまくいっているわけではなかった。


貿易業を担い、成金とも表されていたメイソン家の令嬢が番になったことで一部貴族からの反発はあったのだ。


位が高い貴族ほどその傾向は顕著で、ラルフの前ではおくびにも出さないが、リディアに対しての風当たりは強かった。

皇太子の婚約者として様々なパーティーで陰で嫌がらせをされる。

王城に紛れ込んだ従者が食事に毒を盛るなど日常茶飯事だった。


彼らの目的は一つだ。リディアの体を弱らせて、子供を作れない体にすること。


ラルフの父である王は体調を崩しがちで、いつ崩御してもおかしくないと囁かれていた。

表舞台は王を心配する形を取るものの、裏では混沌を極めて、その隙にリディアを始末して自分の娘にすげ替えるということを考える貴族も多数いた。


ラルフもまだ幼い。自分の番を守り切れる力は持っていなかった。そしてリディアもまた、性格上表だって騒いだりも出来ず、食事もいつ毒を盛られるかと恐れることで細くなり、健康面に大きく影響していった。

メイソン家も王城に介入出来るほどの力はまだ蓄えられておらず、幼い二人で支え合うことしか出来なかった。


それから7年。王が崩御した。

リディアが12歳の頃だった。


若くして王となったラルフは、国を統べる者としての業務に手一杯で、リディアとも職務を通じてしか交流を持てなくなっていた。

リディアもまた、ラルフを支えたいと必死に皇后としての職務と、そして王の補佐もこなし続けていた。


その隙をついて、リディアへの攻撃も激化していき暗殺ともいえるものもあった。

食事に毒を仕込まれて、テーブルの上にリディアの血が飛び散ることも度々あった。


暗殺者は処刑されたが、それが王城の混乱を表しているようで、見守っていた貴族達も徐々に距離を置き始めるようにもなっていた。


リディアが血を吐きながらも皇后で居続けたのはラルフへの愛だからだ。

彼が囁いてくれた言葉、過ごした時間がリディアの支えになっていた。


けれど、大きな転機が訪れる。


リディアに健康面で不調が見つかったのだ。

貧血で朝起きられないことが続き、立ち上がってもふらついてしまう。

丸三日休み、医師の診察を受けた時に衝撃的な言葉を告げられた。

「長年の毒の摂取で、一部臓器が弱っています。……もしかしたら、子供を産めないかもしれません」

そばに立っていたラルフが、涙をためながらリディアの手を握った。

「すまない、本当にすまない。私がもっと力があれば君を守れたのに」

リディアはその手を握り返す。

「いいえ、ラルフは守ってくれたじゃないですか」

「こんな辛い思いをさせるなら、リディアを番に選ばなければ……」

「そんなことを言わないで!」

か細くも悲痛な叫びにラルフは驚いた。

「初めはあなたに選ばれたのかもしれない!でも、この7年で、私もあなたを愛し抜くことを決めたの!だから、そんなこと言わないで……」

「リディア……」

ラルフは泣くリディアを抱きしめた。


けれど、それからラルフがリディアと私的な交流を持つことが徐々に少なくなっていった。

王と皇后としては交流がある。けれど、番として二人だけの時間を過ごすことが少なくなっていたのだ。


初めは、リディアに対して負い目を感じているのだと思った。

リディア自身も、皇后として彼を支えなければならないのにラルフの前で泣いてしまったので気恥ずかしかったのでそれを気にしないようにしていた。

けれど、ラルフの目に違和感を覚えた。


今までは、番の自分に対して向けられていた情熱や愛、執着といった熱が減ったように感じたのだ。


それは顔を合わすたびに感じるようになった。

リディアは恐れて、ラルフに確かめられなかった。「自分のことをまだ愛しているか?」と。


リディアは思い悩み、一人で過ごす時間も増えた。

どんなに忙しくしても、二人で過ごす時間を作ろうとしていたが、そこにラルフが来ない時が増えたので自動的に一人になっていたともいえる。

王城の裏庭は、王族しか入れないエリアだった。

その中でも、国中の花の種類が集められた温室はいつでも暖かく、そこで二人でお茶を飲むのが日課だった。


気がつけば、7日ラルフは来ていない。

王になる前は考えられないことだった。


涙が流れそうになり、リディアは目をつむる。どうしてこんなことになってしまったのか。

自分が体調を崩したのが悪かったのか。

思い悩んでいると、背後から音がした。


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