8 Fantasia
みなさーん、初めて国士無双和了ったよー
きっと意味が分からないと思いますが。
もうすぐバレンタインですね、恋をしてみませんか
裏切ルコトコソガ俺ノ愛
裏切ラレルコトコソガ私ノ愛
出会ワナケレバ優シイ道化デイラレタノニ
出会ワナケレバ鳥籠ノ中ノ鳥デイラレタノニ
井ノ中ノ蛙
ダカラ幸セダッタノニ……
「わーちゃん、一緒にお昼食べようよ。お姉ちゃん、わーちゃんと食べたいな」
とあるとても大きなお屋敷の一角にある大きな扉の前で、1人の少女が立っていました。
歳は12くらいでしょうか。栗色の髪が彼女の可憐さを引き立てています。
彼女の名は芙蓉茉莉花。
その大きなお屋敷のお嬢様です。
そして扉の向こうには、彼女の妹がいるのです。
どんなに呼んでも、妹から返事は返ってきません。
仕方なく、彼女は食堂の方へと行ってしまいました。
「………」
部屋の中で、茉莉花の妹・若菜は、1人ふさぎ込んでいました。
「どうやったら、わたしはいなくなれるの?」
ぶつぶつとそんなことを言っています。
若菜が生まれた時、母親はその出産で、大量出血で亡くなってしまいました。
それでも、家族は優しく接していてくれます。
しかし、たまに家族や使用人の誰かは個々でどこかで悲しんでいました。母親がいないことに。
彼女はそれが自分のせいだと思い、交流を持たなくなりました。
学校にも行かない。
家族と食事も取らない。
早くここからいなくなりたい。
でもどうすればいなくなれるの?
どうやったら死ねるの……?
不意に。
そんなことを考えていた彼女の耳に、何かが聞こえました。
窓の外からです。
若菜は特に警戒もせず、その大窓を解き開きました。
「あ……ごめん、少しかくまって?」
彼女の部屋のすぐ真横にある大きな木の幹に、1人の少年がいました。
黒い髪に黒い瞳、整った顔を持つ彼は、まぁ確かに何かに追われているような感じでした。
「っ……」
「邪魔するよ」
「!」
特に何も言っていないのに、その少年は木の幹から器用にスルリとバルコニーに降り立ち、勝手に部屋に入り窓を閉めて鍵をかけ、同時にズカズカと土足で入り込んできました。
「良い家だね、さすが芙蓉だ。君、名前と歳は?」
「ぁ……わかな、11さい」
「そ。僕は新、16」
それだけ言うと、新と名乗る少年は値が張りそうなソファーに座った。
いきなりのことなので、さすがに若菜も困惑する。
わぁ……家族や使用人以外の人逢うなんて凄く久しぶりだな。
どうしよう。
どう接すればいいのかな。
ていうか知らない人に名前教えちゃった、大丈夫かな。
新さん……ってどんな人だろう。
えっと、泥棒さん、かなぁ。
「違うよ。僕は一般人だ」
「ぇ?」
「君、さっきから色々声に出てるよ」
それを聞いて、若菜は急に顔が真っ赤になった。
「ふふっ、可愛いね」
さらに紅潮。
「ぁ、ぁの、どうして逃げているんですかっ?」
それを紛らわせるためか、かなり大きな声が出た。
「え? いやぁ、借金取り。俺の家、超一文無しだから」
「お金がないってことですか?」
「そうだね」
「困っているんですか?」
「すっごく」
「どれくらいですか?」
「んー、100万くらいかなぁー」
「それだけですか?」
「………うん」
「じゃぁえっと……」
若菜は、自分の服が入っているクローゼットを開け、中にもぐり、奥から1つの何かを持ってきた。
それを新に手渡す。
「どうぞ」
それは、1万円が100枚くらい束になっているようなモノだった。
「私の家、余るほどお金があるんです、お困りでしたら、差し上げます」
「…………」
新は今自分の手の中にあるモノを見て酷く吃驚していた。
そして、精一杯の笑顔を作った。
「ありがとう」
その瞬間、若菜の顔に少し笑みが出来た。
誰かの役に立てたのか。なんて良いことだろう。
そんな純粋な想い。
「どうしよう、僕も何かお礼しようか?」
そんな彼の問いに、若菜は答えた。
「あ、あの、私と、お喋りしてください! あの、ここの窓、いつでも開けておきます! あ、新さん!」
それを聞き、その新という少年は、笑った。
「いいよ」
その少年は、それから毎日来てくれた。
外にずっと出ていなかった私は、その新さんが喋ってくれることが全て夢物語だった。
だんだん興味を持ち始めて、そして、彼は私の暗かった世界を明るく照らしてくれた。
お母さんが死んだのは君のせいじゃないよ。
人は夢を味わえば、必ず1回は挫折してしまうんだ。
君はそれをきっと乗り越えられることが出来る。
だからもっと生きなよ。
生きることは無様だけど儚くて、とても美しいことなんだ……。
それから、私は家族と食事を取るようになった。
学校にも行って、友達をたくさん作った。
お姉ちゃんも、明るくなったねって言ってくれて、お父さんは遊園地とかにも連れて行ってくれた。
新さんを紹介したら、家の人はみんな、受け入れてくれたよ。
私の人生は変わったんだ、新さんが変えてくれたんだ。
新さんは私を好きだと言った。
私も大好き。
だからどんなことがあろうと、私と新さんは絶対離れない。
例え、裏切られようと。
私はずっと、新さんを愛し続けるよ。
受験頑張ってください!
きっと一所懸命のノリで行けば大丈夫です。