表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/13

12 Lullaby


 まさかの時オチです。

 てへ。





 芙蓉(ふよう)若菜(わかな)は相変わらずだった。

 何というか、沈んでいた。

 3年前、自分の支えであってくれた、上月(かみつき)(あらた)が、失踪した。

 突然だった。

 嘘かと思った。

 嘘だよね?

 よくわからない。

 考えてみれば、お金どれくらい新さんにあげただろう。

 まぁ、きっといつか戻ってくるだろう。

 私を愛しに。

 お姉ちゃん達には、旅に出た、で通ってるし。

 あ、お姉ちゃんといえば、今日、結婚式なんだよ、お姉ちゃん。

 私はちょっと休ませて貰ったけど、さっき携帯で写メールが来たの。

 超綺麗だった。

 智紘(ちひろ)さんも何かきまってた。

 私も早く、新さんと……











 いやぁ、本当に卒業後ちょっとしたら結婚しちゃうとかね。

 芙蓉家のお嬢様の結婚式だというのに、割とシンプルな服装で行った、(なか)(あかり)

 そう、今日は親友・芙蓉茉莉花(まりか)の結婚式だった。

 19才と24歳という、(うら)若すぎる婚礼の儀。

 今、その帰りだった。

 弟たちは芙蓉家の車に乗っていったが、自分は、少し歩きたいと思い、歩きで帰っていた。

 帰路的に、あの河原へと足を踏み入れる。

 特になにも変わらない。

 まぁ、まだ3年だし。

 ゆったり、ゆったりと歩く彩。

 うぅ、それにしても、良いなぁ、まり。

「青春……したいな」

 つい声に出してしまったが、誰も聞く者はいない。

 が。

「やぁー」

 足音も聞こえなかった。

「彩ちゃーん」

 かなり懐かしい声がした。

 後ろを振り向くと、黒い瞳と髪を持った、3年前と姿の変わらぬ、自分よりも年下に見える少年が立っていた。

 その姿を見ても、彩は動じなかった。

「はぁ、こんにちは。虎太郎(こたろう)さん」

 上月虎太郎。

 3年前になんだかんだあった人物。

「お、笑ったねー。何? 俺の愛受けてくれるの?」

「まだ言ってんですか」

 虎太郎はそう笑いながらも、特にポケットの中のモノに手を伸ばそうとはしなかった。

「綺麗になったねー。そういや、俺より年上か。ねぇ、彩ちゃんは年下でもいい?」

「んー」

「…………」

「いいえ。すみません、出来れば生命力のある素敵な方がよろしいので」

「そ」

 とても簡単に引き下がる虎太郎を見ても、彩は笑みを絶やさなかった。

「じゃぁ、また生まれ変わるわー」

「あ………」

 彩の相づちも聞かず、虎太郎はスーッと薄くなり、消えた。

 河原には、彩しか居なかった。

 元々、彩しか居なかった。



 まぁ、まだまだ20歳前だし。

 出会いならあるだろう。多分。

 苦しいことも楽しいこともたくさんあるだろう。

 でもそれはきっと運命で、神様なりの人生のスパイスだろう。

 遊んで、笑って、泣いて、青春して、

 恋をして。

 いい人見つからないかなぁ……。

 まぁ、いつか見つかるだろう。

 中身も外見も完璧で財力もあるそんな……

 ちょっと理想高すぎかな。

 でも、もしも、人生を共に歩いてくれる人が現れたら、


 一途で優しい、そんな儚い子守歌(ララバイ)のような人生うたを、

 紡いで生きたい。


 そう思った。

 …………。

 なーに言ってんだ。

 そうとも思った。

 夕日が美しい、とある梅雨終わりの時期だった。


















 芙蓉若菜は相変わらずだった。

「新さん……」

 彼を求めていた。

 上月新が、彼女にとっての光だった。

 今、その瞳に光は宿ってはいない。

 が。

 とあるモノオトがした。

 窓の方からだった。

 すみれ色のカーテンを開く。

 窓を開けると、

「……やぁ、ちょっと、かくまってくれない?」

 黒い瞳と髪を持った端麗な青年が立っていた。

 3年前とは姿は変わっていたが、若菜はそれが誰だかすぐに分かった。

「あ、ああ、新さん……!」

「若菜」

 目から大粒の涙が溢れる。

 若菜は夢中で新に抱きついた。新は、若菜の栗色の髪を優しく撫でる。

「すっっっっっごく会いたかったです!」

「うん、悪いね。音信不通で」

「いいえ、信じてました、信じてましたから!」

 新を部屋に招き入れ、2人はベッドの上に座った。

「今日、お姉ちゃんが結婚式を挙げたのです!」

「そう、おめでとう」

「新さん、私達も、いつか、式を挙げること出来ますよね?」

「もちろんさ」

 新は優しく、だが少々強引に若菜の唇に自身の唇を重ねる。

「愛してます、愛してます、新さん…」

「俺も」

「これからも、愛してください、私も、愛します」

「あぁ、だって俺は、(あい)すために、また戻ってきたんだよ?」

「はい……」

「愛してるよ」







 ―……これは、子守歌? それとも、狂詩曲?



 さぁ、それを決めるのは君次第。 



 歪んだ奴らの生活は、今日もほんわかシリアスななめにかっ飛び続ける……―



 真実の、愛物語(ツイスト・ストーリー)



 おわりだおわり、ぱちぱちぱち。








 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 終われて良かったです。

 それではまた、お会い致しませう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ