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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

王命ですか?

作者: 湯野みどり

「マンデリン・シュバルツ!貴様のような冷徹な女との婚約を破棄し、俺は新たに聖女丁愛羅(ティアラ)と婚約する!」


知っておりました。

今日までの苦労も。

この運命も。


私の前世を思い出した幼少期…いや、正確には、この世界が前世で遊んだ乙女ゲームだと知ってから。


今日、私は目の前にいるロクディ・ナシデンナ第2王子殿下に婚約破棄をされて、国外へ追放される…はず。


私は、ただマンデリン・シュバルツ公爵令嬢としての人生を全うするだけです。

前世を思い出そうと、破滅の未来を知ったとしても、それは変わりません。


なぜなら、前世での私は平々凡々の会社の事務員。

休日は、夢溢れるファンタジー世界観の乙女ゲームをして、ゲームする気力すらない時はパソコンで掲示板や動画を見て、食べて、寝る。そんな自堕落な生活。

実家暮らしだった前世の私の結婚式に出る夢を捨てきれなかった父は「出掛ける予定はないのか?」とか「母さんの料理を手伝ったら少しはできるようになるんじゃないか?」とか色々言っていたけど、父より娘を良く知っていた母は諦めた顔して「風呂が冷めないうちに入って」くらいしか言いませんでした。


そんな私が打開策を見出せるわけがなく、前世と同じく言われるがまま、されるがまま。ただ衣食住を提供してくれる両親に感謝しながら、できる範囲で親の希望を叶えるだけ。


どんな境地だろうと、内なる動揺は悟られぬよう淑女の微笑みを崩さないこと。教えられた王子妃としての振る舞いをすることで精一杯なのです。


「お言葉ですが、私の性格がお気に召さないという理由のみで婚約破棄されるのであれば、瑕疵は殿下になりますが、よろしいでしょうか」

「え!?あー、そうだ!私の可愛い丁愛羅、この女に嫉妬されて数多くの被害にあっただろう。それを話してごらん」


王立学園に入られてから第2王子殿下は、すっかり変わってしまわれた。

同じ時、世界に蔓延る瘴気の浄化のために召喚された聖女様…田中(たなか) 丁愛羅(てぃあら)様に学園で出会ったから。

天真爛漫で自由な彼女に影響を受けた殿下は、王族としての威光が無くなってしまわれました。変わられた殿下を見て、彼に羨望の眼差しを向けていた多くの女性たちが涙したものです。


前世含めて好きだったロクディ殿下。

婚約当初から政略結婚の相手としか扱われず、冷たくされても、家のため国のために愛し合うまでは行かなくても、友となれることを夢見て歩み寄っていました。

しかし、学園に入ってから「丁愛羅が俺の結婚相手だったら良かったのになあー!」と威光を失った殿下に言われて100年の恋も冷めましたわ。


私が考えに耽る最中、殿下は呼び出した彼女の華奢な腰を抱き、熱い視線を送ります。

そんな彼らを後ろから支えるように並ぶ、殿下の側近たち。

ヒロインと攻略対象たち、そして彼らに対峙する悪役令嬢の私。


ラストイベントの役者は揃い、私は彼女からの断罪を決定づける言葉を待っていると、彼女からは色の無い言葉が出ました。


「それは王命ですか?」


出た。

ティアラたそ、必殺のキメ台詞。


いつも彼女は殿下や、殿下の腰巾着に絡まれるたびに、ああして王命かどうか確認する。


「またか。これで王命じゃないって言ったら…」

「お断りに決まってますけど」


ティアラたん。何か?って顔しないの。

王命じゃなきゃ誰がアンタの言う事聞くかって態度しちゃダメ。みんな、そうなっちゃったら道通してもらう時ですら王命出ちゃう。

王命記録してる王族の監視と警護をする影の皆さんが過労で倒れちゃう。


「じゃあ、王命で…」


ほら出しちゃったよ、王命。

もう影の人が私の後ろで溜息つきながら記録してる。

さすがに忍ぼう?

もうコイツの警護したくないし、大っぴらに監視してても気づかんだろって態度しないで。


聖女様に感化されちゃダメだ!

私だって、こんな状況でも頑張ってるんだぞ!諦めんなよ!

Never give up!


…って違う!

前世の記憶を思い出すと、つい言葉も前世のものになってしまいます。

集中して、シュバルツ公爵家の女たるもの、熱くなってはいけない。

冷静に、穏やかに、集中して。

今は聖女様がわたしに何かされたか、殿下に話しているのですから。


「マンデリン様からの被害は一切ございません。以上」

「いや、ほら、本人から直接でなくても、あるだろう。ほら、彼女の取り巻きからとか」

「ございません。学園の女生徒の皆様からは懇切丁寧に接していただきました。はい解散」


そうですね。

彼女が殿下や殿下の腰巾着たちに懸想してる様子もなく、むしろ殿下から絡まれて迷惑そうにしているのは誰が見ても明らかで、女生徒たちは皆不憫に思い、ゲームのような虐めや嫌がらせは一切ありませんでした。

むしろ、慰めたり励ましたりと、なんて優しい世界なんだと思ったものです。ティアラたそにとって、女の子は味方。下心で近寄ってくる男が敵という意志をヒシヒシと感じましたわ。


「私があの女と別れて、お前と結ばれるためには、虐められたという証言が必要だから。あとは…わかるだろ?」

「私は世界を瘴気から救う清らかな乙女という意味で聖女という称号を陛下から賜りました。そんな私に嘘を申せと。殿下が瑕疵なく婚約破棄できるようにするために嘘を申せと。そう王命を下すのですか」


圧がすごいよ、ティアラたそ。

殿下はシリアスのつもりなのに、彼女は通常運転でシリアルに変えちゃったもんだから、殿下ちょっと引いてるよ。


聖女という国宝級の称号あるが故に、強気に出れるティアラたそ。

偉さの序列なら国王陛下の次に偉い聖女様は、王命でないと殿下の話を聞きません。


そんな彼女を殿下は「おもしれー女」とか言ってケツを追っかけ回していますが、外野から見ればおもしれーっていうよりヤベー女です。

ああ、ケツだなんて下品な言葉を使ってしまった。


「丁愛羅は私と結ばれたいだろう?そのためには必要なことなんだよ」

「誰がお前なんか旦那にするか!さっさと日本に帰せ!こんなお布施できない場所に拉致って、金にもならん仕事押し付けて、なぁにが“ショーキをジョーカする。それがそなたの使命じゃあ”だ!私の使命は!翼きゅんにバイト代を貢いで推し活することだっつってんだろ!!わかったか、国の不良債権と、脳みそ愉快な仲間たち!」


かわいそ。もう、みんなかわいそ。

殿下泣きそうだもの。急に被弾した腰巾着たちもビックリよ。

でも、そうなんだよね。ティアラたそって、瘴気浄化するために聖女召喚したろって無理やり呼び出された子だから、言い方悪いけど国家規模で拉致した状況なのよね。


あんな風に気丈に振る舞ってるけど、元の世界に帰りたくて時々泣いているのは、同じ学園に通う者ならみんな知ってる。

なんか勘違いした男どもは、帰れない彼女のために自分がこの世界での拠り所になるんだとか言ってるけど。

普通に彼女の願いである元の世界に帰れる方に協力しなさいよって話なんですが。


「なんの騒ぎじゃ」


陛下キター!

あなたの息子、もう涙目で声も裏返ってますよ。

どう収拾つけるんだ、これ。


「陛下、発言の許可を」

「聖女丁愛羅よ。発言を許す」

「第2王子殿下、ならびに側近の皆様は身体の内部から瘴気が生じて犯されております。その証拠に諸悪の根源から”私の聖女の力を奪え”と命じられ、王命を騙り私の純潔を散らそうと目論んでおられました」

「「ええええ!!」」


そもそも、瘴気とはなんぞやという話ですが、端的に言うとなんか紫のモヤ。触れると嘔吐と下痢と倦怠感に見舞われて2日くらい寝込みます。放っておくと、どこからともなく魔物が現れ、田畑や人を襲う困ったもの。神官が祈りを込めた聖水を撒けば少し消えます。

私たちにも瘴気の存在は見えるけど、聖女様は発生ポイントの感知もできるし、聖水の1000倍以上の広範囲の瘴気を消すことができる。

まさに瘴気除去のプロってわけ。


そんな彼女から「体内から瘴気出てますよ」なんて言われても、胃カメラもレントゲンも無いこの世界では確認しようがありません。

聖女のみぞ知る話。

陛下はもちろん、殿下たち当人ですら、本当なのかもと動揺しています。


「どのような王命を、いつ私に下したか、全て書面で記録しています。王命を下す瞬間も記録魔法で残しておりますので、まずはこちらをご覧ください」


ギャラリーがざわつく中、いつの間にやら手に大量の王命について記録された書類を片手に持つティアラたそ。

彼女が書類を持たない手の指を鳴らすと、会場は暗転し、空中に過去の殿下たちの様子が映った映像が音声付きで流れた。


「丁愛羅、共にランチにしよう。特別に王族限定の部屋に案内するぞ。嬉しいだろう?」

「王命ですか?」

「え、いや違うが…」

「お断りします」

「え!?あー…王命だった!聖女たるもの第2王子である私との親睦は必要であるからな!ほら、王命に逆らったと皆に知られてしまったら、聖女とは言えこれからの立場がどうなるか…わかるだろ?」

「…王命とあらば、承知いたしました」

「よしっ」


「私は王族として柵が多い。人を差別しない自由なお前といるこの時だけが、ただの人でいれる安らぎのひと時だ。だから、傍にいてくれ」

「王命ですか?」

「……王命だ」


「殿下、触れないでください」

「何を照れているんだ。私とお前の仲だ。なあ、いいだろう?」

「王命ですか?」

「王命、王命」


映像の最後は、そりゃもう酷いものだった。

酔っ払いのスケベ親父とホステスのやり取りかと思った。違うけど。

吐き捨てるように王命を連呼する殿下。ペラペラだ。驚きの軽さだった。この人の王族の威光を取り戻すには、もう頭髪を毛根から無くして煌々とした真夏の太陽の下に行くくらいしないとダメですよこれ。


「このように衆目の中、淫らに胸部や臀部を見ながら触れる殿下は、もう魔物そのもの。陛下、殿下たちの瘴気を払うため、浄化の力を振う許可をいただく」


魔物というよりケダモノだけど、もう大差ないから何も言うまい。

会場に殿下たちの悲鳴がわずかに響き、訪れる静寂。


過去、学園に発生した瘴気に対して、初めての浄化に挑もうとしたティアラたそ。教会から授かった聖女の杖を握りはするものの、誰もやり方を知らなかった。ゲーム既プレイの私も。

だって、浄化シーンはプロセスや細かい描写を丸々カットして“浄化した。”の1行で済まされるから。

メインは恋愛。浄化は、高位貴族や王族と結婚するためだけの作業だからね。


ぶっつけ本番の彼女の浄化は、文字通り力を振う形でできました。

聖女の杖を対象に思い切りスイングすることで。


「許そう」


処刑宣告である。

多分、陛下の内心は「もうどうにでもなぁれ」とか思ってるんだろうな。私も、もう脳内くらいは淑女マンデリンじゃなくて、日本の一般ピーポーでいいわって諦めたし。


殿下と腰巾着の皆さんは、身を寄せ合って互いを守りつつ逃げようとするが、ティアラたそが拘束の光魔法で丁寧に1人ずつ梱包して、空間魔法で取り出した聖女の杖を剣道の竹刀のごとく構えた。


正直、あそこまで魔法使いこなせるようになってるのだから、浄化も物理じゃなくてもいいのでは?という疑問を言ってはいけない。

ティアラたそにとって、あれが拉致によるストレスを発散する方法なのだから、それすら取り上げるのは酷ですよ。


「ひぃ!てぃ、丁愛羅!?」

「あはは!あははは!苦しめ!私の!聖力で!苦しめ!!そして!消えろ!世界の!汚物が!」


エクスクラメーションマークのところで、ティアラたその強力な聖力(物理)が芋虫になった殿下の顔に入っています。


やれ、貴族・王族の柵が嫌なら、さっさと家を出て、草でも食べてナメクジのように這って生きてろだの。

やれ、セクハラしたり、慰められたいなら、娼館で金払ってやっとけだの。

今まで彼らにされたり言われたりした事に対して、全力で聖力(ぼうりょく)を振るいながら文句を言うティアラたそが舌を噛まないか心配です。


「おらあ!次ぃ!ケツ出せ!あははは!どうだ!?ケツを!追ってた!女に!ケツを!しばかれるのは!どんな!気持ちだあああ!!」

「ぶひいぃ!!」


浄化が終わる頃には、無惨な姿で転がる殿下たち。

なんということでしょう。

仮にも攻略対象だった彼らの顔面に、美しさやカッコよさは全くありません。聖女様が言っていた、魔物の顔へと大変身しました。


「陛下、応急処置が完了しました。ですが、長年瘴気に蝕まれていたので、まだ浄化が不完全です。あと数か月ほど1日10発は浄化しないと元に戻せないでしょう」

「…そなたが望むままにすれば良い」

「かしこまり!Hey, 衛兵たちぃ!コイツらが正気に戻…じゃなくて、瘴気に悶えて暴れる可能性あるから、このまま牢にぶち込んじゃって!あ、あたしが通いやすいよう貴族牢じゃなくてパンピーの牢でよろ〜」


哀れな殿下たちは、その言葉に涙を流しました。会場にいる皆、完全に魔物へと変貌する前に浄化を施してもらえたことを喜んで彼らは涙していると言い聞かせて、助けを求める視線に気づかぬフリを頑張ったそうな。


だからって、冤罪で国外追放させようとしていた私を見るな!助けるわけないでしょうが!




そんな対象がすり替わった断罪劇から1週間後。

私は、日課のストレス発散、もとい、殿下たちへの聖力を終えてシュバルツ公爵家に遊びに来た聖女様とお茶とお菓子を楽しんでおります。


「帰れる手筈が整って良かったですわね、聖女様」

「ちょ!私とマデりんの仲でしょ!アイラでいいって」

「ふふ。そこはティアラじゃないのね」

「親友に偽名で呼ばれるのは、さみしーし」


「親友、だよね…?」と言わんばかりの潤んだ上目遣いを送るアイラたそ。

当たり前田のクラッカーよ。

って、このネタはさすがに知らないか。


学園で男子に媚びず、むしろ女子たちと仲良くしたいを全面に出していたアイラたそは、すぐに女生徒たちの人気者に。

私もそんな裏表ない彼女に前世の記憶について打ち明けてからは、親友として過ごしている。

彼女から“田中 丁愛羅”は偽名だって打ち明けられた時は驚いた。なんでも本当の名前を教えたら魔法で奴隷にされるかもという疑心感で本名は隠したらしい。

教えたり、私が呼びかけたら、聞き耳立てている人がいる場合バレるのではと危惧したが、そこは抜かりなく毎回強固な防音魔法を施していると回答された。できる子だよ、アイラたそは。


「いやー。他の国の聖女たちと全員で、私たちが召喚される時の力の源っていうか元凶の女神とやらにカチコミしたら案外あっさり帰れることになってよかったわー。あ、瘴気は元凶をみんなでバチボコに滅したから万事解決したよ!」

「そうですか。アイラと会えなくなるのは寂しいけれど、元気でね…」

「あ!安心して、マデりん!帰ってもあたしとマデりん間なら通信魔法は映像込みで使えるようにさせたから!会おうと思えば、あたしらいつでも会えるよ!」

「まあ…本当にアイラは…!!」

「ちょ、泣くなし〜」


長いまつ毛に涙をこさえて私の涙を指で拭うアイラたそ。かわいいなぁ。

こりゃ攻略対象たちも邪な目で見ちゃうよね。


「でも攻略対象が、あんな扱いされたのは笑ったわ」

「攻略対象?ここゲームの世界なんだ」

「知らない?穢れた世界と清き乙女」

「ああ、レトロゲーの!伝説の面白恋愛ゲームとして動画でネタにされるヤツ!」

「え、おもしろ?」


私の学生時代に大流行りしたゲームだけど、レトロなの?確かに、キャラデザの絵師が発売当初より昔に流行った少女漫画の作家さんだから、ちょっと絵柄が古めだったけど。


「主人公の名前呼ぶってシステムだから、“オレ”って名前にしたら『俺はオレが好きなんだ!』とか言うし」


ナルシストじゃん。

もう攻略対象みんなナルシストだよ。

あれでしょ。殿下が『面白いな、オレ』とか言うんでしょ。そうだよ、アンタ面白いよ。


「“ティシューどうぞ”って名前にしたら『ティシューどうぞ、ここからは危険です』って言うし」


瘴気が充満したエリアに行く時のセリフだね。

そんな時に渡されても困るね。攻略対象みんなティシュー配りのバイトになっちゃうね。


「私が1番好きなのは“お高いんでしょ”だったな。会う度に値段確認してくるし『お高いんでしょ、それでも俺はお前が欲しいんだ。あとは…わかるだろ?』ってセリフは爆笑した!」


通販のおばちゃんか。

それでも欲しいって値切ってるよね。聖女様を値切るな!ていうか、物じゃないんだから金で買おうとするな!


ちなみに、聖女様をファミリーネームに、さん付けで呼ぶメガネ属性の攻略対象もいたが、彼はファミリーネーム部分を“ひ”とか“お日さまサン”とかに設定して弄ばれていたそうな。

『ひさん』に『お日さまサンさん』か…。

彼だけ扱いが雑なのが、まさに悲惨。


ここでアイラたそが殿下にめちゃくちゃ捲し立てていた際に出てきた名前が気になっていたことを思い出し、問いかけてみた。


「そういえば、翼きゅんって誰のこと?芸能人?」

「俳優の“天翔 翼”きゅんだよ!」

「あー、CMで子供パイロットやった子」


懐かしい。拙い喋り方で「レッツ飛行機旅!」って言う旅行のCMあったな。死ぬ前に流行ってた。あれがきっかけで人気子役になったのね。


「そうそう!最近、それをリバイバルさせた『帰ってきた!イケおじパイロット』ってCMのナイスミドル!」

「え?」

「ん?」


まさか子役がイケおじになるまでの年月が経っていようとは。おばちゃん、ジェネレーションギャップも感じるってものよ。いや、もうお婆ちゃんだわ。


「いや、まあ、続きが気になるって言ってた作品、古いな〜とは思ってたから、そのくらいの人だとは思ってた」

「こんなお婆ちゃんと仲良くしてくれて、ありがとねぇ…」

「なんで喋りまで急に老け込むの。まあ、あたしが帰ったら覚悟してよ!現代日本の面白いもの、全部見せてあげるんだから!」


そんな言葉を残して、元の世界に帰ったアイラたそ。


そういえば殿下たちの顛末だが

アイラたそが「もうこりゃダメですわ、浄化しきれん。無理無理!」と丸投げして帰った。

体内の瘴気なんて見えない陛下たちは、彼らを解放してもいいのか、しかしそれが原因で世界にまた瘴気が出るのではないかと、後始末に大変頭を悩ませた。

結果、くだらない私用で王命を軽率に下した殿下も、それを止めないどころか「殿下が王命だって言ってた」と王族ですらないのに王命を騙って命令した側近たちも罪深いとされ、貴族牢に移し替えてはもらえたが終身刑になった。



前世は中途半端な人生だったし

今世でも結婚相手には巡り会えていない。

しかし、時も世界も超えて素敵な親友に恵まれた私は、前世の記憶を持ってこの世界に転生してよかったと心から思える。


「あら、陛下。ご多忙の中、我が家まで訪れるなんて、どうされたのでしょうか?」

「いや、ロクディとの婚約がなくなって困っていると思ってな…。第3王子のカイショと婚約を結び直すのはどうかと…思って……」

「まあ、婚約当初から御子息が私を婚約者としては扱っていなかったことに目を瞑り、傷モノにしておいて、また別の御子息のお世話をさせるために縁を結べだなんて、陛下それは…


王命ですか?」


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