子猫の3兄妹 玉と遊ぼう
とら:
それは、突然やってきた。
「左前方より、未確認物体発見」
僕は、目を皿のように大きく見開いた。
「第一次、警戒態勢」
背筋を伸ばし、物体を見据え、ボールが近づいてくることを確認した。
「ボール、接近中。第二次、警戒態勢」
前足を折り曲げ、しゃがみこむ体制をとった。
突然、ミケがボールにダッシュ。攻撃を加えた。
「ボール、右前方に後退」
体勢をそのままに、首だけを右に動かした。
しろが、ジャンプ。ボールに、猫パンチを浴びせながら、前転してひねり、こちらを向いた。
「ボール、再び、接近。攻撃態勢」
お腹が地面に付くくらいに、体を小さく丸めた。
「もう、辛抱できない」
僕は、思いっきり、ボールに飛びついた。
目の前に火花が散った。
しろ:
遠くから、黄色いボールが転がってくる。ちょっと、ふさふさした感じの毛が、わたしの血を騒がす。
兄さんは、ボールをじっと見つめている。
ミケちゃんは、ボールをトスしてきた。
ちょっと、ずれているよ。でも、わたしの守備範囲。得意の回転レシーブでボールを返す。
よし、アタックいくよ。わたしは、ボールに向かって走る。
目の前に、兄さんの顔があると思ったとき、わたしは、白いお花畑で、蝶々を追いかけていた。
ミケ:
「今日の占いカウントダウン。今日、一番の運勢は、ミケ、あなたです。どこからともなく転がってくる幸運が、あなたを別世界に誘ってくれるでしょう。アンラッキーカラーは黄色。運勢が逆回転して、あなたが回ってしまいます」
とらちゃんが、何かをじっと見ています。動きがぎこちないです。きっと、ロボキャットの真似をしているのでしょう。
しろちゃんは、何かを横目で見ています。湧き上がる猫の本能がオーラとなっているのを感じます。燃えています。
みんな何を見ているの。あっ、あれは、不幸せの黄色い玉。こっちに来ないでください。玉を両前足で、突き返します。
「しろちゃん、だめ。こっちに転がさないで」
願いもむなしく、玉は、こちらに向かってきます。
ミケは決心します。幸運は自らの爪で引っ掛けるもの。不幸は自らの足で追い払うもの。
「悪運退散」
思いっきりのダッシュ。
不思議です。スローモーションで時間が流れます。しろちゃんの瞳の中にミケの姿が見えます。一瞬の瞬き。ここは、どこでしょう。なんだか幸せな気分。お日様が暖かくて、ぐーるぐーる回っています。
転がるテニスボールの隣に、頭を抱えて唸っている3匹の子猫の姿があった。