一億総ツンデレ化計画
この物語はフィクションであり、現実の人物・団体とは関係ありません。
政権交代を果たした某日本国のH首相は、悩んでいた。あの、夢のような計画が取り潰されそうとしているからだ。
「うーん、困りました。政権を取ったはよいが、このままだと、アニメの殿堂計画も取りやめにしなくてはなりません」
由紀夫は、隠れオタだった。この構想が明るみに出たときは、他党の政策にもかかわらず、密かに大賛成だった。しかし選挙の結果、前政権は大敗。この計画も、マニュフェストにしたがい、中止しざるを得ない。
「兄貴、箱物に頼る必要はねーぜ。アニメは日本の宝であり、俺たち兄弟の生きる糧だ。別の方法を考えようぜ」
弟の邦夫が言った。彼もまた、アニメ好きであり、党派は違っても、深いつながりがあった。
「まったくもぉ、情けない。もっと素直にならんといかんでおじゃるよ。まるでツンデレでござるな」
ワイン片手に元首相が言った。ここは赤坂にある某バー。もちろんウエイトレスはメイドである。元首相の太郎は、プライベートなときは、このような口調になる。なお、語尾は気分によって変わり、一定ではない。そしてやはりオタク道を通じて、由紀夫たちと深いつながりがあったりする。
その盟友の言葉を聞き、由紀夫はひらめいた。
「そうです。ツンデレです。まさに萌えワールド! 箱物に頼る必要はない。我々が先頭に立って、ツンデレ的行動をとるのです。マスメディアに乗せて全国民に広げる、これぞ夢の計画です」
「さすがだぜ兄貴。おれは一生ついていくぜ!」
「ぐぴぴ。楽しみでありますなぁ」
こうして始まった「ツンデレ化計画」。第一声は外交の舞台であった。
「べ、別にあんたのこと、好きじゃないんだからね。そ、そうよ。戦争で負けたから仕方なく基地を貸してやってるだけよ。勘違いしないでよねっ。でなきゃ、なんであんたと……」
翌日、某アメリカの駐日大使より抗議文が届いた。
「うーん、おかしいな。怒らせてしまったみたいです。まぁアジア諸国は喜んでいるから、まいいですか」
次は年金問題でもやってみた。
「まったくもぉ、なんであんたはそんな馬鹿なわけ。あんたは黙って税金払ってればいいのよ。馬車馬のように働いてね。そうしたら、ま、老後の世話をしてあげなくもないわ。不本意だけど制度だから仕方なく、よ。変な気起こすんじゃないわよ」
翌日、由紀夫はツンデレではなく、オカマ扱いされた。
「しまった。前回は英訳されて問題ありませんでしたが、日本国民向けに、この口調は不向きでした」
「だったらよぉ。プチで萌えな女性官僚に発表させればいいんじゃねーか」
「さすがは邦ぴー。萌えを理解しておりますなぁ。きょっきょっきょ」
こうして翌日、入省したばかりのロリ顔女性官僚によって政府声明が発表された。人事についてである。
「本当に出て行くつもりなの? ……って、別に私の省に残ってほしいってわけじゃないからねっ。あんたなんて、独立法人でもペーパーカンパニーにでも行けばいいんだわっ!」
「本当に天下っちゃいましたねー」
「うむ、なぜでしょう。いまいち国民の反応は良くないですね」
「やはり『ツン』だけでは反発を招くのは当然では……」
側近の平野が言った。彼も側近だけあって、その道のひとだった。
「しかし、私は『ツン』が好みなのです。具体的には9:1くらいでっ」
「はっはっは。兄貴はМだったな」
「……だったら不向きなのでは」
「では、どうツンデレばいいのですか?」
「えっと……」
平野には妙案があった。萌えはツンデレだけではない。むしろ彼の好みはきついタイプではなく、もっと癒されるようなおっとりとしたキャラの方が萌えだった。
「なにか思いつきましたか?」
「はい、不思議系で攻めるべきかと」
「不思議……系?」
もちろん由紀夫もそのジャンルを知っている。
「それもよいですね。しかし、どこか身近にそういった人物がいる心当たりが……」
由紀夫は思案を重ねて、気づいた。
「我妻です!」「お義姉さん!」
こうして鳩山兄弟は満足して、「一億総ツンデレ化計画」は潰えたのであった。
平野には若干不満だったけど。
繰り返しますが、この物語はフィクションであり、現実の人物・団体とは関係ありません(笑)