葵
数日降り続く雨の中、群青色の傘を差した人影が道端に咲いた立葵を見上げる。
白い肌に濡鴉の様な黒く短い髪に黒檀の色をした瞳の人物は、自分の背丈より少し高い立葵の華を見つめ、
「…もうすぐ…夏、か」
と呟いた。
「…い…―――ねぇ!葵ってば!」
パシャパシャと赤いレインブーツで水音をたてながら、毛先を緩く巻いた黒髪を赤いリボンでツインテールにし、黒のレースのついた赤を基調とした和ロリと呼ばれる服に身を包んで、フリルのついた赤い傘を差した美少女が群青色の傘に近づく。
「風邪ひくじゃない!ちゃんと上着着てよね!」
葵、と呼ばれた少年は少女を見上げると、くすりと微笑い、
「…茜も。傘差してるのに、服、濡れてる」
と少女の肩に触れた。
「〜葵のせいでしょ!?雨の中フラフラと居なくなるんだから!」
リップで紅く色付いた唇を尖らせた茜は葵の手を取ると、走って来た方向へと歩き出す。
「もうすぐ皆集まるんだから。久しぶりの家族団欒なんだよ?勝手にどこか行かないで」
「うん」
葵は素直に返事をしながら水溜りを避ける。
「…お父様と会うの久しぶりだね」
瞳の端に立葵の色を映しながら葵がそう言うと、茜は葵を振り返り、
「大丈夫だよ」
と真っ直ぐに葵を見つめる。
「葵は心配し過ぎ!今回だってお父様は忙しいのにこうやって私達の所に来てくれたじゃない」
「…うん」
「それに今回はお兄様だって来てくれるんだもの」
茜は少し屈むと自分より少し低い葵と目線を合わせて、葵の雨粒がついた頬を赤いネイルをした指で拭う。
「だから大丈夫だよ」
心配しないで?と茜は微笑んだ。
その笑顔を見て葵はふわりと微笑むと、こくり、と頷く。
「…わかったら急ごう。お父様とお兄様がもう着いてるかも」
そう言うと茜は再び葵の手を掴むとスカートを翻しながら二人で雨の中走り出した。




