エピローグ アパートのカギ貸します
あれから3年の月日が過ぎた。
私は今、国境の森で茶屋をやっている。
3年前に、シムとエデルの国交回復、友好条約が締結された。再度、国境の見直しがなされ、両国が安全に行き来できるよう、街道の整備をすることが決まり、総責任者にシルビアが就任した。
「私が一緒に行く。」
「良いの?」
「もちろん。私が一緒ならドアさえあれば快適に過ごせるし。」
お風呂もいつでも使えるし、野営する必要も無い。
「ありがとう!リッカ!」
私たちは工事を進めながら旅をした。
聖女が参加することで、当然護衛には聖強院も加わり、安全性も高まったので皆が喜んだ。
人生で一番楽しい旅行だった。沙羅に頼んでスマホで写真を撮りまくった。
久しぶりの聖女の登場と街道整備、魔獣討伐と良いことずくめのこの旅は順調に進み、わずか1年で工事は終了した。
みんなの幸せそうな顔が嬉しくて、忘れられなくて、この気持ちを大切にしたいと思った。だから、
「国境でお茶を売るの?!」
「コーヒーも売るよ!」
無限にあるからね!
「じゃあ、時々飲みに行くわ。」
「うん。待ってる。」
いつだって歓迎する。
聖強院の師団長は、なんと!ヒューゴに代替わりした。まあそうだよね。イサラおじさんが選んだ人だからね。
聖女の守護者って事もあり、割と簡単に決定した。でも、
「あんたの人生はあんたのものよ。私の人生は私の物。だから一緒にいる必要は無いの。」
「わかった。」
私たちは別別の道を選ぶことにした。
お茶屋を建ててすぐに、近所に風呂屋を作った。日本人だからね。
ここではアーロンとシルビア親子の魔法が役立った。
なんとアーロンは風魔法の使い手だった。木をガンガン切り倒す美形とかずるいわ。主人公だわこの子と思った。
その後、旅の途中の人達がゆっくりと休めるように、馬車を止める場所と、いつの間にか宿屋までできていた。商売のチャンスを逃さない人はどこの世界にもいる。
茶屋の壁には、その時の写真を引き延ばしてプリントアウトした物がたくさん飾ってある。来た人誰もがガン見する。そして
「さすが、聖女様です。」
と、納得して帰る。
誰も売ってくれと言わない。これだけは計算外だった。
沙羅は学校を卒業して、今はアーロンと一緒に旅をしている。護衛の数が尋常じゃないらしい。定期的にウノを部屋から出して数を増やして送ってくれと言われているので、ウノと一緒に手紙のやり取りをしている。
メールで済むから手紙はいらないと言ったら、
「お母さんがこの世界の文字を勉強するために書いてる。」
と、言われてしまったので、40の手習いで文字の勉強をしている。
そして今、私は、
「師団長おつかれー。」
「リッカさん俺はもう師団長じゃないです。」
「そうね。」
でもアレッサンドロさんて長くてね。照れるしさ。
おわり。
お付き合い頂き、ありがとうございました。




