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36. シュレディンガーの神




「おはよう。」

「にゃあ。」

この世界に来て、この部屋を利用するようになってから、毎朝必ず猫にエサをあげている。

「美味しい?」

「にゃにゃ。」

さっきようやく気付いた事が有る。

私は頭が良くないから、物理の成績も悪かったし、解らない。

この世界の事を知らないし、自分が生きてきた世界と違うから、何でも斜に構えて見て居た。だから気付かなかった。


「時間が止まっている筈の空間で、どうしてお腹がすくのかしらね。」


この世界で、何も無い所から何かを生み出せるのはこの部屋だけだ。質量が常に一定に保たれる、消えた物がもう一度現れる。電気が通る。ガスが使える。水道の蛇口から水が流れる。


それら全て、この空間だけだ。

あまりにも身勝手で、特別で、ずるい。

そしてその恩恵を受けている私には何も無い。魔法も、力も、お金も、永遠の命も、なんにもない。

そんな世界に神様がいるとしたら、きっと


わがままで、気まぐれで、ごろごろ寝ているばかりの、猫みたいな神様だろうって思った。


「ねえ、神様。あんた、本当に喋れないのね。」

「にゃ。」

「お前、物や人を転移させる以外に何かできるかい?」




猫は返事をしなかった。ただの猫のようだ。





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