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18.守護魔法

短めです。




友達ができた。人付き合いが苦手な私が、『シルビア』、『リッカ』と、お互いの名で呼び合うまでになった。

照れくさくてムズムズする。

ママ友も上手く作れなかった。子ども同士のトラブルがあると、どうしても遠慮がちになってしまう。自分だけ上手く人と関われない事に引け目を感じて、だんだんと周りと距離をとってしまった。


私なんかの子に生まれた 『 あの子が可哀相だ。 』


仕事が忙しい事を言い訳にして、私が上手くフォローしてあげられなかったから。

それでも学童保育に入れてた頃は、友達と遊んでいたらしいが、その後、引きこもりになってしまってからは、誰とも遊んでないないのだろう、お小遣いすら受け取らなくなった。


『 私があの子を追い詰めたのだと思えて仕方ない。 』


………???

何かがおかしい。頭の中で誰かが勝手にネガティブ発言をしている気がする。


私ってこんなに暗かった?いや、これはおかしいだろと自分で自分を叱責する。何か変だ。小首をかしげていると、シルビアが気付く。


「リッカ、どうかした?」

「おかしい。」

「何が?」

「昨日から、暗くなる。何を考えても悪い方へ考えが行く。何か変だ私。」

シルビア王妃は眉間にしわを刻むと、テーブルの上に置いてあった小さなベルをおもむろに掴むと全力で振った。メガホン振りした為に、かえって音が出なかった。そして大声で、


「ちょっと!!誰か!!」と叫んだ。


お城の侍女たちと王妃の護衛をする近衛兵、なぜかビコー師団長も加わり、総勢数十名が集まってきた。




*********************************




今、私は王宮の侍医と呼ばれるおじいちゃんと向き合っている。

「暗くなった理由は解る?」

「解りません。」

「何を考えたら暗くなったの?」

うーんと考えてから

「子どもはもう無理かなあって考えてたら。」

「え?終わっちゃったの?」

そっちじゃない。

「まだ産める身体ではある。セクハラです。医者のくせして女性を卑下する発言して恥ずかしくないのですか?え?」

「すまんのう。」

反省していない。

「すみません!チェンジで!」

おじいちゃん先生はビコー師団長に首根っこを掴まれて引きずられて行った。


まあ、これが日常だ。

「子どもは無理」と言うと大概の人は「大丈夫だよ。」「子どもは良いよ。」「なんで産まないの?」と口を出す。産むことを拒絶する事は罪なのだろうか。

ぷんすか憤慨していると、シルビア王妃が意外なことを言った。


「リッカはやっぱり聖女だったのね…。」

「え?」

「聖女はみんなそう言うのですって。」


それは、可哀相な聖女達の、その後についてだった。

多くの聖女は子を望まない。そして静かに暮らすことを希望する。

だから子孫が少ないのか。でも、その理由は?

「解らないの。誰も知らない。」

聖女達は口を開かなかったそうだ。だから周りは遠慮した。

彼女たちはあまりにも傷ついていた。傷が癒えるまでは、その話は聞かない方が良いと。

「そうですか。」

何某かの傷を、心、時には身体に刻み表れた子ども達。そんな子らをそっと見守る事しかできなかったのだと言う。


そう言えば、こちらに来てから子どもの頃の夢ばかり見る。あれは一体なんなのだろう。黙っていると、ビコー師団長が私の側に来た。私は彼の目を見て尋ねた。


「本当は、知っているのでしょう?」


彼は何も答えなかった。




「さっきの話しの続きなんだけどねえ。」

とシルビア王妃がにぎり飯サイズのマカロンを食べながら話す。

現在、私たちは別の部屋に移って話しの続きをしている。先程お願いしてビコー師団長にも参加して貰っている。彼は情報を隠し持っている気がしたからだ。


「聖女はこの世界に来て、最初になついた人に守護の魔法をかけるのよ。」

「守護の魔法?」

「そうなの。先代の残した記録にそう書いてあるって、陛下が言ってたわ。」

すごく作り話めいているから、眉毛にツバつけて後で読みましょと王妃。


それが、いつ、どのようにしてかけたのか不明だそうで、かけられた人だけが解るのだという。

「どう解るのかな?」

「感じるんですって。」

なんだか曖昧な魔法だ。

「あれ?でも王族に嫁いだ…。」

「護国の聖女でしょ?何にも書いてないの。約束したから帰って来たって書いてあるの。で、神様が2人を祝福して守護の魔法をかけたって。何だか物語調なのよ。

昔の文献ってほら、曖昧っていうか、臭わせが多いじゃない?予言風だったり。それに、絵本にもなってるじゃない?あの2人。」

読み手に好きに解釈させて、神聖を高めようとか、そんな思惑を感じたそうだ。

「その絵本見てみたい。」

「あら、良いわよ。でも字が読めないってさっき言ってたじゃない?」

と言われて撃沈した。

どうせだから絵が綺麗なのあげるわとシルビア王妃は約束してくれた。



聖女とは言え弱すぎる子どもに何ができる。『守護の魔法』とは、怯え震えるだけの幼子が、最初になついた人、『安心』を与えた人に、自分を護る『権利』を返す保険の様な何かだ。


「本当に魔法がかかっているのかな。」

「それは解らないわ。ただ、」


先代の守護者である当時の師団長は、聖女の守護者になった後、隣国との戦争で圧倒的な強さを見せたと言う。

「龍の如き強靱な肉体だったと言われています。」

ビコー師団長が言うと、強さのレベルが想像できない。数値化してくれると助かるのだが。レベル42とか。魔王ギリギリ倒せる位とか。


結局謎だらけだ。

だけど何だか不愉快だ。

「わざと虐待された子を集めているみたい…。」

「そう。そこなのよ。何だか嫌な気持ちになるでしょ?子を持つ親としては尚更気分が悪くなるのよ。」

そうか、シルビア王妃はその事が気になっていたのか。

「それで、色々と調べていたら、ちょっと大変な事になってね。」




転移してきた子がたくさんいる事が判明したのだそうだ。






ありがとうございます。

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