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第2話 ホワイトゲートにて一勝負

 ギャンブル等に対して嫌悪感を覚えたり、悪意のある表現をしたりする場合がございますが、ギャンブル依存症患者等にとっての表現であり、ギャンブル自体やギャンブルを楽しんでいる方を貶める内容ではございません。


「すみません。大丈夫なのですか?」

かわいい女の子の声が聞こえてくる。

その声に起こされるように、目を覚ますと、まるで一流アイドルのような容姿をした白い髪女の子が目の前に現れた。

「あっ、気が付きましたなのですか?」

朦朧とする意識がだんだん覚醒していくと、その女の子の体には、白い一枚の布でバスタオルのように巻かれているだけであり、なぜか、立っている自分の視線が女の子のお腹の位置が来る高さに宙に浮いていた。

(ここは…天国?)

周りを見渡しても、真っ白な空間が広がっており、宙に浮いている女の子以外誰もいない。

「いいえ、天国ではないのです。」

女の子が答える。心の中を読まれたと思い、周りを見渡していた田村は、宙に浮いている女の子を見上げる。女の子はニコニコと笑っている。

「ここは、どこ?君は誰?」

「ようこそ、ここは、異次元への入り口にあたる場所で、『ホワイトゲート』と呼ばれているのです。そして、わたしは、ここの案内人サリと言うのです。」

「は?異次元?」

「そうです。この世界が異次元、通称『アナザーワールド』と、つながっていることは知っているのですよね?実は、この世界と『アナザーワールド』とをつなぐ場所こそが、ここ『ホワイトゲート』なのです。」

「…」

田村雄二は、全く理解できていなかった。その様子にサリは不思議な表情を浮かべると、何か考えるようなポーズをとる。動きも表情も豊かな女の子だ。

「あれ?ここのこと、エルちゃんから聞いていないのですか?」

「エルちゃん?」

「はい。あなたは、私たちを召喚する儀式を行ったのです。」

「儀式?何のことだ?交差点で車に轢かれたらここに来たのだが…」

その回答に、サリはさらに考えこむと、何かにひらめいた様子で、急に青色の不思議な光の輝きとなり、姿を消した。

(これは、夢か?いったい何が起こっている?)

自分の顔を軽く叩いてみるが、痛みを感じる。車に轢かれたはずなのに、体に傷は一つもない。服は、昨日の夜勤時から着ている黒いトレーナーにポケットがついているズボンのままである。

「ごめんなさいなのです!」

田村の目の前で、金色な不思議な光が現れると、サリが泣きながら目の前に急に現れる。

「実は、エルちゃんの手違いで、あなたをここに転送してしまったみたいなのです。」

「えっ?」

「でも、ここから何もせずに、元の世界に戻す方法がないのです。」

「えっ?はっ?じゃあ、一生ここで暮らすの?」

「いいえ、この『ホワイトゲート』はもうすぐ消えちゃうのです。」

「なっ?」

「でも、安心なのです。異世界へ行って、『魔法の鍵』をゲットすれば、無事元の世界に戻れるのです。」

「いやいや、話の意味が分からないが…」

「今回は、間違ってつれてきてしまったですので、簡単にクリアできるための、別のモードも用意したのです。」

「なんだよ、それは…。」

「ちなみに、普段の『ノーマルモード』のクリア率は1%もないのです、だから、『イージーモード』をおススメするのです。」

 と、赤いボタン、青いボダンそして黒いボタンが宙に現れた。

「赤いボダンが『イージーモード』、青ボダンが『ノーマルモード』ですの。さあ、ポチっと押しちゃってなの。」

「いやいや、意味が分からないし、そもそも異世界って何だよ。」

「行ってみれば分かるのですよ。さあさあ、ポチっと押しちゃってくださいのですの。」

サリは、笑顔で圧をかけてく

意味が分からない展開に、考えることが面倒になった田村がボタンを押そうとするが、やはり一つ気になることがある。

「この、黒いボタンは何だ?」

「これば、オススメしてないのです。このボタンは成功すると、大金持ちだったり、すごく高いステータスになったり、ものすごくいいことがあって異世界に転生できるらしいのです。でも、失敗すると異世界にすら転生できず、ここで消えちゃうのです。」

「消える?」

「はい、そう言い伝えらえているのです。成功したらウハウハの超勝ち組、失敗したら最悪の状態に、まさに、一か八かなのです。でも、間違って来てしまったあなたには、安定の『イージーモード』をおススメするの…」

「黒いボタンを押すよ。」

サリの説明を途中で遮って、田村が言った。黒いボタンの話を聞いて、田村の中のギャンブラー精神に火がついてしまった。

「えっ?本気ですの?『イージーモード』もあるのですよ。」

「いいよ、一か八か。成功を引けばいいのだろ?」

「ですけど…どうなってもしらないですのよ。」

「必ず、当てる。引いてやる。」

止めるエルを尻目に、黒いボタンの前で集中する。当たりの確率も何も聞いていないのに、自分が必ず当てると信じ込んでいる。いや、いままで、ここまでギャンブルで負けてきたのだ、今回は勝てると信じ込んでいる。

(今だ!)

スロットで分かりもしない乱数を調整し、気合を込めてレバーを叩くごとく、ボタンを押す。

〈ピカッ〉

と、左右から吸い込まれるように空間が崩れていく。

「おめでとうございます。異世界転生は成功したみたいなのです!黒いボダンで成功した人は、あなたが初めてなのです。さすがなのです。」

消えていく空間で、サリが笑顔を向ける。賭けに勝ったと優越感に浸っているところで、サリの言葉がひっかかる。

「初めて…だと?」

「そうなのです。だから、どうなるか、わたしたちにもわからないのです。だから、頑張ってくださいのです。」

「おいおい、何だよ、それは。」

空間は左右の吸い込まれていき、田村自身に近づく。

「ちなみに、異世界では、死んだら終わりだから、殺されないように気を付けるのですよ。」

エルが光に吸い込まれる直前の田村に向かい笑顔で言う。田村は、その笑顔の後ろで、もう一人のエルと同じ顔をした黒髪の少女が黒い布を纏ってい、こちらを見ていることに気が付いた。

「おい、ちょっとま…」

二人の少女が赤い光と青い光に変わると、その光は左右から引っ張り、田村を二つに分離させ吸い込んでいった。

田村の存在が消えると、赤い光と青い光が一瞬大きく光り、サリと、サリに似たもう一人の少女が現れた。

「まさか、黒いボダンが成功するなんてね。」

「ええ、『イージーモード』がある時はで、黒いボタンを選んだ人は、初めてなのです。」

黒い布をまとった女の子は、サリと全く同じ顔だが、サリに比べクールな声で表情も落ち着いている。

「黒いボタンが成功する確率は1%。『ノーマルモード』だけのときに、成功すれば『イージーモード』になるって、聞いたことがあるけど、『イージーモード』がある時に成功したらどうなるの?サリ、知っている?」

「エルちゃん、そんなの知らないよ。だからさ、あの人の冒険はチェックしなきゃだね!」

「それよりも、わたしの世界とあなたの世界。二人の世界に分離して吸い込まれていったけど、どうなっているの、これ?」

「さあ?でも、面白そうだからいいじゃない。いつもこの世界に来る人は、あっという間に諦めちゃって、ゲームオーバーだから、面白くないからね。」

「はあ、相変わらずね。上で、見守りましょうか。」

と言うと、二人は再び光となって、空へ消えていった。その頃、地上では、交通事故現場上空で青い光と赤い光が空に現れたとして、インターネット上で話題になっていた。


この小説はフィクションです。本編に登場する人物・場所等は架空のものであり関係ありません

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