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11:1000年後の魔王城は

 翌朝、マナは目を覚ます。


 起きるとペンが走る音が聞こえて机の方を向いてみるとそこではエルサが何か書いていた。


「む、何をやっておるのだエルサ?」


「休学届、これを出さないと無断で欠席したことになる」


 彼女は書類をマナの方に向ける。


 そこには諸事情により休校を願い届けると書いてあり、期間については一週間以内と書かれている。


 何かしらの素材を取りに採取に向かう魔法使いは多く、採取の場所は大体危険であり何日かかるか分からないのでおおよその期間を書くのが決まりとなっている。


「これはマナの分」


「うむ、ご苦労である」


 エルサは片方の書類をマナに見せる、マナとしては無断欠席など、どうでも良かったが、折角臣下が書いた書類などで無駄にはしなかった。


「では行くか」


 マナとシエルは支度を整えて部屋から出る。


 エルサは休学届けを提出するために寄るところがある、と言っていたのでマナは1度別れて1人で学園の門の前の広場に向かうことになった。


「……おはよう」


「相変わらずだな」


 そこでは死にそうな顔のアイリスと静かに目をつむりながら門に背をかけてシエルが待っていた。


 広場では他にも外出する予定の生徒が多数存在しており、結構賑やかであった。


「おはようございます」


 遅れてエルサが広場にやってきてシエルが目を開けて挨拶を返す。


「では行くか」


「確か、最北端に位置しているのであったな」


「うむ」


「最北端と言えば、アイレンド大陸」


 アイレンド大陸とは最北端に位置する大陸であり、一年中雪が降っている極寒の地である。普通ならば一週間はかかる距離であるがマナに限り、その距離を一瞬で移動することが出来る。


「転移か……しかし便利な魔法ではあるな、それがあれば無敵ではないのか?」


「そんな便利なものではない、人数、距離に応じて魔力を消費し、我でも4人ならばこの学園内が限度ではある」


 転移があれば大軍を一瞬で移動することが出来るので、軍事の面でも無敵と思われるが、この魔法は色々と制約に引っかかりやすいので魔力を莫大に消費する。


 大量の人数は勿論不可能であり、マナ一人でも1国分が限度である。


「どうするの?」


「我の城という点においてはその制約を無視することが出来る」


 エルサの疑問にマナは答える。


 自身の城という1点に飛ぶ場合は、魔力も低消費で転移できるので、世界中どこからでも帰還することが出来る。


 これは神代に置いて帰還の魔法を呼ばれていた。


「と、言うわけでな」


 マナは指パッチンをすると4人はその場から消え去る。


 突然、空中に放り投げられてシェイクされたような感覚が訪れて、アイリスは朝が弱いのも相まって吐き気がこみ上げってくる。


 だがほんの5秒程度で地面の感覚が戻ってくる。


「く、くらくらする……」


 アイリスの初の転移の感想はそれであったが、体中が揺さぶられたような奇妙な感覚は彼女を目覚めさせるのにちょうどよかった。


 アイリスは吐きそうになり未だ、ぜえぜえと肩で息をしているがシエルでさえ膝をついている様子であった。


「エルサは良く無事ね……」


「私はあまり酔いませんから」


 エルサは初の転移で、しかも不意打ちのような発動であったが全然無事であった。


「転移というより空間酔いだな、まあそのうち慣れる……それより見よ、さすが我が城、1000年たってもその姿は変わらないでないか!」


 そう言ってマナは目の前の未だに崩壊せず形を保っている城を見て満足気になる。


「へえ、なかなかのものじゃ……ってあれなによ!?」


 アイリスは見事な城だと下から上に眺めていたら、上を見上げたところで異変に気づき大声を挙げる。


「空が……」


 空には雷雲が渦巻き、雷鳴が鳴り響いていた。それだけならばただの悪天候で済んだのだったのだが黒雲から覗かせていた空の色は真っ赤に染まっており、まるでこの世の終わりの空というのが相応しい模様であった。


「それにここはアイレンド大陸に位置するはずだ」


 一年中雪に包まれた極寒の大地、そのはずなのだが氷や雪はおろか、寒いとも感じなかった。


「……ふむ」


 マナは口に手をやり周りを観察する、城は変わりなく周りの風景なども変わりはなかった。遠くを見るためにマナは宙に浮き周りを見渡すとこの異変の原因に気づくのであった。


「どうなのよ?」


「どうやらここは魔物界に位置するらしい」


 マナは降りてきてそう言うが、それは3人には聞いたことがない言葉であった。


「どういう意味よ?」


「位相が異なる世界と言えば分かるか?」


 それを聞いても、シエルとエルサはなんのことやらと言った表情であるが、魔法を研究するアイリスはその意味を分かっていた。


「現実とは異なるけど確かに存在する世界、理論上は存在すると言われてるけど実証はまだされてないわ」


「うむ、それは存在する」


「……まあ、あんたがそう言うならばそうなんでしょうね」


 普通ならばアイリスはこれに反論するのだが、冥界の王やらを呼び出したマナなのでこいつが言うならば存在するんだろうなと、諦めに近い思いであるが納得していた。


「神の領域の天界、死者の国の冥界、色々存在するが、魔物界は魔物の根源の世界である」

 

 魔物とは生物に襲いかかる化物であるが、どこから生まれ、どこに帰るのか不明であった。


「つまりは魔物が生まれる場所ってこと?」


 その答えは魔物はここから生まれ、死んだら帰りまた生まれるという生態系をしていたのだ。


「うむ、他にもダンジョンと言った場所もここから我らの世界に繋がっている」


 ダンジョンとは魔物の生息地であり、度々大陸に出現する。


 そこから魔物は生まれていると考えられていたが立証されたことはなくあくまで仮定の話であった。


 そしてダンジョンの中は周りの環境に作用されない独自の環境を生み出しており、異界への入り口と言われていたがまさに異界へと繋がっている門であったのだ。


「ふむふむ」


 アイリスはその話に興味深く聴き込んでいた。


「とりあえず入ってみませんか?」


「うむ、では行くぞ!」


 エルサに頷いてマナは先頭を切る、それにエルサが続き、後ろにアイリスとシエルが続いた。


「で、どうすればこの門は開くのよ?」


「我か我に近いものが触れれば開くようになっている」


 我に近いものとは領土の民である。ここではマナしかいないので開けれるのは必然とマナだけになる。


 マナは門に手を触れ開けようとすると、その瞬間地面に魔法陣が描かれてまばゆいほどの光がほとばしる。


「むっ、これは……」


 マナはそれを見た瞬間、険しい顔になる。アイリスとシエルも悪い予感がしたがすぐに動くことは出来なかった、だがその中でエルサだけは振り向いてアイリスとシエルを突き飛ばしてその魔法陣から出すことに成功する。


「エルサ!」


 アイリスが叫ぶと同時にマナとエルサはそのまま光に包まれて消えてしまった。



 シエルは体勢を立て直して門の方を見ると2人は居なくなっており、まずい事態になったかもしれないと予想する。


「エルサに助けられたか……今の魔法はなんだ?」


「分かんないけど恐らくは転移、あいつが転移使うときと似た感じがしたもの」


 シエルはそれを聞いてなるほどなといった表情をする。


「何かしらアクシデントと見たが、まあこういう転移する仕組みかもしれん30分経ったら私達も中にはいるぞ」


「……ええ」


 2人は30分待つことにした、マナならば転移して戻ってこれるかもしれないがすぐに戻ってこない以上なにかアクシデントが起こっているかもしれない。


 2人の無事を祈りながらもアイリスは30分待つことにした。

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