10:マナの正体
夕暮れも終わる時に、学園の全生徒は大食堂に向かうことになる。
「うむ、ここが食堂とやらか?」
夜になるとこの大食堂が開放される。
大食堂という名の通りに、全校生徒が余裕で食事ができるほどのスペースが確保されている。
朝と昼の食事が購買というところに任されている以上、ここの夕食はなかなかに豪華なものが並んでいる。
「こっちよ、マナとエルサ」
どこに座ろうか見渡していたところ、2人は手を振っているアイリスを見つけてその席にたどり着く。
見るに空き席が二つあり、その場にいるシエルと席を確保していたのであろう。
マナはこの二人がなんだかんだ一緒に居ることが多く、案外仲が良いのだなと思い、
「貴様たちはなんだかんだ仲がいいな」
「誰がよ!」
思わず口に出したが、アイリスはそれを否定し、シエルは無言で肯定も否定もしなかった。
「まあ、腐れ縁というやつだな、私について来れるものは不本意だがこいつしかいないからな」
「私についてきてるんでしょ、あなたが」
アイリスとシエルの間で火花が散る、お互い負けず嫌いなので小さな事でもこうぶつかり合いになるのである。
「うむ、ライバルとはなかなかに得難い存在だからな、我にも居たぞ……雷神の大英雄、清き乙女の勇者、どちらも我が認めた人物だ」
マナはそう語る、アイリスとシエルはその称号を持った2人は一体何者だと思い、ついにアイリスが重要な事を聞く。
「というかあんたの正体は一体なんなのよ? 今日の召喚の事件とか見ると只者ではないとしか推測できてないんだけど」
それを聞いたマナは、そうだったなとポンと手を打つ。
「そういえば名乗ってなかったな、我は魔王だ1000年前の」
「ふーん……って1000年前!?」
「……魔王だと?」
自然と何気なくそう言ったのでアイリスは一度流そうとしたが、1000年前の魔王と聞いて驚かざるを得ない。それはシエルでさえ同様であった。
「1000年前って、どうやって時を超えたのよ!?」
「一度、魂だけの存在となって眠りについていただけだ、今生のこの身体は我の本当の身体ではない」
マナは、本当の我はかっこいいイケメンだぞ、と言っているが問題はそこではなかった。
「転生ってそんな簡単に出来るの!?」
「うむ、面倒だが不可能ではなかった、我は転生の女神に頼み込んだ」
「まずその存在が意味不明なんですけど!?」
アイリスは驚きっぱなしであった、対してシエルは静かにマナを見据えていた。
「……王か」
「うむ、一応全世界を統一したぞ」
「お前は王であるなら王たる理由があると言ったな」
「知りたいか?」
マナは意味深な表情でシエルを見る、シエルは彼女ならば答えを得ているのであろうと確信していたがそれを聞くことはしなかった。
「……いやいい、私が理解してたどり着かなければ意味がないのであろう、それは」
彼女の王道は彼女のもの、自分が見つけなければならないのは自身の王道だとシエルは思ったのだ。
「うむ、良く言った」
マナはその答えに納得する、まあ知ったところでまだ彼女では無理な話であるが、だがこの心構えならそれに直面した時、乗り越えることが出来るであろうとマナは未来を見据えていた。
「で、あんたの目的はなんなのよ」
「目的か、まあ今のところはこの世界を見定める段階であるな」
マナはアイリスの問いにそう答える。
「我は退屈というのが苦手でな今回の転生もそれが理由だ、だが今生においてこのロリの身体、変わった世界、くりぃむぱんの存在だけでも楽しむ要素は沢山ある」
「私だったら男になっただけで最悪だけどね」
「我は我だからな、女だろうが、子供だろうがそこに変わりはない」
マナにそこは変わりはなかった、自分への絶対的な自信、究極のナルシスト、だがそこまで突き抜ければカリスマへと変貌する。だからマナはどこの時代でも王であるのだ。
「ちなみにこの時代がつまらんなかったらどうしてたの?」
「意味がないと判断して、速攻で滅びている」
それを聞いてアイリスは息を飲む、途方もない話ではあるがこの少女ならそれが出来ると感じられていたのだ。
「しかし、聞いたことがないなクリフォルトの魔王か……」
シエルは魔王を目指す身である、歴史上の魔王であるなら全て覚えているがクリフォルトの魔王は初耳であった。
「世界の最北端に存在するはずなのだがな、この時代においてはもう失われているかもしれんな」
マナは少し寂しそうな顔になる。一応はマナが統治して繁栄させた王国だ、いつかは滅びるものではあるがそれでも滅びたら滅びたで興味なしというわけにはいかなかった。
「行ってみる?」
「なに?」
「何か痕跡があるかも」
「ふむ、そうだな滅びた我の土地を見るのも悪くない」
エルサはそう提案しマナは頷いて同意する、1000年後の自身の土地がどうなっているのか興味があったのだ。
だがそれに異議を申し立てる人物が一人いた。
「ちょ、ちょっと学校はどうするのよ?」
「構わないだろ、私も着いていくぞ暇なのでな」
アイリスは授業があると主張するが、シエルはそんなものくだらんと切り捨てる。
「……確かに面白そうかも」
アイリスは基本的に優等生だ、授業はつまらないと言うがしっかりと聞いてはいる。そんな彼女の性格だから授業をサボると言う行為は躊躇われるものであるが、面白そうな提案に負けたのであった。
「うむ、では明日さっさく行くとしよう」
こうして4人の食事は過ぎていき、明日はマナの故郷に行くことになったのだ。
その夜、ベッドに潜り込んだ、マナとエルサ、もう就寝の手前であったが、エルサはふと口を開く。
「マナでも、気になる?」
「ん? 城のことか?」
「うん」
「まあな、1000年も経てば滅びると思ったが……まあその結果を見るのも悪くない」
「でも、悲しいかも」
「よいかエルサ、形あるものはいつか崩れる、それを覚悟しているならば、悲しいなどという境地は訪れない、我がいま口惜しいのは我の偉業が語り継がれていないとこだがな」
マナは何もかもが滅びを迎えるのはこの世界の理だと知っている。
いや、そんなことは誰もしもが知っているが、それを割り切ることが出来る者は少ない、それこそが感情がある証拠であるが、マナは王が故にそれを覚悟して、背負い、生きているのだ。
「マナは強い」
「ふっ、当然だ……我は全世界を……手に入れた魔王……」
喋ってる途中でマナは眠気に襲われて、そのまま眠ってしまった。




