第九話 『パンダパジャマのみーちゃん』
「「「いただきまーす」」」
あれからというもの、咲はもともと俺と自分の二人分しか用意してなかったので、追加でみーちゃんのも盛りつけたところで、三人揃って「いただきます」を言った。
こんなににぎやかな夕食は久しぶりだと、内心わくわくした気持ちのまま、スプーンで今日の主役をすくう。
今日は咲手作りのカレーライスだ。
こういう寒い日にはありがたい一品で、カレーから立っている湯気とその香りは、昼から何も食べていない俺の食欲を刺激した。
「おいひ~」
隣に座っているみーちゃんの声だ。
みーちゃんも相当おなかがすいていたのか、口の大きさと釣り合いが取れていない量を靴に放り込むと、案の定ほっぺが膨らみながらも頑張って咀嚼をして、ゆっくり飲み込んでいった。
いまのほっぺ写真撮りたかったなと、後悔する自分がいながらも、カレーを口に放り込んだ。
みーちゃんに倣って、しっかり咀嚼をして、ゆっくり飲み込む。
「うん。美味い!」
もちろん食レポ経験がゼロな俺なのだが、これしか言いようがないし、変に食レポする必要もない。
そのくらい咲の手作りカレーはおいしい。
「さきねー料理お上手!」
「ありがと。いっぱいあるからおかわりもしてね」
いつの間にかみーちゃんの咲への呼び方が『さきねー』になっていたことが、おかしくもあり、みーちゃんらしさもありといった感じで、やっぱり可愛い。
一通り食べ終わった俺たちは、みーちゃんと咲がまだ風呂に入ってないということで、「俺が食器を洗っている間に、風呂に入ったらどうだ」という提案をしたところ、妹は少し申し訳なさそうにしながらも、その提案に乗ってくれた。
とりあえず全部食器を洗い終えた俺は、適当にソファに寝ころびながらテレビを観て、咲とみーちゃんが風呂から出てくるのを待つ。
一応さっき風呂には入ったのだが、みーちゃんの家に全速力で行った時汗をかいてしまったので、もう一度シャワーだけ浴びたいのだ。
待つこと数分。
「あーくんあがったよ!」
パンダのような配色のパジャマを着たみーちゃんが走ってリビングに来た。
水分を含んだ髪の毛に、上気した顔。
みーちゃんはそのまま俺のいるソファにダイブしてきた。
「おっと」
何とかみーちゃんを受け止めたはいいが、パジャマ越しでも伝わる熱を含んだ身体に、髪の毛から漂ってくるいい匂いに、正直動揺せざるを得ない。
「あーくんすーーーーーき」
俺の胸辺りにみーちゃんは顔をうずめながら、俺への好意を伝えた。
正直滅茶苦茶うれしいのだか、みーちゃんに好きと言われるたびに、俺の精神は削れていってる(いい意味で)。
みーちゃんは返事を求めるようにうずめていた顔を、俺の方に向けて、キラキラした顔で返事を待っていた。
「じゃあ俺はそれ以上にみーちゃんが好きだね」
少し動揺してしまったのはさすがに許してほしい。
「じゃあその一兆倍あーくんが好き!」
「じゃあ俺はその一京倍すきだよ」
そんな言い合いが続き、最終的にはお互い同じくらい好きということで話は片付いた。