第七話 『犯人はネズミさんでした』
「みーちゃん!」
俺は、みーちゃんの家に着くなり、ただみーちゃんのことが心配で、勢いのまま玄関のドアを開ける。
玄関で靴を乱雑に脱ぎ捨て、ドアの隙間から漏れている光でそこがいまみーちゃんがいるリビングだろうと推測して、その部屋に入ると、
「あーくん……こわいよぉ……」
ソファにくるまって怯えているみーちゃんがいた。
今にも泣きそうなみーちゃんは、何とか涙をこらえてがんばったんだ。
「大丈夫だよみーちゃん、この通り俺が来たんだから」
ニッと笑顔で返した俺だが、みーちゃんの恐怖が少しおさまったらいいんだけどな。
「うん。あーくん来たからもう怖くない」
みーちゃんの顔色も、だいぶ落ち着いてきてた。
「台所の方は俺が見てくるからみーちゃんはまっててね」
そのままキッチンに向かい、いろいろ調べてようやく、フライパンなどが入ってる収納スペースの中に奴がいた。
「チュ?」
ネズミだ。
俺はゆっくり捕まえ、両手でふたを閉めながら外に逃がしてやった。
「ネズミがいただけだ、お化けでも何でもないからもう大丈夫だよ」
「ありがとあーくん。でも、もうあーくんが来た時点で怖いの完璧になくなってたよ」
「それはすごいな、みーちゃんは強い子だ」
ソファで頭をなでてやると、気持ちよさそうな可愛い顔をしていた。
「じゃあ俺はそろそろ……」
と、さすがに帰らなきゃいけないなと思った俺は、ソファから立ち上がろうとしたら、みーちゃんが俺の服を引っ張った。
「今日は……一緒に寝たいな……」
ですよねー。そのパターンですよねー。
別に嫌なわけではないが、っていうかむしろ家に一人だけにさせたくはないのだが、こればっかりはさすがにやばい気がする。
「俺もできればこのまま一緒に寝てあげたいんだけど、いろいろまずいじゃん」
「付き合ってるのに……」
そんな顔で言わないでよ……。
上目遣いで頼んでくるみーちゃんに、悲しい思いをさせたくないと思う俺。
どうすればいいんだこれ……。
それにみーちゃんの言い分も一理ある。
付き合っている男女は基本一度は一緒に夜を過ごしたことがあるだろう。
「ん~……」
本当にどうしたもんかと、いろいろ考えてはみるが……。
「あ、じゃあさ、俺んちで泊ってくか?」
「いいの?」
「うん。妹がいるし、それならなんとかなるよ」
「やったー!あーくんちでお泊りだぁ!」
そんなこんなで、俺んちにみーちゃんが泊ることになった。