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第二十話 『俺の幼馴染、実はいい奴だったっぽい』

「私のあーくんを奪おうとした罪は深いよ」


 自宅リビングにて。

 俺の目に映るのは、床に正座をしている華怜とその正面で堂々と仁王立ちをして罪を問いただそうとしているみーちゃんの姿。


「だから……奪おうとなんてしてないよーこれっぽちも」

「じゃあなんで二人で家に上がろうとしたの!」

「それには事情が……」


 小学生に言い伏せられている女子高校生の絵というのはなかなか面白い。

 しかし、俺もただ見ているわけにもいかないだろう。

 華怜に助け舟を出さねば。


「みーちゃん本当に違うんだ。みーちゃんにも全部話すから、いったん華怜のことは許してくれるか?」

「……あーくんが言うなら」

「いい子だみーちゃんは。さすが俺の彼女だ」

「えへへ~。あーくんに褒められちゃった」


 それから華怜が昨日俺に告白をしようとしたことや、みーちゃんが俺に告白をするところを華怜が見ていたことなど洗いざらいみーちゃんに打ち明けた。


「じゃあ本当にあーくんを奪おうとなんてしてないんだね?」


 みーちゃんが華怜の瞳を据えながら言う。


「本当の本当の本当に奪おうとなんてしてない!してないし、しようといてもあなたに対するあっくんの気持ちは揺らがないから無理だと思うよ」

「……わかった。さっきはごめんなさい……」

「いいっていいって、私も悪かったと思ってるし」


 まあ何とか丸く収まったみたいでよかった。


◇◆◇◆◇


「で、本当にこれ続けていくつもり?」


 あれから四人で話したりして、今は俺が華怜を駅まで送っている道中。

 俺の隣を歩く華怜がスマホをいじりながら不意に聞いてきた。

 あれから華怜とみーちゃんは仲良くなり、今はラインの返信でもしているのだろう。


「なにをだ」


 とは言ったものの、俺には華怜の言葉の意味を理解している。

 昨日、みーちゃんが俺の家に泊まりに来た時にも思ったこと。


「絶対普通じゃないよ」

「……分かってる」

「ならなんで断らなかったの?」

「断らなかったんじゃない。断れなかったんだ。あんなかわいい子が俺に好きだと、付き合ってくれとお願いをしてきたんだ。……仮にあの時俺がみーちゃんに一目惚れしてなかったとしても、断ることはできなかったと思う……」

「そっ……か」


 華怜がどこか諦めたような表情で言う。

 そして今度は真剣な顔を俺に向け、


「だけど、世間は許してくれないよ。まずみーちゃんの前で理性を保つことは大前提で、恋人としても慎重にやっていかなきゃダメ」

「ああ、分かってる。ありがとな」


 多分華怜は今ものすごく辛いはずだ。

 俺のことが好きで告白しようとしたのに一足遅くて、それでも幸せを願うかのようにこうして常識外れの関係を心配して助言もしてくれている。

 昨日まで、いや、今もまだ俺のことが好きなのかもしれないのにもかかわらず。

 だから、俺は心の底から感謝がしたいと、華怜の両手を取って真剣に彼女の瞳を見つめ、


「本当にありがとう」

「……うっ……うっ……うえ~~~ん!あっくんのことが好きだったのに……くやしいよぉ……」


 華怜が俺の胸元に顔をうずめ泣く。

 弱々しく俺のことを叩きながら。


「そして、本当にごめん」


 俺は、華怜が泣き止むまでその背中をさすり続けてやった。

 今俺にできるせめてもの義務を全うすべく。


 

久しぶりの更新です。

読んでくれてた方すみません。

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