第二話 『幼女と公園デート?』
そして__
俺はその手を取った。
見た目以上に実際ぷにぷにしていて、俺の左手は完全に幼女の右手によって支配されていた。
もう逃れられない、逃がすことは許されない。
そんな気迫さえ感じられる。
恐るべし幼女……。
そしてそれと同時に全身を駆け巡る幼女エキス。
微細な粒子状のそれは、皮膚に触れたら最後、0.1足らずで全身に行き渡り、満足感や幸福感、疲労回復などの作用をもたらす。
今後は幼女医療法などが医学の基盤になってもおかしくはない。そんな時代なのだ、今は。
「公園でお話ししない?」
「そ、そうだな」
手汗かいてないかな?嫌がってないかな?周りの視線大丈夫かな?
幼女と手を繋げているってのに、大量の不安がのしかかってくるせいでまともに手を繋げていることへの幸福感が感じられない。
だが、手を繋げていることへの幸福感が感じられないだけであって、しっかり幼女エキスの作用は十二分に感じられているのでプラマイゼロどころか、プラスですらある。
恐るべし幼女……。
「最近冷えてきたよねぇ」
秋の乾いた風が彼女の純白の長い髪の毛を揺らす。
公園に着くなり、お互い隣り合ってベンチに座ると、身体をブルっと震わせてながら幼女が言った。
もう十月の中旬、昨日あったかのような夏の姿は、とっくに終わっていたらしい。
「ちょっと待ってて」
俺はベンチから立ち上がり、とある方向に向かって歩き出す。
自販機の前で百円玉を二枚投入して、ホットココアを買い、出てきたお釣りを取ってからまた百円玉とお釣りの十円玉を入れて同じのをもう一個買った。
振り返ると、少し離れたベンチに座りながら不思議そうにこちらを見ていた。
「可愛すぎる……」
ベンチに座っている幼女の元まで行くと、座ったまま両足を交互に上下に動かしながらこちらを見て待っててくれていた。
「おまたせ」
そう言って片方のココアを幼女に渡す。
「わぁ、ありがとう!」
「どういたしまして」
満面の笑みで受け取った幼女は、早速飲むのではなく、缶の熱で両手を温めている。
「あったか~い」とまるで心の言葉がそのまま出てしまったような幸せそうな声で、缶を今度はほっぺたにあてたりしたりしている。
「身も心もあったまったところで、自己紹介しようか」
「そうしよ!私たちお互いの何も知らないで付き合いは始めちゃったからね」
「ラノベでもこんな展開みたことないよ」
「らのべ?」
しまった……!
つい俺のオタク用語を会話にはさんでしまった。
幸いなことに幼女もラノベの意味を知らないっぽいし、何とかごまかせそうだ。
「小説のことだよ。俺っけこう読んでるからさ、そういう設定は見たことないなーって」
「そういうことか!私も学校の図書館でたまに小説読むよ!」
といった感じで何とかごまかせたようだ「なんかオススメあったら教えてよ」と言ってこの話題は終わった。
「お互いをたくさん知るための自己紹介をしよう!」
今度は幼女が切り出す。
「おー!」
俺もそのテンションに合わせる。
しかし今は人がいないが、誰か来たら怖いな……。
通報とかされないかな……。
このこなら必死に弁解してくれそうだし、お互いが承諾しあってお付き合いをしているのだ。
それが高校一年生と小学生だろうと関係ない。
俺はそう思うなり、不安なんか捨てて堂々といようじゃないかと心に決めた。