第十五話 『みーちゃんのお友達』
お互い、顔をそらしたまま時間が経つ。
どれくらい経っただろうか、さすがに気まずくなってきたタイミングでみーちゃんが、俺の膝上から降りて言う。
「あーくんおいてくよ!」
まだちょっと顔が赤いみーちゃんは、俺を置いて先に玄関まで行ってしまった。
俺もすぐにそのあとをおいかけて、二人並んで靴を履く。
みーちゃんが靴を履き終わったのを確認して、俺はドアを開けた。
すると、目の前には見知らぬ女の子がいた。
「みーちゃんおはよー……って、え……?」
「あきちゃんおはよ!」
黒髪三つ編みツインテで、眼鏡をかけたあきちゃんという子は、「え…え…」と、戸惑った様子でみーちゃんに助けを求めるような視線を送る。
「あー、この人は私の彼氏のあーくんだよ!」
「か、彼氏……!?」
「うん!彼氏」
「ちなみにいくつなの……?」
「高二!」
気弱そうなあきちゃんという子は、なぜか「すみません……!すみません……!」と、俺に謝ってくる。
「そんなに身構えなくて大丈夫だよ」
俺が笑顔でそう言うと、あきちゃんは少し警戒を緩めてくれたように見えた。
「みーちゃんと同じクラスの、楠 秋葉です……。では、これで失礼します」
これから俺とみーちゃんが二人で登校することに気を遣ってくれたのか、秋葉ちゃんは先に行こうとするが、なんなくみーちゃんに止められてしまう。
「どうして先行こうとしちゃうの?一緒に行こ?」
「え、だって、私邪魔じゃない?」
「ううん、ぜんぜん」
「一緒に行ってもいいの?」
「もちろん!」
三人で登校することに、一切の躊躇を見せないみーちゃんは、なんて純粋で優しい子なのだろう。
それから、三人並んで談笑に励むのであった。
とはいっても、それは最初の数分だけで、そこからはみーちゃんが俺の魅力とかを、秋葉ちゃんに言うだけのコーナーになっていた。
ほら、秋葉ちゃんも苦笑いだよ……。
◆◇◆◇◆◇◆
校門前まで到着した俺たちは、
「あーくんいってきまーす!」
「いってらっしゃ、二人とも」
みーちゃんは手をぶんぶん振り、秋葉ちゃんはお辞儀をして、二人校舎に入っていった。
当たり前だけど、ちゃんとみーちゃんに友達がいて安心する俺。
まああんなにかわいければクラスでも人気者なのかな。
俺はそんないらぬことを考えながら、学校に向かうのであった。
昨日からあんなにうれしいことがあったのだ、いつもはめんどくさい学校も、今日はなんだかそうは思わなかった。