第一話 『俺、幼女に一目惚れする』
「私、あなたが好きなの!結婚したい!」
俺、金村 篤16歳高校一年生は、どこにでもいるロリコン隠れアニオタだ。
そして今俺の目の前で起きている状況を説明する前に一つ、皆に聞いておきたいことがある。
『一目惚れ』とはいかがなものか。
聞こえはロマンチックで運命的なようにも思えるが、裏を返せば、その異性に対して見た目だけでしか判断していないということになる。
確かに、人の七割以上は顔で決まるっていう話も聞かなくはないが、それが果たして本物の恋か否か。
俺が思う本物の恋とは、相手を知り、頑張ってアプローチして、そしてそれが結ばれるとき。
じゃあ一目惚れで成功した恋は本物の恋ではないのかと聞かれると困ったもので、今から言うことが正しいかは置いといて、俺の中での解釈では、付き合う前が恋。付き合っている最中が愛。そう定義づけている。
ほらよく付き合ってる男女が「愛してる」「私も」みたいなのを聞いたことがないだろうか。それが愛。
なので、一目惚れ自体本物の恋と呼べるものではなく、しかし本物の愛なら育むことはできるのだ。
恋愛経験がない俺がなんでこんなに本物の恋に執着するかって?
そんなの自明だろ。一目惚れなんていう薄っっっっっぺらい理由で女の子と付き合っても面白みがない。
頑張って努力して結ばれた方が達成感や幸福感など得られるものも多いし、過去を振り返って「俺ほんと頑張ったよなぁ」って一生消えない青春の一ページが残る。
だけど__
前言撤回!みんなごめん!俺今一目惚れしてるわ!!!
「えーと、俺も大好き」
しかも真っ赤なランドセルを背負った小学生に!
「や……やったぁ…………。嬉しい」
めっちゃ顔赤くなってますやん!やめて!俺もつられてリンゴになっちゃう~。
両手を頬にあててくねくねしている眼前の幼女と無事お付き合いが確定した俺だが、冷静に考えればやばくね?
俺の『本物の恋論』は正直この際どうでもよくて、こんなかわいい幼女が出合い頭に告白。そして結婚願望もあるらしい。
え……。マジやばくね。
あーこれ夢かっていう定番イベントをする以前に、この子の幼女オーラで無理にでも現実だと分からされる。
「手ぇつーなご?」
んなっ!!
そう言って差し出されたのは、すべすべもちもちの、まるでパンの生地のような右手。
その右手をとってしまったが最後、俺は幼女エキス過剰摂取で死んだりはしないだろうか。
いや、むしろ死ぬならそれが本望か。
「うん。いいよ」
依然きらきらの笑顔で、神々しく煌く右手を差し出している手に、俺はゆっくり自分の左手を近づけていく。
ゴクリ。
息をのむ。
俺の左手が幼女の右手に近づくにつれ、精神状態の警報もそれに伴い鳴り響く。
母ちゃん、昨日の夕食の肉じゃがの味絶対忘れないから。俺の大好物だからって手間かけて作ってくれたよね。今までありがとう。
そう心の中で遺言を残すかのように。
そして__