5.王様は俺をなめているようです。
それじゃあ、入るか。
そう思い俺はトビラを開くと王様に話しかけられた。
「アイル=スカーレットよ、よく来たな。それにしても、来るのが早くないか? あと、一日はかかると思っていたのだが」
やはり、怪しまれるか。
というか、それにしては準備ができすぎている気がするのだが。
まぁいいか。
とりあえず、てきとうにごまかそう。
「気にしないでください」
「そうか。とりあえず、そのことは考えないでおこう。では、さっそくだが本題に入ろう。すでに、知っているかもしれないが、アイル=スカーレット、お前には魔王を倒す旅に出てもらう。今日はその旅に出るための装備を渡すためにここに呼んだ」
やはりそうか。
だいたい予想はついていたが本当に魔王を倒す旅に行くことになるとわな。
それにしても俺は仮にも勇者だが、能力は役職がないときと変わっていない。
幸い、元々習得していた身体強化系の魔法はあるが魔王を倒す旅ともなれば、それだけじゃ攻略は不可能だろう。
つまり、今から渡される装備に全てが、かかっているといっても過言ではない。
「それでは、さっそく装備の方を」
「ああ、今から渡そうではないか。これだ」
王様がそういって差し出したのは、よく分からない何かのカケラだった。
よく見ると何かの装備のカケラにも見えるが。
まさかな。
「これ、何ですか」
「初期装備のカケラだ」
「すみません。よく聞こえませんでした。もう一度いってもらってもいいですか?」
「初期装備のカケラだ」
「ん?」
初期装備のカケラ?
なんだそれ。
カケラってもはやアイテムじゃないか。
どういうことだ。
「ありえない、といった顔をしているな。残念ながらこれが現実だ。この国では勇者が天から授けられると、その勇者に適正の装備を旅の前に渡すことになっている。そして、お前の適正装備を調べたところ、それだったのだ。だから仕方ない」
俺の適正装備が初期装備のカケラだと? その適正、多ハズレすぎないか。
だが、受け取らないと処罰とかになりそうだからとりあえず受け取るか。
いくら初期装備のカケラだといっても、俺の適正装備なんだ。
必ず何か俺とあうところがある、と思いたい。
「それで、構いません」
「ならば、この初期装備のカケラを渡そうではないか」
「ありがとうございます」
そう言って俺は、初期装備のカケラを受け取り、外に出る。
それにしてもどうしたものか。
とにかくこの、初期装備のカケラと俺のなにが適正なのか分からない。
そういうのに詳しい人がいればいいのだが。
そうだ、カミラのところに行こう。
たしか、前に住所を書いた紙をもらっていたはずだ。
そう思い探してみるとすぐに見つかった。
神殿の近くか、今日はもう遅いし、明日にでも行ってみるか。
そう思い俺は家に帰る。