3.王宮からの手紙
「アイルさん! 役職、どうでしたか?」
近寄ってきたのはカミラだった。
俺が神殿から出てくるのを待っていたのだろう。
それにしてもカミラに、なんて説明すればいいのだろうか。
勇者になった、なんていっても信じてもらえないだろう。
とりあえずてきとうにごまかすか。
「それが、なにか問題があったらしくて俺は後回しになったんだよ」
「おかしいですね。アイルさんの役職は勇者とかいてあるのですが」
「ギクっ」
もしかしてこれも大賢者のスキルなのか? 便利すぎるだろ。
魔石を使っても自分のステータスしか見れないのに。
俺なんてスキルゼロだぞ。 単純にうらやましい。
それにしてもカミラに勇者になったことばれてしまったな。
もう、正直に話すか。
「どうやら本当のようですね」
「ああ、いろいろあってな。役職だけは勇者になってるんだがステータスが全く変わらなくてな。スキルもゼロだ」
「そうだったんですか。それにしてもアイルさん、これからとてつもないことになる気がします」
「そっ、そうなんだ。もう今日は家でおとなしくしてるよ」
「はい。また、何かあったらいつでも声をかけてくださいね。あっ、私はここに住んでいるので」
そういって住所を書いた紙をカミラから渡された。
それにしても、今、カミラ自分で紙作ってその紙に魔法で文字書いてたよな。
本当は大賢者より勇者の方が圧倒的にいい役職のはずなのになぜかとてもうらやましいという気持ちになる。
・・・・・・本当になんでだろうな。
そんなことを考えながらカミラから紙を受け取った。
「じゃあな」
「はい!いつでも声をかけてくださいね」
「ああ」
そういって俺は家の方向に歩き始める。
なんというか家を出てまだ二時間くらいしかたっていないのにとても疲れた気がする。
まぁ、しばらく家で休むとするか。 そんなことを考えているうちに家に着いた。
さてと、これからなにが起こるのか。
頼むからなにも起こらないでくれ。
・・・・・・俺が神殿に行き勇者になってから一ヶ月がたった。
今の所特に目立ったことは起きていない。 あったとすれば魔石を使いステータスを見ているときになにかを装備としてつけれるような枠があったことくらいだろうか。
それも、普通の役職と違う枠が。
いったいなんだろうか。
そんなことを考えていると母さんの声がした。
「アイル、あなた宛に手紙が届いてたわよ」
「本当だ」
いったい誰からだろうか。
手紙なんてめったにこないのに。
とりあえず見てみるか。
差出人は、ん? 王宮からだと?
俺は特に王宮に呼ばれるようなことはしていないと思うのだが?
とりあえず内容を見てみるか。