2.勇者なにそれおいしいの?
「さて、呪文を詠唱するか」
俺は神殿の魔法陣の上に立ち呪文を詠唱し始める。
「天よ! 我が名はアイル=スカーレット!我に役職を与えたまえ!!」
俺が呪文を詠唱し終えると、周りが光り輝いているくらいしか特徴がない謎の空間に飛ばされた。 普通、呪文を詠唱し終えると体が光る。
その時点で役職は授けられているので今の俺のように変な空間に飛ばされることはない。
・・・・・・つまりここはどこだ?
「なんだ、ここ?」
つい、声に出してしまった。すると、目の前に神々しいなにかが現れた。
「誰だ!」
「我が名は、セイア=クリスタル! 勇者の役職を司る神だ!!」
勇者の役職を司る神?
そんな神さまがいったい俺に何のようだろうか?
直接聞いてみるか。
「いったい神様が俺に何のようですか?」
「お前に勇者の役職を授けてやろうと思ってな! 人間の世界では百に一度の役職といわれているそうじゃないか!! お前は実に運がいいな」
!!!!今、俺の頭の中がびっくりマークでいっぱいになっている。
俺に勇者の役職を授けるだと! あの、百年に一度といわれるあれか?
だとしたらやばいだろ。
天級どころじゃない、あの強大すぎる力を俺が授かるというのか?
「それ、本当か?」
「ああ、本当だとも! 俺もそろそろ誰かに授けなきゃなぁ、と、思っていたんだよ!
そんなときに面白そうなやつが来たからな!それがお前だ! ということでここに呼び出したわけだ!!」
「とても信じがたい話だな」
というかこの神様なんか軽くないか? 他の神様もこんなんなのか? もし違うとしたら他の神様がかわいそうだな。
この神様に変な印象つけられて。
「お前がいいなら今すぐにでも勇者の役職を授けてもいいぞ!」
「じゃ、じゃあお願いしようかな」
なにか、ことがよく進み過ぎてる気がするんだが。
まぁ、今はそんなことを気にしても仕方ないか。
それに勇者を授けてもらえるんだ。こんなの授けてもらう一択だろう。
「よし、それじゃあ行くぞ!」
「アイル=スカーレット、お前に役職:勇者を授ける!!」
神様がそういうと、俺は神殿に戻っていた。
終わったのか? だが、俺の体に変化はない。
なんというか、強くなった感じがしないのだ。 見た目も特に変化していない。
俺はそう思い自分のステータスを魔石を使い確認してみる。
「おい、これ、嘘だよな。」
なんと、役職は勇者になっているものの、ステータスがなに一つ勇者になる前と変わっていないのだ。
俺は、昨日、もステータスを確認していた。
だから間違えるはずがない。それに、スキルも一つどころかそもそもない。
・・・・・・つまり、これはどういうことだ????
頭の中がはてなマークでいっぱいだ。そんなことを考えながら神殿の外に出ると、誰かが近寄ってきた。