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箱庭の梟

韜晦の梟

作者: アウル



コノセカイハ ナニデ デキテイル?

それは問う


聞き慣れない言語は森の中に沸き立つ霧の様だと思った


四角い部屋に小さな窓

他には何もないこの箱庭が私の世界の全て

小さな窓に住む彼等と私という無

そして騒音と静寂それが日常なのだから


心が受け止めきれない強烈な体験をしたとき

人はどうなってしまうのだろう

不幸だとか運命だとかそんなものは関係無い

変えられない現実がそこにあるだけ


あの日を繰り返し

もう何年もいや何十年も

気の遠くなる程の年月を後悔と孤独で埋めてきた

今さら想ってみても

もう遅い

繰り返され擦りきれた記憶をなぞり

ぼやけた偶像にさえ赦しを請う

面影すら薄れているのに無駄なことだ


あぁまた今日も騒音が軋みながらやってくる

足元にあるのは歪んだ影ばかり

見上げることのない陽は重くのしかかり

小さな窓は何も映さない


眩しさに目を背けるように

私は今日も死んだふりをする

声を出してはいけない

奴等に気付かれてしまうのだから


息を殺し耳を澄ましその時を待つ

黄昏に煌めく月と(かげ)りゆく陽

やがて影は大きくなり静寂が世界を包む

静謐(せいひつ)な空間と一体となれる

この瞬間(とき)が一番好きだ


今日もまた騒音と静寂そして無を繰り返し

小さな窓から(うごめ)く歪な影を覗く

影の狭間(はざま)に立ち

悶える私は何者だろうか


いくら羽ばたいてもたどり着けない空は

記憶の彼方で眠っている

塗り潰した記憶とこぼれ落ちる不確かな感情

声は出なかった



コノセカイハ ナニデ デキテイル?



小さな窓に背を向けうずくまる

存在しないはずの心は汚しても汚しても醜く鼓動する

顔を上げない私にもういいと彼等が叫んだ

背中に投げつけられた言葉はもう一人では背負いきれない


大きくなりすぎた影は全てを(ほふ)

境界さえ分からなくなる

積み上げたガラクタに注ぐ賛辞はまるで呪いのようだ

在るはずの空を見つめ立ち尽くす


戻ることも進むこともできずに留まるのはいけないことだろうか?

悲しみや苦しさの刺は誰にも理解されない

重い心を引き摺り

叫べない口元を不自然な笑顔で歪ませ

乗り越えなければ生きていてはいけないのか

倒れることを赦さず

泣き言さえ歌えない



コノセカイハ ナニデ デキテイル?



歪む小さな窓が薄く光る

目覚めても目覚めても同じ情景

いったい私は何者だろうか?

小さな窓に触れるとうつる顔の無いたくさんの文字たちが

無責任に(まく)し立てる



コノセカイハ ナニデ デキテイル?



あぁ五月蝿い



コノセカイハ ナニ?



五月蝿い




世界が潰れたあの日に

何もかものみこんだ闇に私は居る


結局私はあの頃と何も変わらない

無意味と惰性を何度心に刻んだだろう

打ち捨てても私というモノがぶざまに喘ぎ騒ぎ立てる

依存や恐怖心といった類いのものが後悔させるのか

感情という種火がまだ燻っている

それが疎ましいのだ

厄介だ


出口のない箱庭でセカイの果てがあるのなら

答えが見つかるだろうか

もう何度在るはずの空を捜しただろう

古びた鍵は(よど)み端は朽ちている


途方にくれ

悪態をつき眠りに着く

明日は変わるはずと思えたのはいつの頃だったか

もう思い出せない


四角い部屋を眺め

小さい窓を見つめ

目を閉じる



何も無い

何も聞こえない

何も...



夢現(ゆめうつつ)に風の記憶を聞く

小さな影と2つの大きな影

重なり合い離れて弾ける

すれ違う影に忘れていた面影を

頬を(かす)める風に懐かしい声を聞いた気がした



目覚めると四角い部屋に小さい窓

窓の端に映る黒く醜い塊は私なのか

手を伸ばし紡ぐ暗号は小さい窓への鍵

奇妙な住人たちの公開裁判が始まる


赦されたいのか

解放されたいのか

逝きたいのか


この茶番を楽しむような無数の文字の羅列

首を切られたトランプ達が有罪を叫ぶ



四角い部屋に木霊する意味の無い騒響に

震え怯える


有罪

有罪

有罪

有罪

有罪



群青の闇に突き立てる紅の刃先

冷たくなる指先に 震える睫毛に

賛辞の嵐 ハレルヤ




静まり返った庭にゆっくりと舞い落ちる風切羽





気の遠くなる程睨んだ箱庭と小さな窓に別れを告げ

歪んだ空に手をかける

静まり返った窓の奥

飛び立つ紺碧に白い羽が宙を舞う




コノセカイハ ナニデ デキテイル?と誰かが笑った





















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