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ギャラクシーフォース  作者: こうえつ
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光の獣


 ついに人間は魂を完全に、データ化する事に成功した。

 データ化された魂は”エーテル”と呼ばれた。

 永遠の人間となるべく、人には目的別に形、フォームが与えられ、それぞれが専用のスキルを付与された。


 食べることから寝ること、遊びや恋愛にいたるまで、人の生活の全ては、システム化されたプログラムにより、エーテルを介して行われるようになる。繁殖するのに男女の交配は必要なくなり、男と女が共生する意味が無くなった。


 時を同じくして、男と女のエーテルのフォーマットにある、基本的な構造の違いが問題視された。研究の結果、一つのエーテルフォーマットでは、男と女の本能的な部分を、忠実に再現することができないと判明したのだ。この時から、エーテルは白(女)と黒(男)の二種類に分けて、管理されるようになる。


 また、エーテル化した社会に起こる問題を、合理的かつ迅速に解決する為に、セントラルと呼ばれる中央管理システムが構築された。

 白いエーテルと黒いエーテルは、互いのデータを必要とせず、直接の交配は絶えた。そして、更なるシステムの合理化の為に、エーテルのフォーマット管理の一元化が検討されるようになり、セントラルは、白と黒、お互いのエーテルを干渉できないエリアへと移動する事を計画。女は”光の神”、男は”闇の神”と名乗り、宇宙の両端に、それぞれの新しい国家を創世した。


(私はどのくらいの間、ここに居るのだろうか)

 薄暗い地下の牢獄で、時間や日にちにの感覚は既になくなっている。それどころか、自分が生きているという自覚も無いくらいだ。生きているとしても、もう誰からも必要とされない存在なのだろう。 感覚というものを持ったのはここへ来てからだった。自分が得る快適さの中に、心地よいだとか、温かいだとかいうものがあることにも気が付いた。気が付くことですら、ここに来て得たものだろう。名前も感情も、何も持っていなかったかつての私のことを、今は不思議に思う。


 私は、ただ目の前の敵を殺すためのフォームを持つ獣だった。戦闘以外のことは何も与えられず、千年もの月日を戦ってきた。感情さえ持たない私には、敵も、殺し殺されることにも、恐怖を感じることはなかった。とても小さな震える手に触れるまで、私には戦うこと以外には本当に何も無かった。


 とある星への進行作戦中に、硝煙と血の臭いが立ち込める、敵の最終防衛ラインにある小さな街で、私は退却した敵の残した、幼い少女を発見した。

「目標、戦闘力レベル2、性別女、ヒューマノイド、推定年齢十四歳」

 感情を持たない私には、幼い少女と言っても、地面に転がる石と同じだった。生命反応があるかどうかの違いだけしかない。この星全体をスキャンしても少女以外の敵は見つからなかった。もうここには私が殺すべき強い敵はいない。


「光の獣より、セントラルへ報告。敵拠点制圧完了」

 プログラム通りに報告メッセージを送信していると、何か手に触れるものがあった。少女の手だった。私は即座にLRガンを少女の眉間にあてた。


 私の任務は、この地域の制圧だ。全ての生き物を殺すようにプログラムされていた。生命反応は一つのこらず反応を消さねばならない。私は躊躇せずに、トリガーにかけた指に力を入れようとした。それと全く同じタイミングで少女が口を開いた。

「ねえ、あなたのお名前はなんていうの?」

 恐怖や疑いのない瞳がまっすぐに私を見ている。

「名前? 名前は無い。集合体で光の獣と呼ばれている。管理番号NO-980051だ」


「そう。難しいお名前ね。私はモイラ。時の神らしいわ。時を操るなんてできるのか分からないけどね」

 名前。IPアドレス以外に、有機的な呼び名などはなかった。少女は、真剣に悩んでいるようだった。

「私があなたに名前をつけてあげる。そうだなあ、フレイヤはどう? 神話の神の名前だよ」

 少女の行動は私の理解できる範囲を超えていた。何をしようとしているのか分からない。だが名前をつけられるというのは快適だった。

「フレイヤ……。私の名前……」

 私がつぶやくと、少女はにっこりと微笑んだ。私はLRガンのトリガーを再度意識した。私の任務は、この地域の制圧、全ての生き物を殺すことだ。

「どうしたの?」

 純粋な瞳が私を見た。私はLRガンを発射した。それから、光速通信をオープンにする。

「セントラルへ報告。任務完了。これから帰還する」


 最後の一つの生命反応を消すことができず、持ち帰った私に、セントラルは幽閉処置命令を下した。セントラルの判断では、エーテル社会にとって、他種族から受ける影響は必要無く、他種族は、むしろ邪魔な存在とされた。そして影響を及ぼす可能性がある他の生物を消滅させるべく、”白き艦隊”を作ったのだ。白き艦隊は光の神以外の、全ての生物の抹殺を実行する。


ここを出よう。最高の戦闘システム”光の獣”を。

 たぶん私は、光の獣に追われることになるだろう。そしていつか死ぬ。そう結論付けた私は笑っているようだった。


笑う。

 本来、私には備わっていない機能だったが、プログラムのバグなのだろうか、いつの間にか出てくるようになった。

「後は”泣く”をしてみたいな」

 その夜、私は光の獣を抜けだした。外に出た私を、光の獣、十万の部隊が待っていた。

「何故命令に従わない」

 光の獣が私に迫ってくる。私は通常モードから、戦闘モードに切り替えた。戦闘モードに移行する時、光の獣は、全員がシンクロし、知識を供用、並列化する。瞬時に十万の光の獣に、異常を告げるアラートが響いた。

 私の意識、心が、光の獣全体へ浸透していく。私以外の光の獣が、システムダウンを起こして、その場に倒れていった。私の中に生まれた、プログラムには無い、感情と、それに付随する行動は、ノーマルフォームの光の獣たちのプログラムに受け入れられることは無く、障害と認識されたようだった。

「ここで死ぬことはなくなったのか」

 停止する光の獣。

 死に対する恐怖など抱いてはいなかったけれど、戦闘が中断され、私の心に何かまた新しい感覚が芽生えたようだった。生温かいものが頬を伝っていく。手のひらで頬を拭いながら、私は遠くの空を見上げた。


その頃、遥か上空、漆黒の宇宙には、光り輝く巨大な宇宙船が現れていた。 そこから見える星に、赤い光が無数に点灯しているのが見える。宇宙船の艦長が館内に命令を発した。

「ついに、真の光の獣が現れた。銀色の瞳を持つ戦士を回収後に、問題の……青い瞳を持つ魔女の回収に向う!」


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