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ギャラクシーフォース  作者: こうえつ
3/27

開戦

翌日、教室の自分の席で、私は大きなため息をついていた。

「昨日のあの人のこと、夢だったのかなあ。うーん、おかしいなあ」

「何? 夢に出てきたの? 昨日の彼氏が?」

 席に近づき独り言を拾い上げた愛莉とは、同じクラスだった。

「おはよう。愛莉」

「彼氏だって!? 悠里絵、彼氏が出来たのか?」

 後ろから大きな声がする。時輪だ。

 時輪はそれこそ、今時珍しい普通の男の子で、特技がない代わりに、人に嫌がられる事もない。たま大げさな仕草や大きな声を発する、クラスメイトとしては、まあまあな人物だった。ひとりの方が気楽だと思ってしまう私でも、最近は時輪が近くにいることに慣れつつあった。

「それで、どんな男だ? オレよりいい男なのか?」

 時輪の言葉に、愛莉はシゲシゲと時輪を見つめている。

「あんたと比較すると、幅が有りすぎて困るけど、まあこんな男よ」

 愛莉が自分のカバンから一枚の絵を出すのを見て、すごく嫌な予感がした。

「ええ? 愛莉また描いたの? あの人の絵……まって! ちょっと~~」

 チラリと見えた絵、嫌な予感は的中していた。愛莉が絵を描いていることを知って動揺する私を見て、時輪はさらに興味深々だ。

「どれどれ、オレに見せてみろ」

「絶対ダメ! 人の夢を見たらダメだって! こらぁ~~」

 私は叫びながら、絵を取り上げようとしたが、それを簡単に回避する愛莉の動きは素早かった。

「普段は運動を嫌いだとか言ってさ、その動きは何なのよ! て、それどころじゃないよ~~よこしないさよ!」

 再びひらりとみをかわした愛莉が悪戯っ子の顔をしている。ますます、嫌な予感がが心に広がる。

「いいじゃん、別に。作者は私なんだから版権は私にある!」

 腰に手を置き、さっぱり意味が解らない、主張を愛莉がした時、愛莉の手から、絵をスッと取った男が居た。

 よく私たち3人の居るこのD組に出没する、A組の八束だった。

 先週、私は八束に告られたけれど、返事は適当に誤魔化してあった。

 男の子に興味が無いわけじゃない。こうして理想の人もいるわけだし。つまり理想が高いのだ私は。

「おお、綺麗な女の子だな。これ愛莉が描いたのか?」

(うん? 女って、私の理想の人が女の子に見えるの?)

「それ、悠里絵の理想の彼氏らしいぜ」

 時輪の言葉を聞いて、愛莉の絵を今度はじっくりと見ながら、八束は言った。

「どう見てもコレ女だろう? まあ、男だとしても、オレの方が絶対いい男だけどな」

 これには全員、お手上げポーズ。

 私の高校での生活は、いつもこんな感じだった。まあ、平和と言えばそうだし、クダラナイ事に懸命になれるのは幸せな事かもね。



 放課後、絵にそっくりな、私の憧れの人が現れないかと、私は図書館で待機することにした。


憧れの人が見ていたと思われる本、”Stars Logbook”を読みながら。


「緊急報告。異常事態発生」

 一段高いところにある、玉座のような席で、フレイヤが瞳を閉じて報告を聞く。アラートが鳴り続く中、“管理する者”が状況確認を行っている。

「報告。敵、闇の神が戦闘体勢に入った模様。味方艦隊ガードラインまで、あと二光年」

 フレイヤが、身体を起して意外そうにつぶやく。

「闇の神はどういうつもりだ。何か我々への対策でも出来たのか?」

 コンピュータの戦力分析では、圧倒的に高い勝率が光の神の側に出ている。

「アイリ。現在の我が艦隊の防衛ラインは、どうなっている?」

 フレイヤが”判断する者”の主席、副司令官のアイリに聞く。

「はい。現在、防衛ラインにはシールド艦二十五万六千が待機中です。詳細をお聞きになりますか?」

 この時代、大きな艦隊を編成する上で、戦船はその用途に特化が進んでいた。

 最前列には艦隊全てを覆うシールドを展開する為の艦艇が待機していた。


 フレイアの様子を見たアイリは手を挙げて、指示を出した。

「フレイヤのターミナルをオンラインモードへ移行する」

 アイリの言葉でフレイヤの周りにターミナルビジョンが十二セット現れ、ターミナルから光のラインが延び始め、フレイヤの身体に接続される。

 戦闘の間、”判断する者”であるフレイアは、十二本の光ケーブルで十二のターミナルにリンクして、届く要求を瞬時に判断していく、状況確認をマルチタスクで行う。


「報告。前線の我が艦が敵と接触しました」


 闇の神の攻撃が開始された。コンソールに、その様子が映し出される。

 漆黒の宇宙に浮かびあがる艦隊は数十万を超えていた。

 敵の光弾が命中した衝撃で、光の神のシールド艦が揺れているのが見える。

「被害をターミナル3に映せ。マスティマの状態はターミナル4で随時報告せよ」

「了解しました。以後、報告をターミナルに切り替えます」

 “管理する者“が音声で応答する。

 音声、つまり会話は、原始的なインターフェースだが、今でも非常に効率が高い。「まわりを警戒しろ」「状況を教えろ」といった、曖昧で、複雑な命令が下せる。


「メインスクリーンを拡大。敵艦隊を全体アングルで表示しろ」

 メインスクリーンに、黒き艦隊の攻撃を受けている光の艦隊の前線が映る。戦況を見ていたフレイヤは、タイミングを図って叫ぶ。

「全艦停止。密集隊形に移行後、攻撃を開始せよ! マスティマ、リフトアップ!」

 光の艦隊の旗艦マスティマが停止し、円錐形の巨大な機体の姿勢を縦に起こし始める。同時に、光の艦隊第七翼が一斉に、黒き艦隊への攻撃を開始する。輝く光の束が弾けるように、前方の黒い空間に打ち出されていく。

「マスティマのウェポン選択」

 フレイヤの言葉を受け、武器コントロール担当の“管理する者”がウェポンの選択モードに入った。

「了解しました。主砲、光子魚雷、光子ガトリング、長距離ミサイル、分散ミサイルが選択可能です」

 フレイヤは瞳を閉じた。

(この戦いが最後で、世界が終ってしまうかもしれない……だが)


男と女の魂をデジタル化する上で、基本的な構造の違いが問題視された。

 デジタル化された魂であるエーテルは白(女)と黒(男)の二種類に分けて、管理されるようになる。魂のデジタル化により、直接の交配は絶えた男と女。更なるシステムの合理化の為に、女は”光の神”、男は”闇の神”と名乗り、宇宙の両端に、それぞれの新しい国家を創世した。

 この宇宙で、最後に戦う相手は、光の神のかつてのパートナー(男)である。

 この戦いに勝てば、宇宙は、白き光の女だけの世界に、負ければ、黒き男だけの世界になる。世界は単一の色となり、何の変化を見せなくなり、完全なる静の世界となるだろう。

それは平和と安定を生み出すと考えられていた。

「しかし、争いも変化もない……単一の女だけの世界……それは同時に、世界の終わりなのかもしれない」

 フレイヤの一瞬の思考の停止の後、覚悟を決めた攻撃指示が艦内に飛ぶ。

「主砲を選択。パワー充填開始。パワーマックス。照準はオートに。トリガーをフレイヤへ移行」

 武器コントロール担当のオペレーターが復唱する。

「了解しました。照準をオート、最大ダメージ効率へセット。トリガーはフレイヤに移行」

 マスティマのメインコンソールに、黒き艦隊の密集エリアが表示された。

「全エネルギーをジェネレーターに送信開始。主砲ラグナロクの封印を解除します」

 オペレーターからの主砲の活性化の報告と同時に、フレイヤの前に光のトリガーが現れた。パワーの循環を表す光の魔法陣がフレイヤの手の甲に光り浮き出る。

「主砲ラグナロク最終段階へ。オールセキュリティ解除します」

 オペレーターからの最終報告が船内に響く。

「ラグナロクへエネルギー充電完了。安全弁解放。発射準備完了」

 円錐形のマスティマの上部の一部が開き、直系二キロメートルを越える、巨大な砲塔が姿を現す。全長、二十キロメートルを越える旗艦マスティマのリーサルウェポンが発射の指示を待つ。


フレイヤは一度天を仰ぎ見た。

「世界が終ってしまう……だが、私は戦う事しか知らない。戦い続ける事しか出来ない……くそ」

 黒き艦隊の密集エリアへと照準を合わせ、力を込めて光のトリガーを引いた。巨大な閃光が、宇宙の全てを白く染める。


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