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ギャラクシーフォース  作者: こうえつ
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高次元のそら

銀河の果てには漆黒の空間が広がっている。

そこには色も、何者の気配も感じられない。

何も存在しない空間。そこにあるのはただ、ただ、無。深い黒。

 無の黒の世界に一筋の光が現れた。一筋の光は、一瞬の間に、そこにある黒の全てを覆い尽くすような大きな光へと膨らみ、一瞬の後に弾けた。弾けた光は、ひとつの銀河に匹敵するくらいの、膨大な数の光の星雲となった。


光の雲を構成する小さな光、その一つ一つは全て船だった。


 漆黒の宇宙に広がる、無数の純白の宝石を思わせるような、何千万もの宇宙船。艦砲やミサイルを備えた船が多く、その形状から、戦闘艦であることが分かる。船団の中央には、他の船とは比べ物にならない、衛星と見紛う程に大きく、独特な円錐形の宇宙船があった。

その船は艦隊の旗艦マスティマ。マスティマの最上層、巨大なコントロール室に美しい声が響いた。

「艦隊のジャンプ完了を確認」

 艦隊の管理を担当するジョブである”管理する者”の声は、続けて艦隊全員にブロードキャスト(一斉送信)で、現在の艦隊状況を告げた。

「相互補完ジャンプの余波により、二千二百四十七隻をロスト。”管理する者”は、前後、四秒時間をスキャンし、ロスト船を捜索せよ」

 多数の船の同時ジャンプは、中央の旗艦からのシグナルで同調して行う。その際、シグナルが最端の船まで到着するのに僅かな時間のズレを生じるため、同じ空間、同じ時間に出られない船が出でしまう。ジャンプ終了後に、空間と時間の中を捜索する事で一緒に出られなかったロスト船を探しだし、回収する必要があった。

「報告。ロスト船の回収完了」

 状況の変化に合わせて、担当する管理する者が最新情報を艦隊全体へと発声する。


 遠い未来……進化した人類は心をデジタル化し、”エーテル”としてプログラムすることに成功した。そしてエーテルを人工の肉体に入れることで、永遠の人間を作りだした。 永遠の人間は、フォームと呼ばれる目的ごとに性能と形が肉体に設定された。


生産する者、政治をする者、スポーツをする者、そして戦う者。

旗艦マスティマの艦内には、戦闘用の三つのフォームが設定されていた。

 艦隊に状況報告の声を発していた”管理する者”の他に、”力を生む者”と”判断する者”が存在している。

 マスティマの所属する光の艦隊は、十二翼に別れており、一つの翼は、約五千万の船から成る。

 十二翼の内の一翼、光の艦隊第七翼の戦船に乗る、フォームを得た光の戦士は約二億人。全体の九十八パーセントは、自分のエーテルを、エーテル機関により増幅し、艦隊のエネルギーを生み出すフォームを持つ、”力を生む者”。

 残りの約ニパーセントが、艦隊の全システムを管理、運営する、”管理する者”だった。そして、一翼に一人だけ、指揮する、”判断する者”が存在する。

 この第七翼の美しい光の戦士であるフレイヤが総司令官であり、”判断する者”だった。フレイヤは長い銀髪と、女性にしては長身であり、細身の体型に、知性的な光を帯びるシルバーグレイの瞳を持っていた。


「随分と遠くまで、来てしまったものだ。少し故郷が懐かしいな」

 中央の椅子に座っている、銀色に輝く美しいシルエットのフレイヤがつぶやく。そこへ、”管理する者”の主席で、艦隊副司令官のアイリが近づいた。

「今後の作戦ですが、いかがいたしますか? それか・・・家が恋しくなられたのなら、いっそこのまま戦いはせずに、母星へ帰っちゃいますか?」

 少しおどけたアイリの言葉に、フレイヤは微笑んだ。

「私は女王と約束している。全ての敵を滅ぼす……それが私の存在意義」

 マスティマ最上層のコントロール室の天井には大きな窓があり、まるで宇宙の深淵を覗いているかのような光景が広がる。それをしばらく仰ぎ見つめて、光の艦隊第七翼艦隊総司令官のフレイヤは静かに立ち上がった。

「このまま進むぞ。速度、隊形維持。ステータスを戦闘準備へシフトせよ。調整を頼むアイリ」

「了解しました。総司令」

 アイリは敬礼し、自分の席に戻って行った。

 光の艦隊の総司令官として、これまで全ての戦いに勝ってきたフレイヤは、スクリーンに映る、漆黒の銀河を見つめていた。前方に広がる銀河は数千万の、闇の神の船”黒き艦隊”で埋めつくされている。

「勝っても負けても、これが最後の戦いになるのか」

 フレイヤはそっと瞳を閉じ、少し離れた自席からその様子を見ていた、副司令官のアイリが再び近づいてきた。

「司令官、何か問題でも?」

 心配そうなアイリの声にフレイヤは我に返り、シルバーグレイの瞳を開ける。

「今回の戦いが最後になるかもしれん。我々の命令がが完了する」

 フレイヤの言葉に頷くアンリ。

「そうです、長い、本当に長い間、私達は宇宙を旅して来ました」

 アンリの赤い瞳を見たフレイヤは右手を、無数の漆黒の船が写っているスクリーンの方に差し示した。

「我が艦隊は、これより闇の神との直接対決に入る。”力を生む者”は最大出力へ移行せよ」

 十二次元先の空で最後の戦いが始まろうとしていた。


私は、途中まで読んだ”Stars Logbook”をそこで閉じた。

その日はもう、あの人を見かけることはなかった。


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