艦内戦
マスティマの船内、第二格納室では、マスティマにテレポートし白兵戦を仕掛けた闇の神たちが、戦闘用スーツ”バトルウォーカー”を装着して攻撃を繰り返していた。 バトルウォーカーは、本来は宇宙活動用のスーツだが重火器を装備し、拠点制圧用に改良されていた。
光の神のように、目的が敵の絶滅であれば、艦隊攻撃で星ごと消してしまえばいい。しかし、闇の神は、植民地化や種の交配を目的としていた。
惑星の占領が優先され、被害は最小限とする必要があった。当初は十二mもあったバトルウォーカーを徐々に小型化し、現在では三m程度、十分艦内でも、行動可能なサイズとなっていた。
船内は爆裂音が鳴りやまない。
バトルウォーカーが使用しているLRガン(リニアレールガン)は超伝導の力で、数ミリの金属を加速させ、光速のスピードで撃ち出される。
光の軌道を描くその弾丸は、命中すれば大爆発を起こす。
すでに光の神の”守る者”は壊滅状態だ。手、足、頭、体、指。バラバラになった”守る者”が空中を舞う。
血が舞う赤い空間に、光の瞬きが発生し、白き艦隊の総司令官であり光の神の戦神フレイヤがテレポートで姿を現した。
バトルウォーカーが一斉にフレイヤを標的とする。
光の軌道がフレイヤを襲い、爆発し続ける。
その時、一筋の光の影が、バトルウォーカーの横を通り過ぎた。
一機のバトルウォーカーの腕がLRガンごと床に落ちる。
バトルウォーカーのパイロットたちには何が起こったのか分からないようだった。
部屋の中央にはバトルフォームに換装したフレイヤが立っていた。
手には青白く輝くマサムネブレードが握られている。フレイヤはマサムネブレードを、両手に持ちかえると、格納室内にいる全員に向かって言った。
「この船を汚した罪は、己のエーテルで償え!」
攻撃を続けようとするバトルウォーカーのパイロットたちに、パイロットリーダーのヤツカから制止が入る。
「待て! ここからでは味方に当たってしまう。全機シンクロ後に一斉攻撃とする」
すぐにバトルウォーカーのリーダー機から全機に命令が飛び、リーダー機に残り全てのバトルウォーカーがシンクロを開始した。
「シンクロ完了。全機最大火力。目標、光の神。一斉攻撃開始せよ!」
ヤツカの指示で二千機のバトルウォーカーによる、フレイヤへの一斉攻撃が始まった。轟音の中、天井は崩れ落ち、砕けた床が舞い上がる。視界はどんどん狭くなる。
「爆発の影響によりスキャンできません。光の神をロストしました」
リーダー機がバトルウォーカーパイロットのリーダーであるヤツカに報告した。それを受け、ヤツカはチームへ指示を出す。
「全機に告ぐ。自機の損傷回復とLRガンのチャージを行え。完了後、グループごとにパーティを組み、残っている光の神を捜索。司令部の制圧を行う」
(こんなに簡単に、光の神の旗艦を制圧できるとは。アイリとかいう者のおかげか……)
思いのほか有利な戦況に、ヤツカは驚いていた。
アイリと名乗る女は、マスティマのシステムにアラートを仕込み、システムの再起動が必要となるように仕組んだ。
再起動をしている数十秒の間に、黒き艦隊の旗艦アガレスをマスティマの近くまでジャンプ、瞬間移動させる。そして、白兵戦用機動兵器バトルウォーカーがマスティマ内部を攻撃、占拠する。
”判断する者”であるフレイヤにシステムからの情報が伝わらず、判断できない状況になれば、艦隊全体の判断は遅れる。光の艦隊の弱点をついた作戦だった。ヤツカはシートのロックを外し、腕を伸ばす。
「この船を再起動させ、我々がテレポートするタイミングを作ってもらったことは確かだが、光の神は所詮、か弱い女の軍隊だったということだな」
ヤツカに笑みがこぼれたところで、システムから報告が入る。
「ヤツカ、レッドチームが攻撃を受けています」
「なに?」
驚くヤツカに報告が続く。
「レッドチーム全滅しました。ブルー、イエロー、グリーンも戦闘を開始」
(ばかな、なにが起こっている?)
現状を把握しようと焦るヤツカ。
「全方位をスキャンしろ! 敵の特定を急げ!」
「イエロー全滅。グリーンからヘルプ要請あり。全方位スキャン開始」
信じられない戦況報告にヤツカが叫んだ。
「馬鹿な! 我々は惑星一個を楽々制圧できる戦力なんだぞ!」
「報告。機能停止およびロスト機体、千二百九十八。稼働機七百二十」
「グリーン壊滅。ブルーとの通信が途絶えました」
次々と報告は入るものの、ヤツカには状況が信じられなかった。
「報告。スキャン回復しました」
「どこだ! 敵はどこにいる?」
「敵光の神数1。戦闘力分析、パワーS、速度S、現在位置、前方距離20m」
「なに!」
ヤツカがモニターに目をやった。
熱と煙で視界が狭まる画面の中、バトルウォーカーがLRガンで、光の神を攻撃している。しかし、その弾道は、光の神の残像を捉えているだけのようで、本体をかすめる事もできていない。
数機から発射された追尾ミサイルも、光の神のあまりにも速い動きに、無駄な爆発を繰り返している。
煙の中にキラっと光が走ることがある。マサムネブレードを使って超高速での移動、転進、攻撃を行うフレイヤが残した光の残像だった。
「これが、光の神の実力なのか……」
肉眼はおろか、如何なるスキャンでも、フレイヤを捉えることはできなかった。そして驚異的な速度で振り下ろされるマサムネブレードが、いかなる物体をも簡単に切断していく。
腕、頭、胴、足。バトルウォーカーが斬り弾かれ、空中に散乱する。
オイルと鮮血で床は真っ黒に染まった。返り血さえ浴びることのないフレイヤは、光を纏い、美しく輝いている。
恐怖に襲われたヤツカは動けなかった。目の前に映った数字に。
「戦力分析報告。味方機残り1。勝利確率ゼロパーセント」




