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流星連打の拳嬢の願いを叶える その5

 エレノアは自分の雇っている冒険者を順に紹介していく。

 まずは、魔法使いの女だ。


「彼女はサラ。見ての通り魔法使いですの、4星ですの」

「サラよ、雷魔法が得意なの」


 三角帽子に黒を基調とした露出度多めのローブを着ているが、何というか……二の腕やお腹周りが、心持ちふくよかだ。

 

「サラ様は随分肌の露出が多いようですが……」

「私のようなグラマラスな体系には、セクシーな露出多めファッションが似合うのよ」

「失礼ながらサラ様、それはセクシーな露出多めと言うより、残念なお肉多めです」

「本当に失礼!」


 アサカは正直に感想を漏らす。

 サラをなだめるエレノアは続いて、銀色の全身鎧を装備した剣士を紹介する。


「彼はザルーダ。とても無口な方ですが、剣の腕は相当ですよ。5星に相当しますの」


 紹介された剣士は頑強そうな銀色の全身甲冑で武装している。

 背中に担いだのは大きくて立派な剣士だ。


「なんというか……重たそうですね」

「……」

「動きにくくはないですか?」

「……」

「あなたはもしかして……むっつりな変態さんだったりしますか?」

「ごふっ……」


 アサカは寡黙な剣士を以前に見たというむっつりな御者と重ねた。

 これにはさすがの寡黙な剣士も首を横に振って全力で否定している

 

「彼は真面目で勤勉なかたですの!」


 とエレノアがすかさずフォロー入れる。

 そんなエレノアは次に大鎚を持った背の低い男性を紹介しようとするが。


「挨拶は拙者からしようぞ。拙者はデノボン、見ての通り戦士である」


 デノボンは背こそ低いが、がたいはがっちりしていて逞しいものだ。

 顔をも剃れに違わずがっちりした、顔つき。

 だが、アサカの感想は。


「見ての通りと言われましても、私にはあなた様がある動物に似ていると言うことしか分りませんが」

「どの動物であるか!」


 デノボンは咆哮しながら自分の屈強な胸板をドコドコと叩いて見せた。

 天然なのかノリが良いのか、リュカには分からなかったが、愉快な人物あるのは間違いなさそうだ。


「彼はこのパーティーのムードメーカですの。4星ですが、攻撃力はパーティー随一ですの。さて、最後になりましたが、彼が冒険者のリーダーをしている、マディウスさんですの」

「お初にお目に掛かります。ボクはマディウス・レーベン、しがない錬金術師ですが以後お見知りおきを」


 折り目正しく挨拶をするマディウス。眼鏡の下は優しい目をしていた。

 貴族服を思わせる上等なシャツに、これまた上等なズボンを着ており、育ちの良さがうかがえた。

 その腕には5星の腕輪。相当な実力者らしい。

 流石に彼にはアサカもふざけた感想は言わないのではと、リュカは安心していたが。


「錬金術師ですか。その身なりから察するにかなり稼いでらっしゃいますね」

「まあ、それなりに腕はあるつもりですよ」

「なるほど、まさに錬金って訳ですね」

「はは、面白いことをいいますね」


 アサカとマディウスは含みのある笑いを浮かべあっていた。

 どことなくだが、なんか似ているなあの二人……

 マディウスがどういう人物かは分からないが、きっとお金にはしたたかなんだろう。

 アサカもそれを感じ取ったというところか。

 今度はアサカとリュカが軽く自己紹介を済ませる。


「私は特級受付嬢、アサカと申します。そして彼はリュカ」

「狩人をしている。よろしく頼む」


 リュカもアサカも軽く挨拶をするにとどめた。

 自己紹介なんて長々するものじゃない。

 それに。


「自己紹介も済んだところで、一つお聞きしたいことがあるのですが?」

「どうかしましたか、アサカさん」

「皆様はこの場所で何をされていたのです?」


 アサカの質問、それはリュカも気になるところだった。

 外からの侵入者をとらえるための人為的な罠に、虚偽の可能性がある依頼。


「ボク達は魔物の討伐を引き受けてこの洞窟の調査をしていたんですが、無駄足だったようです」


 マディウスは苦笑いを持って応えた。

 やはり依頼は虚偽の依頼だったようだ。


「では洞窟の奥も調査済みということですか。ならば入り口にあった罠もご存知ということですね」

「当然ですよ。ボクたちは大きな音が聞こえてきたものですから、もしかたら誰かが罠に引っ掛たのかと思い戻ってきたのです。まさかエレノアさん達があの程度の罠に引っ掛ているとは夢にも思いませでしたが」

「お恥ずかしながら、足元がお留守でしたの」


果たしてそうだろうか。

談笑をしているエレノア達をよそにリュカは周りを調べ出す。

するとエレノアが足をとられた場所の岩影に隠れるように、千切れた黒い縄が落ちていた。

手に取り触ってみるとその得意な作りに驚くばかりだ。

かなり細く引っ張りには強いが、横方向力を加えると縄の網目がほつれ、直ぐに切れてしまうのだ。

油断していたとはいえ、普通の縄をリュカが見落とすはずもない。

これはだれが引っ掛てもおかしくない程の、精巧で緻密な罠だ。


「これを見つけた」


リュカはエレノア達の目線を盗みみて、アサカにだけ拾った縄を見せた。


「只の縄ではありませんね。この縄を彼らが避けれたとなると」

「相当な腕利き、もしくは…」

「あまり考えたくないことですね。ですが可能性がないとは言い切れません。証拠が見つかるまで、このことはご内密に」


リュカはアサカの意見に賛成した。

鉄檻の罠は誰が何のために仕掛けたのか依然としてはっきりしないが、彼らがあの罠を仕掛けた可能性がある以上、監視する必要がある。


「アサカ、リュカ様。今回の獣討伐の依頼、虚偽とみてほぼ間違いありませんの」

「冒険者方の様子見る限りではそうですね」

「ではわたくし達は一旦街に戻りますの」

「ああ、戻る前に一つ忘れていますよ、エレノア」


アサカはそう言いながら、満面に笑みで手を差し出した。


「ここまでの案内料金まで虚偽にしないで下さいね」


 エレノアは苦笑い共にお金を渡すことで、アサカが受けたエレノアの願いはここに果たされたのだ。

お金はしっかり頂きます。

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