メグル「生き返ったら神様に会いました×2」
どんどん新キャラを出してきます。
ちょっと百合描写も増えてると思います。
「ん?」
暗転から急に瞼の裏が白くなる。目を開くとギルドとは違う石造りの部屋にいた。
思わず「知らない天井だ」と呟きそうになる。
「おはようございます。お目覚めになられましたね」
「えっ、はいっ」
急に現れた美女と優しい声に体がびくついた。
何、みんな私を驚かせたいのか。それとも私が驚きすぎなのか。
「ここって、教会ですよね」
「はい、初めまして夢人様。ここは“ホワイト”の教会です」
私の問いに美女は慈愛溢れる笑みで答えてくれる。
緩く結ばれた艶めく金髪が日差しに煌めき、とても神々しい。緑の目を細めた美女は正に聖母のようだ。
きっとたっぷりとしたボリュームを持つお胸にはアガペーが詰まっているのだろう。思わず手を合わせて拝みたい気持ちになった。
「メグルと言います。さっきこちらに来たばかりなんですけど……この分だとかなりお世話になりそうなので、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします、メグルさん。わたくしはこの教会のシスター、リーアです。
“再適応者”の方は他の夢人様よりもご苦労があると聞いています。わたくしに手伝えることでしたら、何でも仰ってくださいね?」
「ああ、すいません」
起き上がろうとしたら、リーアさんは手伝ってくれた。
“再適応者”ってのは初めて聞いたけど、プレイヤーを夢人、NPCを箱人と呼び変えているように、NRシステム利用者の呼び変えなんだろう。ハビリスって確か、リハビリテーションの語源にあったし。
「あれ……個室、なんですか?」
起き上がった視界に広がる部屋は八畳間くらいしかなかった。ベッドと本棚、小さなテーブルと椅子があるだけのシンプルな部屋だ。
自分達以外の声がないのは変だと思ってたけど、まさか個室だとは思わなかった。確か、ヘルプには教会での復活は大部屋で行われるってあったはずなのに。
「はい。メグルさんにお伺いしたいことがあったので、個室に入れさせて頂きました」
「え、話って……」
問いかけた私に、リーアさんはぐっと顔を近付ける。体を支える為にベッドへ突いた左手に、リーアさんの右手が重なる。
え、ちょ、何だ。この展開。
「リーア、さ」
「教会では復活の儀式に、皆様からのお力とお布施を頂きます。お力はお体を再生させる為に一時的に九割。お布施は教会を運営する為に、所持金の半分を」
「それは、知ってます、けど」
大きな緑の瞳が、笑みによって形を変える。息がかかる距離で急にされたゲームの仕様説明へ、私は舌をもつれさせながら言葉を返す。
それを聞いてリーアさんはだめな生徒を注意するように、私の開いたままの唇の下の方を、ちょんと指でつついた。
「復活の際、わたくし達は再生の為に皆様の個人情報を見せて頂きます……もちろん、守秘義務がありますので誰彼と言い触らすことはありません。
……ですが。事が神に関わることであるならば、その限りではないのです」
「うぁ……神、って?」
うわわ。自分の口から変な声出た。
でもでもだって、リーアさんが唇つついた指で首筋つつーってするから!
ひ、だから鎖骨うりうりしないでくださいって! なんかリーアさん楽しそうなんですけど!
「あら、とぼけるのですか? “はじまりの神”に希望を託された方が」
「あ」
あ、《αの祈り》かぁー……。アルファさん、神様だったかー……。
開始一時間で四年見つからなかった謎に触れちゃったかぁー……。
Lukさん仕事の仕方、間違ってるよ?
「教えてください。あの方に何を託されたのか。他の神々と違い、降臨なさってくださらないあの方の思いを、是非お教えください」
「リーアさん! リーアさ……近いぃ!」
ぐぐぅっと近付くリーアさんを避けることも出来ず、倒れないように力を込めながら顔をそらす。
ええい、ハラスメント防止コードは何やってんだ! 仕事しろよー!
「あ」
ベッドに逆戻りした私に、一つにまとめられた柔らかな髪が落ちる。
「逃がしませんよ、“αの神託者”様」
ギシッ、とベッドの軋む音が嫌に響いた。
微笑むリーアさんは信仰する神への熱い思いの為か、頬を紅く染めている。
やば、顔、近。
……ハ、ハラスメント防止コードぉぉおおお!
「ハラスメント防止コードとはぁ!」
「ひぃっ!?」
びっくん、と自分の体が跳ねたのが分かった。
破裂音のような大きな音をさせてドアを開けた人物は、それに負けない大きな声で叫ぶ。
つい、私も悲鳴を上げてしまった。
「ハラスメント防止コードは嫌がらぬ限り発動しないっ!
つまり先程までの展開はお主も許容範囲だったということだっ!
分かったか! 姉上のお気に入りよ!」
「こ、今度は誰だぁああ!」
顔を声のする方へ向けると、翼竜のような羽根をバサバサさせたピンク髪のロリが私へ指を突きつけていた。何故か逆の手で白銀色の塊を引きずっている。
あんまり認識したくないけど、あの引きずられてるのってさっき私を殺ったした人かしら。
「ヴィータ様、昨日振りですね」
「おお、リーアよ。息災のようだな!
元気が有り余っているのは大変よろしいが、それ以上は止めるのだ」
「はい、分かりました」
リーアさんが私をベッドにドンしたままピンクロリに挨拶する。ヴィータと呼ばれた少女がリーアさんに釘を刺してくれたのでベッドン状態から解放される。
あー、焦った焦った。
「……ん? ヴィータ? 姉上? ……このロリ、もしかして……ひぎゃあっ!?」
考える私の顔の近くに凄まじい勢いでブーツの踵が落ちてきた。蜥蜴のような皮のブーツの先には雪のように白い太もも。ホットパンツ、赤い革鎧と視線を通った先にいたのは……
「キ、キーユちゃん?」
額に青筋を浮かべてリーアさんを睨みつけるキーユちゃんでした。
「ハラスメント防止コードが適用されなくても構わない。これは有罪」
「あらあら、誤解ですよ。これは事故です」
「メグルちゃんを押し倒した女の言葉に価値などない」
「あらまあ、怖い」
私の上で繰り広げられる言い合い。キーユちゃんは燃やしてしまうんじゃないかって勢いで、リーアさんを怒りに染まった瞳で見つめ続けている。それを穏やかな笑みでさらりと流すリーアさんの胆力に感心してしまう。
うぅ、空気が張りつめててしんどい。ヴィータさんは腰に手を当てて笑いながら見てるから止めてくんないし、白銀の塊さんはぴくりとも動かないし。
「け、喧嘩はいけません!」
叫ぶとキーユちゃんが私を見下ろした。「起こして?」と言ってから左手を差し出すと、キーユちゃんは眉をぴくりと動かして顔を背ける。
「わっとと」
顔を背けた状態でキーユちゃんは乱暴に私を引っ張った。勢いのまま、私はキーユちゃんの自己主張の控えめなお胸に倒れ込む。
ぎゅうぎゅうと抱き締められて、ちょっと痛い。
「キーユちゃん、ちょっと痛い」
「……メグルちゃんは目を離すとすぐ誰かをたらし込む……やっぱり首輪が必要……」
「なんか怖いこと言ってる!?」
私、猛獣扱いなの!?
戸惑う私へ「あー、そろそろいいか?」とピンクロリさんから声がかかる。
「あ、すいません。どうぞ」
「いや、うん。悪いな。わしはハラスメント防止コードの担当なもので意外と仕事が多いのだ。
それで、今日お主の元へ来たのはこれの為だ」
どさりと、ヴィータさんは白銀の塊をこちらへ投げ捨てる。やっぱり塊の正体はロリに引きずられてボロボロになったさっきの芝居がかった人だ。
え、何これどういうこと?
「ほら、先程の騒動があっただろう? 事故とはいえ、プレイヤーキルとセクハラをしたからな。沙汰を下す為に被害者の元へ引きずってきた」
「えー、だからってこんなボロボロに、えー」
ああ、塊さんのきりっとした整ったお顔立ちが台無しになっている。
胸掴まれて驚いたけど、まあ事故だし。私は特に気にしてないんだけど。
「いや、これはお主に抱きついている娘がしたのだぞ」
「キーユちゃん!?」
私の後頭部へ胸を押しつけたままのキーユちゃんへ振り向き声をかける。キーユちゃんは塊さんをじっとりと睨みつけて口を開いた。
「シグルスのラッキースケベは初めてじゃない。
そろそろ歩く性犯罪の自覚を持たせる為にしたこと」
「キーユくん、君って奴はボクのことをなんて色眼鏡で見ているんだねッ!
それがリア友に言う台詞かい!?」
「大変不本意ながら友人だからこその苦言。
あなたはそろそろ注意散漫に転んで誰彼構わず胸を掴む悪癖を自覚する。
大変不本意ながら友人だからこその助言」
「二回も言うほど不本意なのかい!?」
キーユちゃんのリアル友人らしいシグルスさんはがばっと起き上がって抗議する。だけどキーユちゃんは相変わらず淡々と言い返していた。
現実でもこんなやり取りをしているだろうことは想像出来た。
「ヴィー姉様、メグルさんへ事情の説明は終わりましたか?」
キーユちゃんとシグルスさんのじゃれ合いを見ている中、控えめに全開のドアをノックして眼鏡の女性が顔を出す。
おお、この人も綺麗だ。黒髪のショートが柔らかそうで触りたい。目は漆黒で鋭く、妖艶な微笑みは獲物が罠にかかるのを待つ女郎蜘蛛のようだ。ヴィータさんを見て「姉様」と呼んだ所を見ると、彼女もアルファさん関係なんだろうか。
ん? 右手に持ってるのは、紐?
「ガンマ、すまぬ。まだちゃんと説明出来ていないのだ」
「ええ、予想は出来ていたので大丈夫です。ヴィー姉様は天上の美しさなアル姉様と違って、バ可愛いのが売りですから。ええ、想定内ですよ」
「……ガンマよ。何を言っているかは相変わらず分からぬが、わしとて馬鹿にされていることくらいは分かるのだぞ」
ぷくぅっとほっぺを膨らますロリ姉に、女郎蜘蛛のような妹はとてもとてもドSな笑みを浮かべている。ちなみにガンマさんは露出こそ高いが、ヴィータさんと違い見た目は普通の大人の女性だ。
「うふふ、ニュアンスは伝わるように言いましたから。むしろ伝わなければ困ってしまいます。
……ほら、貴方達も。きりきり歩いてこちらへいらっしゃいな」
まるでスイーツを目の前にした女子大生のような笑顔でガンマさんは紐を引っ張る。
「って、何やってるんですか!?」
紐の先を見て、私は噴き出しそうになった。黒い革紐は二本。その先にはそれぞれ別の人物。
この騒動の発端になったアサヒさんとアンツさんが繋がっていたのだった。
プレイヤーネーム《メグル》
《NRシステム利用中》
種族:夢人・無
所持金:450ルピス
SP:0
ジョブ1《調教師》
所持スキル一覧
《調教Lv.1》《識別Lv.1》《意志疎通Lv.1》
空枠:7
ジョブ2《商人》
所持スキル
《契約Lv.1》《道具製作Lv.1》
空枠:3
《ステータス》
Str:1[3]
Vit:1[10](7+3)
Agi:1[2](1+1)
Int:1[10]
Min:1[10]
Dex:1[3]
Luk:2[15](10+5)
※デスペナルティ発生中
称号一覧
《αの祈り》
装備品一覧
頭《》
上体《夢人のシャツ・白》
下肢《夢人のズボン・白》
靴《夢人の靴・白》
装飾品一覧
《補助装具・NRS腕用・白》
《補助装具・NRS足用・白》
《杖・前腕固定型・白》
《痛覚50%減少のチョーカー・白》
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