ボウナニガシ
「貴方のためなのよ」
何が?本気でアンタは俺の事を思って言ってたのかよ?近所に自慢できる事が欲しかっただけなんだろ?あんなに生き生きとして、吹聴してたもんな。俺が気付いてないと思ってたのか?おめでたい話だぜ。
素直に言う事を聞いてたあの頃の俺。馬鹿だったな。
「貴方のためなのよ…」
ちょっと言う事を聞かなかっただけで、泣き落としですか?そんなのには騙されるか!俺はアンタの操り人形じゃあないんだぜ。それが俺は嫌なんだよ!
そう言えたら、どんなに良かったか…。結局、従ってたけっな。
「貴方のためなのよ!」
電話の向こうで叫いてる知るかよ。俺には痛くも痒くもないな。声だけなんて迫力も何にも無いぜ。俺は家出中なんだからな。
って、俺は何格好付けてたんだよ?小言が煩わしくて逃げてただけだろ?それに電話を拒否すればそれ自体聞かなくて済んだ筈だ。結局、淋しかったんだろ?
「貴方のためなのよ…」
悪いが、嫌だね。
俺は唯一自由に動かせる頭で、飲まされそうになった薬を吐き出す。
再度飲ませ様として来るが、俺は口をつぐみ、顔を横に向けた。
「貴方のためなのに…。どうして?」
訴え掛けてくるが、俺は答えない。つーか、答えたくても出来ない。俺は病気で、首を動かす事と思考する事しか出来なくなってしまっているからな。
「貴方のためよ。これ以上、酷くなりたいの?」
ああ、そうさ。俺はそれを望んでるんだよ。だから、薬はいらねぇのさ。俺はな、思考さえ出来ればそれでいんだよ。
だってそうだろ?そうすれば俺はやっと自由になれるんだからな。
アンタと「貴方のため」と言う言葉から……な




