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意味のなさない考察












「えー、何かくどぅー疲れてないー?」


「あ、はぁ……色々ありまして……」




お疲れ様でーすと言いながらカウンターに入って、お馴染みのバイトメンバーに挨拶をする。全くいつもどおり。

私は大学一年生の4月から(実質5月からのようなものだけど)書店でアルバイトしている。書店なのは、単に本が好きだから。小中高と図書に関わる係りや部活だったもので。ただどうにも、私に接客はあまり向いていないみたいだ。何とかやってはいるけど、楽しくもないのに笑顔を作るのが非常に苦手なのだ。どうしてみんな笑えるのかわからん。

カウンター内にはバイトリーダーの中田さんがいらっしゃる。4年生で、もう就職先が決まっているため、バイトに復活した人である。




「えー何なに? 何があったのー?」


「いえ……面白くもなんともないですよ、ガチで」




というか話すと私のHPとMPがガリガリ削られていくから遠慮したい。これから4時間とは言え、働くというのに。




「むー。くどぅーは22時あがりでしょ? じゃあ待ってるから、その後ご飯行こっ!」




これはこれで……ノーと言えない感じ。氷室君が思い出される。

しかし私は基本年功序列を重んじ、年上の人には逆らわないのをモットーにしているため、迷うことなく首を縦に降った。















































「そういえば、くどぅーとご飯来るの久し振りだねぇ」


「そうですね……。中田さん、今基本的に朝バイトじゃないですか。私は休みの日くらいしか朝入りませんし。会わないですからね」


「そだねぇ」




中田さんの車に乗せてもらい、近くのハンバーグステーキ屋さんへ。遅くまでやっているので、バイト後にご飯と言ったら大抵ここになる。夜だと特に。本当、最近のお店って大体21時には閉店してしまうから困る。稼ぐ気あんのかって怒りたくなる。ウチの店? 24時までやってるよ。書店なのに!! これはこれで嫌なのだ、本当に。働く身になると深夜って本当に嫌だ。

夜の22時過ぎであれば、お店の中は空いていた。案内された席も、二人にしては広いところ。で、ゆったり出来る。




「くどぅーはパフェどれにするー?」


「んー。チョコとか好きですけどねぇ。まず先にご飯食べたいなーって感じです」




水を一口飲む。うん、やっぱり喉渇いてたみたいだ。

中田さんとご飯に来ると、バイトメンバーの話か社員さんの話を大体してる。まぁ、共通の話題なんてそんくらいしかないし。ただし、社員さんの話は要注意。二人とも段々と過激になってくるからである。内容は言わずもがな。悟ってほしい。




「それで? くどぅーはどうしたの?」


「……いや、私がどうかしたって話ではないんですが……」




そう前おいて、今日の昼休みに起こったことを出来るだけ客観的に話した。しかしこの話、客観的に話すと自慢話に聞こえなくもない。だっていきなりイケメンに告白(?)されたわけだし。だけど、やっぱり首をひねらずにはいられない話でもあるわけで。




「へー! その、氷室君? だっけ? 聞いたことはあるなぁ、イケメンがいるっていうのは。でもさぁ」




注意。

中田さんはあまり学校に来ない人である。4年生だから、とかじゃなく。……サボリ魔って言ったら失礼だろうか。




「なんでその人、いきなりそんなこと言ってきたの?」


「……さぁー? いやー私もそう思うんです。誰でもいいから彼女が欲しいって感じでもないでしたし……。自分で言うのも何ですけど、聞いた話なんですが、どうやら氷室君は私が好きみたいで……」


「ふぅーん? それで昼休みに食堂で友達とご飯食べてるくどぅーに告白? 何か変な人だね」




そうなのだ。

段々と冷静になってきた頭は、明日どうするかではなく、何故氷室君が「今日の昼、友人とご飯を食べている私」にあんなことを言ってきたのかについて考えていた。

考えてみてほしい。

仮に、自分に好きな人がいたとして、わざわざ友達と駄弁っている人にその場で「好きです」なんてことを言うだろうか。しかも、相手は話したこともない人で。こんなの単なるナンパである。しかしナンパにしては「断ったら何するか分かんない」は不適当に思われる。

というか顔面偏差値の高い彼が、ナンパだとして、その相手に私を選ぶだろうか。おかしすぎるでしょ。

ちなみに、私の心情的には、仮に話したこともない相手を好きになって、告白するとしても、だ。人のいないところで、出来ればサシでお話したいと思う。これが一般的だと思うのだけど、違うのだろうか。というか時間があるのだから、まずは知り合いになって連絡先をゲットするところから始めたい。いきなり体当たりとかそんな無謀な真似はしないだろう、普通。




「それで、くどぅーはどうするの?」


「うーん。それはずっと考えているんですが……正直。正直どうもしたくない、って感じですかね」




言ってしまえば面倒くさい。何でこんなに訳のわからないことで悩まされなければいけないのか。全くの時間の無題。ただ単に私の精神が疲労を訴えるだけだ。

思うに、いきなりあんなことを言ってきた氷室君が悪いと思う。頭いいらしいんだし、あんなことを言われたら相手はどう思うのかちょっとは考えておくべき。それを怠った氷室くんのミス、っていうのはどうだろう。中々に責任転嫁をして屁理屈を捏ねた解答ではなかろうか。




「……んー、でも。それだと、何されるか分かんないよ?」


「何を言ってるんですか。たかだか大学生に一体何が出来ると言うんです。何かさもありなん、なことを言って脅かしてるだけじゃないですか?」




案外、明日講義出てみれば何事も、接触もなく、今日の出来事なんか夢か何かのように扱われてるかもしれないよ? というかこの線が一番確率高そう。あー絶対そうだよ!

嫌だなー大学生にもなって、私ってばからかわれたんだなきっと! ……そうだよね?











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