表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

評判曰く、












「悪い話はねぇ、出てこなかったのよ。聞いてみた感じ。評判もいいし。まぁイケメンだしね」


「こっちも同じ感じ。大して聞けたわけじゃないんだけど、大体いい印象ばかり。イケメンだからね」




あの後、二つほど講義を受けて本日の授業は全てクリア。もう帰るだけになった、つまり放課後。別の授業に出てた友人と委員会室で合流。

昼休みの食堂で起こった何だかよく分からない出来事を解決するにあたって、私が初めにしたことは、情報収集だった。

確かに彼・氷室なんとか君はイケメンで、大学では有名人ではあるけれど、だからと言って彼がどういう人なのか知ってるかとかそういうことはない。ていうか知ってるわけない。だから周りの友人たちに話を聞くことにした。

結果はこの通り、大体みんな似たり寄ったり。簡単に言っちゃえば、頭がいい・真面目・親切……そんな感じ。まぁ中には、無愛想だと言ってた人もいるけれど。なんたって非公式だけどあだ名は「氷の王子」だし。




「うーん。いい人っぽいよねぇ」


「そうだね。私も、昼休みのアレがなければ素直にこれを信じるよ、間違いなく」




こうやっていい話ばかり集まったのに、私たちがいまいちいい反応を出せないのは、ひとえに「断ったら何するか分かんない」発言のせいだ。

情報から出来上がる人物像と、昼休みに会った氷室君が中々合致しないのだ。




「もう、どうしようかな」


「どうしようもないんじゃない。だって明日の一限には応えなきゃいけないんでしょ? ……ただしイエスのみ、だけど」


「……正直頭おかしいんじゃねーのって思ってる」


「まぁ、それは、ね。ちょっと言い過ぎかもしれないけど」




さっき購買で買った紙パック紅茶を飲み、バタークッキーをかじる。




「氷室君怖いわ。どうしよ。出席一回くらいいいかなぁ……」


「いやでもさ、それやっても結局先延ばしにしただけじゃん。意味ないし」




ついでに出席も失うし。まぁ、害しかない。でも真面目に出席してもあまりいいことないと思う。

テーブルに頭を擦りつけて唸っていると、それまで静観してた後輩が遠慮がちに声をかけてきた。




「……氷室先輩がどうかされたんですか?」


「どう、っていうか……。まぁ、色々あって。ちょっと……」


「氷室先輩について聞いてまわってたそうですけど、それだったら私に聞いてくださればよかったのに」


「何で?」


「剣道部で一緒ですし、一応」




あー、そうだっけか。そういえば剣道部に先に入ってたもんな、この子。最近行ってるのかは不明だけど。大体ここにいるし。




「氷室君って剣道部なの」


「はい。委員会に入る前まではよく行ってましたし、それなりに話もしてましたよ」


「そうなんだ」


「最近は、まぁ個人的事情で剣道部に顔出してませんけど……」




前にちらっと聞いた感じでは、剣道を楽しいと思わなくなったとかなんとか。後、他のメンバーとのごたごただったり、って聞いたかな。

委員会の仕事が忙しくて顔を出せてないんだったら申し訳ない。




「氷室先輩の話してたってことは、先輩、話しかけられました?」


「え? あ、うん。まぁ、そんなところだけど」


「告白されました?」




何で。

意味をなさない言葉が口から漏れ出す。




「キョドってるキョドってる。落ち着きなって」


「……言っとくけど、昼休みのアンタはこんなんだったんだからね。人のこと言えないからね」


「やっぱりされたんですね……」




後輩はそう言ってどこか遠い目をしてた。どうしてなのか、「やっぱり」の意味を確認したくない。何かやぶ蛇な気がする。




「剣道部じゃあ有名な話ですよ。氷室先輩の好きな人についてなんて。それが工藤先輩だって知ったのは最近でしたけど」


「……何ソレ」


「え、何なに。めぐみって剣道部じゃ有名なの?」


「多分、好きな人=工藤先輩って事まで知ってる人は私を入れてもそんなにいないです。えーと、何て言ったらいいのか……氷室先輩がどうしようもなくその人……まぁ、先輩のことですけど……が好きだってことが有名なんです」




口から何か出てきそう。砂的な何か。これは……何だ。私はどんな反応をすればいいんだろう。照れるべき?




「この委員会に入って、工藤先輩に会ったのは偶然ですけど。それを知った氷室先輩からよく工藤先輩のこと聞かれたんで、分かっちゃいました」


「そ、そうなんだ……」


「先輩。氷室先輩は悪い人じゃないですよ。ただその……色々と激しい人かもしれないですけど」




その色々と激しいっていうのはどうなの? それって害悪にならないことなの。そこら辺詳しくお願いしたいのだけど。




「……とりあえず時間だから、バイト行ってくる……」


「おつかれー」


「お疲れ様でーす」




どうしよう。何かもう疲れた。これからバイトとか、働ける気がしない。

ていうか氷室君……どうしよう。いや、どうしようもないんだけど。何を思ってあんなこと言ったのか皆目見当がつきません。私には貴方が理解できてませんよホント。そんな人から応えもらっていいと思うんですかマジで。

誰か何とかしてくれないかな。例えば青い猫型ロボットとか所望するわ。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ