物語を始める前に
可もなく不可もなく。そんな人生を送ってきたと言える。いや、人生80年とし、まだ4分の1程度しか生きてない分際で何を言っているのかと怒られるかもしれないけれど。
本当に普通。あまりにも起伏のない人生を送っていると感じて、刺激が欲しいなぁ、なんて思うこともあるけれど、そう簡単に刺激なんて現れない。もしかしたら、刺激に溢れてるかもしれないけど気づいていないとかも有りうるが。
誰だって一度は思うのだ。何かこう、漫画の主人公みたいな体験をしてみたい、とか。自分の人生、主役は自分自身なんだろうけど、人様に「面白いね!」とか見せて反応を貰えるような大層なもんじゃない。
小さかった頃は何でも出来て、世界はキラキラしてて、つまりは希望に満ちていたわけだけど、成長する事に現実を知るわけだ。暗い話じゃないよ。だって、大抵の人は幼い頃に語ってた夢をそのまま持ち続けてるわけじゃないでしょう? 例に漏れず、私もそう。周りの子だってそう。
友人一人・江嶋なんて「セーラームーンになる!」って言ってたらしいし。私の世代なんて皆そうだよ。男の子だってヒーローになりたいって言ってたし。
天井のシミが見えるようになった、ということなんだろう。自分に出来ること・出来ないことの判別がつくようになる。つまり、大人になるってこと。寂しい話に聞こえるかもしれないけど、別にそんなことはない。
小中高、とそこそこ勉強して、まぁまぁの成績をとり、高校が進学校だったから大学に行って、何やりたいとかそういうのもなく、来年には就活が待ち構えている。そんなもんでしょう。
ただ、私はそんな話をするためにここにいるわけじゃない。
誰だって、そこら辺で見かける大学生のありふれた日常を知りたいとは思わないでしょ? 少くとも、私は全然興味ない。知ってどうするのよ、って感じ。
では何故こんなことを書いているのか。
そんなの、これは語るにふさわしいと思える出来事に遭遇したからに決まってる。
まぁ、ちょっとした暇つぶしにでも聞いていってほしい。何しろ、私一人じゃどうにも、処理しきれなくて困ってしまったんだから。整理する意味も込めて、是非ご協力を。
もしかしたら聞いたことあるかもだけど。だって、自慢じゃないが私は本当に有り触れた大学生で、一般に思い浮かぶような大学生の生活をしてるわけだから。もしかしたら、あなたが大学生なら、同じ大学かもしれないね。すれ違ってるかもしれない。……友人ってことはないかな。お恥ずかしい話しながら、あまり交友関係が広くなくって。
前置きが長くなって申し訳ない。
ただどうしても、私がそこら辺を歩いているような普通の大学生であることをとにかく理解してほしかっただけなのだ。
……まぁ、もしかしたら「お前、変」って言われることはあるかもしれないけど、まぁ大体普通の人っていうのはどこかしら理解しがたい何かを持っているものだよ、うん。
これから話すのは、「まさかマジで」と言われるような、いわゆる漫画的・物語的な話になる。
皆好きでしょ。平凡な子×イケメン、みたいなの。一種のシンデレラストーリーのような。大枠的にはその部類。もしくは、「平凡な子」を「平凡な子(ただしオタク)」にしてもいいけれど。でも、好きでしょ。そういう話。私も好きだったよ。
でも結局、そういう話って自分が蚊帳の外だから楽しめるのであって、当事者はそうではないんだな、って私は気付きました。
まぁ、とにかく聞いてください。
この物語は、特に定義するでもない、本当に単なる火曜日の昼休み・大学の食堂で始まるのです。