(142)らんちき(3)
(3)
クーニッドに向かうには召喚獣昇降口から出ようという話になった。だが、まだ城内に居るはずのキリトアーノ王子と鉢合せるのも面倒だとネフィリムが言う。
パールフェリカやキョウらが戻ってきた城内最下層の搬入口へ降り、そこから城外に出る事になった。
道中、キョウは手招きしてミラノに声をかけた。
「ちょっ、ちょっ、ミー姉」
黒い“うさぎのぬいぐるみ”のミラノは、パールフェリカの腕から降りると「先に行って?」と告げ、最後尾を歩くキョウを待った。
キョウは黒い“うさぎのぬいぐるみ”を抱え上げると、前に居るネフィリムやパールフェリカらに聞こえないように囁く。
「ねぇ、何なのこれ、ホントどうなってんの?」
「……キョウ、さっきはありがとう。助かったわ」
唐突にミラノが礼を言った。キョウはすぐに察する。
「あれは──……なんか、みんな飛びかかっちゃいそうだったじゃん。なにあの闘気? 殺気? なんか本場モンって感じ。あれだね、モンスターとみんなしょっちゅう戦ってんだろ? ガチすぎ。すごいね、迫力が」
6枚の翼持つ少年天使レイムラースの登場に、一斉に身構えたネフィリムやシュナヴィッツ、護衛騎士らの間でおどけて見せたキョウだが──。
話がしやすいように縦抱きにした黒い“うさぎのぬいぐるみ”に「足震えるかと思っちゃったっつの」と付け加えた。
キョウが間に留まったことで、彼らはレイムラースに斬りかからず、会話を始める事が出来た。
結果、穏便に事が運んだ。キョウは空気を読んで、あえて壊したのだ。
「──いや、そうじゃなくてさ、ミー姉。そういうのはいいんだ、俺。うざキャラやんのも慣れてるし。警戒されてマークされて、邪魔とか妨害される方が面倒だからね」
ミラノが同性からの嫌がらせに苦しめられたように、キョウも日頃からその手のものには振り回されている。
パールフェリカには控え目に言ったが、実情、男だろうが女だろうが大きくは変わらない。
妬みからの直接的な嫌がらせだけではなく、あることないこと噂をばらまかれる。ミラノは『あの女は誰にだって股を開くビッチ』だの、キョウは『あの男はもう10人の女の子に堕胎させてる最低野郎』だの、顔の似たこの姉弟の悪い噂は人格を否定するものまで多種多様に流されている。
整形疑惑まで持ち上がった時は2人が似た大元の母と3人で笑ったものだ。
人の噂や悪意をミラノは無視する事が多い。が、キョウは事前に“無害キャラ”を売ってトラブルを減らす方向で動く。それがキョウの本来の人柄を隠すのだが……。
周りで女の子が騒げば騒ぐほど、同性の友人が離れる。
男だろうが陰湿なのは変わりない。確実にやっかみというものはある。男の嫉妬は特に、直接女の子に向かわず、キョウや他のものにとばっちりが飛ぶ事もあるので注意が必要だった。
一方で、嫉妬はその男の本気の愛情の裏返しだと思えたキョウには、嫉妬を覚えるほどの強い想いを逆に羨ましく思えたものだ。
本音では、女の子と遊ぶよりも男同士で無茶やって馬鹿になってる方がずっと楽しいのに、ままならない。
結局、特定の女の子とのお付き合いというものは自然と避けるようになった。
イケメン君でモテモテのキョウは、羨ましいと言われても、彼女いない歴5年目に突入している。
憧れ一杯の目で、どこかよそよそしくて、理想ばかり押し付けてくる女の子と付き合う事にたまらない疲労感を覚えたからだ。
過去、本気で付き合ったのはたったの一人だけ。
一緒にいるのが辛くて別れた。
どんなに「好きだ」と言っても、数日後には「私の事、好き?」と聞かれる。その度、そんなに伝わらなかったのかなとへこんだ。
挙句「私達、付き合ってる……よね?」なんて言われた日には、若すぎたキョウに笑ってかわす余裕もなく、苛立って睨んだ記憶がある。
──何で、信じてくれない?
俺には無理、しみじみそう思ったのだ。嫉妬する程、好きになんてなれない、のめり込めないと……。
以来、人に恨まれない程度に、尻の軽い女の子と遊んでいる。
次々と男を乗り換える女の子は、後腐れなく別れてくれるから楽なのだ。
依存度の高そうな女の子は早めに見極めて逃げる。
感情の強い子、好きが重い子、男と付き合うのが初めての子、その辺も避ける。
一方、あっちも好き、こっちも好きと気がぶれる女の子は楽だ。こっちが振り回されさえしなければ、放っておけば勝手にまた別の男のところへ転がっていく。
忘れた頃に「好きって言っていたのにごめんなさい」なんてお門違いの連絡がきたりする。「いいよ、気にしないで。幸せにね」なんて懐深そうな返事を返してキョウはニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべたりする。
こちらの内側まで踏み込んで来てわかってくれた子なんていた試しがない。結構いつだってウェルカムなのに……。
たまに踏み込んで来ても、しばらくすると全く信じてくれなくなる。「モテるよね? 私なんかでいいの?」なんて言って、知らない間にイケメンとは程遠い、しかし優しそうな顔をした男のところに去っていく。愛されて幸せいっぱいの表情をキョウに見せつけていく。そんな後ろ姿を見送るのは、もういやだ。
コミュニケーションを欠いているわけでもないのに、キョウの声はいつも届かない。信じてもらえない。
黒い“うさぎのぬいぐるみ”を見下ろして、キョウは笑いそうになるのを堪えた。
──ミー姉なら、きっと全部わかってくれてんだろうけどな。
「必要ならどんな“役”だって演るけど、ちょっと、あんまりにも情報が無くてさ。そりゃ俺、物覚え良いし? 今まで名前教えてもらった人はもう全部覚えたけど、それはいいんだけど、わかんない事が多すぎるよ」
「あなたなら、大丈夫。すぐに慣れるわ。ただ、今、私には余裕が無いから……パールをお願い。元気が無いみたいだから」
キョウは片腕で胸の前に抱える黒い“うさぎのぬいぐるみ”の言葉に眉をひそめた。
「役に立てるってんならがんばりもするけど。てか、あの、何? 召喚獣? モンスター? あんなのがウジャウジャ居るんじゃあ、俺、何も出来ないよ?」
「……きっと、何も出来ないのが良いのよ」
「はぁ?」
キョウはミラノの言葉に両目をぐっと細めてへの字口をして見せる──“出来ない”のが良いって何だよ。
「……俺はちょっと、なんか、すごくヤなポジションな気がするんだけど?」
「あなたなら大丈夫よ。キョウ」
二度目だ。一瞬言葉に詰まったものの、キョウは目を逸らして溜め息を吐き出し、空いた手で後ろ頭をかりかり掻いた。
「へいへい。上手いこと流れに乗って、生き抜いてみせましょう? ミラノ姉さん」
──信じてくれるなら、応えてみせるしかない。
遅れて物品搬入口に降りると、見送りについてきていたはずのパールフェリカとネフィリムが揉めていた。
キョウは軽く小走りで近寄る。
ネフィリムが腕を組んでおり、1歩の距離に詰め寄るパールフェリカを見下ろしていた。
「戻りなさい、パール」
「いや! 私にも出来る事があるわ」
言いすがるパールフェリカから視線を逸らしてネフィリムは考え込んでいる。
見送りだけならばとここまでの同行を許したというのに、クーニッドまで行くと言い出したのだ。
パールフェリカに出来る事、つまりユニコーンを召喚し、召喚獣の中でも唯一の能力たる“癒しの力”を発現させる事……。
先ほどレイムラースが言ったように、人間は脆く、すぐに壊れてしまう。
空を飛ぶ召喚獣に乗るが、召喚士は乗りこなせなければ落ちるし、高所からの落下であれば簡単に死ぬ。
パールフェリカの能力は世界のいずこへ行っても至宝と扱われるに足る。
だからこそ、エルトアニティがパールフェリカを得ようとキリトアーノ王子を送り込んできているのだが……。
パールフェリカは、今から行く場所で誰かが致命傷を負わないとは言いきれないと主張しているのだ。
天使でさえ未知の出来事で、ミラノをクーニッドに送り届けるというネフィリムの申し出にしぶったのだ。何が起こるのかは予測がつかない。
「……リディクディ、エステリオ。パールから目を離すな」
鋭い目線を護衛騎士2人に送って、ネフィリムは背を向けた。
パールフェリカは喜びのあまり両手を組み合わせて目を瞑って肩を持ち上げる。鼻でくうっと息を吸い込んで、目を開いた。瞳はやる気に満ちてきらきらしている。
パールフェリカは、洞穴で失った“モノ”を取り戻したいと──自分は出来ると感じたくて、自分自身を捕まえたくて──もがいているのだ。
「──キョウ」
黒い“うさぎのぬいぐるみ”が頭を動かし、腕の中からキョウを見上げた。
「え? 俺?」
緩んだキョウの腕からミラノは床にひょいと飛び降りると、パールフェリカに近付いた。
「パール、ユニコーンにキョウも一緒に乗れるかしら?」
「え? ……うーん……うん。頼めば大丈夫だと思うわ」
ユニコーンは本来、清らかな乙女しかその背には乗せない。しかし、召喚獣となったからには話が異なる。召喚士との関係次第では、生前のその特徴を我慢させる事も出来る。
ミラノは頷くと、再びキョウの方へと歩み寄る。
パールフェリカやシュナヴィッツらはそれぞれの召喚獣を召喚すべく魔法陣を広げた。
キョウは足元までやって来たミラノの赤い刺繍の目と視線を合せるべくしゃがんだ。
「キョウ、元の世界へかえるには“霊界”を元の状態に戻さないといけない。“霊界”にはアルティノルドが何らかの干渉をしているの。この世界は──」
キョウは真剣な表情でミラノの言葉に耳を傾けている。
「“はじめの人”がアルティノルドに作らせた世界。でも、世界が出来てすぐ“はじめの人”は居なくなった。アルティノルドは今も、“はじめの人”を求めて探しているのよ。……それが何よりも、私が“はじめの人”ではない証拠なのだけど」
「ミー姉?」
「たくさんのわからない事があるわ。キョウにもわからないかもしれないけれど、私にだってわからない事だらけ。でも──」
そこで言葉を止めたミラノに、キョウは力強く頷いた。
ミラノも、黒い“うさぎのぬいぐるみ”の頭を縦に動かす。
「かならず、かえりましょう」
異論は一つもない。
キョウは自分の選んでいる環境を嘆いていない。
人によっては乾いた人間関係だと言うかもしれない。
確かに恋愛沙汰にはこりごりしている。本気になれる相手なんてもういないだろと半ば諦めて、お互いが“遊び”だと認識している関係しか持たないでいる。
彼氏彼女の精神的な関係では無くて、動物的な関係、性欲を満たすだけの関係──。
隣りの青い芝……純愛には憧れるが、相応の相手が居なくては始まらない。
理想があるわけじゃない。愛してくれと思うわけじゃない。ただ自分をわかって欲しいだけ。
今、自分をわかってくれるのが恋愛絡みの女の子よりも、男友達だというだけ。その友達との約束のある世界に、キョウはかえりたいのだ。
友達との関係を壊したくないから、友達を守りたいから……早くかえって約束を果たしたいから。
クーニッドの村から東の森の上空──。
先に戻っていたレイムラースは6枚の翼を風に煽られながら、一定箇所に留まって空を見上げていた。
あちらこちらから風が吹き上げて来ては荒々しく流れている。
日は暮れきっていないのだが、薄暗い。
地平線近く、横から差し込む夕日がどんよりした雲を酸化した血色に染める。
重く広がる雲は、巨大な蛇を思わせた。とぐろを巻いた状態で、さらにぐるぐると廻っている。内周程早く、外周程遅く見える。それらを、幾筋もの稲光が轟音と共に駆け抜けていた。
湿気が増して雨を予感させるが、降りそうな気配は無い。
眼下の森の木々は、低く押さえつけられるように西へ東へ、風に煽られてばさばさと唸るように揺れている。
夏の、湿気を吸った土と木々、緑の匂いが大地から湧き上がるように空へ舞い上がってきている。
異常は嫌と言うほどレイムラースにも感じられた。
すいと、大気が動いた。
後ろを振り返れば、7色の翼が見えた。
七大天使全員が、大気に溶けていた状態から実体を持って姿を見せたのだ。
レイムラースは一度赤子に戻されたところからまだ成長途上なので少年の姿をしている。だが、成体の七大天使らは人よりも大きい。人間ならば30歳前後の容姿で外見的変化も止まっている。
レイムラースの一番近くで七大天使の長、光のアザゼルの白銀の翼が4枚、ふわりと揺れた。
『まだか』
アザゼルの問いに、レイムラースが小さく頷いた。アザゼルの後ろには残りの6天使が居る。
真紅の翼を持つ神の先鋒イスラフィル。
蜂蜜色の翼を持つ紅一点のダルダイル。
青い翼のアズライルに鋼色の翼のジブリール。
深い緑色の翼のミカル。
そして、アザゼルの対、闇色の翼を持つシェムナイルが、静かに空に佇む。
ぐるぐると回転を続けたままの暗褐色に染まる巨大な雲を見上げる。
雲の中心が、飲まれるように空高く押し上げられている。雲に空いた穴の中心は、夕方の空ではなく、ただの真っ暗闇に繋がっている。
『──もう、開いているのか』
闇のシェムナイルが低い声で呟いた。
『アザゼル』
紅一点のダルダイルが天使長の名を呼び、西の空をゆっくりと指さした。
翼を広げたフェニックス、ティアマト、2頭のヒポグリフにペガサス、マンティコア、そして翼を持たないユニコーンがこちらへ向かって空を駆けて来ていた。
騎乗召喚獣たちが地上で集まったところ、空から少年天使レイムラースと七大天使が舞い降りて来た。
世界を創ったのはアルティノルドだが、世界を廻しているのは“天使”と言われている。
人間のネフィリム、シュナヴィッツ、エステリオ、リディクディ、ブレゼノ、アルフォリス、パールフェリカ、そしてキョウもまた、勢揃いした天使達の姿に息を飲んだ。
召喚されっぱなしの召喚獣らは静かな目をしたまま、そっと地に伏して休んでいる。
七大天使は光の燐粉をきらきらと辺りに振りまいて、人間の成人の1.5倍程の身長から見下ろしてくる。
黒い“うさぎのぬいぐるみ”を抱えたまま呆然としているキョウは横っ腹をぽふぽふ叩かれてハッとする。
「降ろして」
ぬいぐるみから淡々とした声が出てきて、キョウはぬいぐるみ──ミラノを地面に降ろしてやった。
すぐに黒い“うさぎのぬいぐるみ”は前へ歩み出て、天使達を見上げる。
「様子はどうです?」
『変わらない。アルティノルドへは言葉が届かない。話も通じない』
アザゼルの返事に黒い“うさぎのぬいぐるみ”はどろどろと怪しい気配を放つ空を仰いだ。
ネフィリムも歩み出て、アザゼルを見上げる。
「何が起こっている?」
『私達ではわからないし、わかっていても言うつもりはない』
きっぱりとしたアザゼルの返答に、ネフィリムは小さく息を吐いた。隣でミラノが再びアザゼルを見上げる。
「本当にわからないの?」
『残念ながらわかりません。アルティノルドは今朝まで……今回あなたが68回目の来訪を“失敗”されるまで、いつもと変わらない様子でした』
やはり溜め息を堪えて考えこみかけたミラノの背後で「あれから120日……そのうち67回も来ていたのか……」と小さな呟きが聞こえた。
確認しなくてもシュナヴィッツの声とわかった。謝るところでも無いのでミラノは無視を決め込む。
「──あ!」
呼気とともに押し出されたパールフェリカの声が響いた。彼女は渦巻く雲の中心を指さしている。
全員が指し示された先を見上げた。
雲の中心の闇が、見る間に広がっていく。
周囲の暗褐色の雲は闇に吸い込まれるように飲まれていく。
風がさらに大きく吹き荒れて、ちぎれた緑の葉が空へ舞い上がる。髪も空を飛んでいる時のように乱れた。
空が、あらゆるものが闇に飲まれていく。
広がる闇の内側に、何かが霞んだ。
「……あれは──なぜ!?」
ネフィリムが、シュナヴィッツさえ聞いた事の無い困惑した声を上げた。
闇に霞むように現れたものの姿が次第にはっきりと見え始める。
それは、空の闇の中、黒い穴の向こう、半透明の姿をしていた。
──薄紅の羽衣を両手に持って頭上に掲げる、巨大な女の姿……。
真っ白の肌の中、無表情に細められた目は流すように視線をくれて、閉じた。艶のある長い黒髪が闇の中でゆらゆらと揺れる。その周囲、女自身から黄金色の光が漏れる。
りん……りん……りん……と、どこからともなく大量の鈴の音が聞こえたようだった。その音に合せ、女はゆるゆると羽衣で面を隠し、てんてんとつま先で飛ぶように歩んで背を向け、闇の中へ溶けるように消えていった。
「──……アマテラス太陽神……」
風に乱れる髪をそのままに、呻くように呟くネフィリム。
シュナヴィッツもまた風を忘れて「あれが?」と言い、巨大な女の姿が消えてしまった空を見上げた。
アマテラス太陽神は大国プロフェイブのロドス王の召喚霊と言われている。
しかし、それがなぜ、今、ガミカ領土内クーニッドの空に起きた異変の中心に姿を見せる?
同じく空を見上げていた闇のシェムナイルが広がり続ける闇を見回す。目を細めて、呟く。
『門番が……』
『シェムナイル?』
アザゼルが問うも、空を見上げたままシェムナイルは4枚の漆黒の翼を揺らして軽く飛び上がる。ぽつりと答えた。
『パビルサグが、いない……』
シェムナイルの呟きの直後、空の闇が一気に広がり、風が吹き出して大量の雲が消し飛んだ。すぐにその風が地上を襲いはじめる。
轟音と共に風が吹き付けてきた。
パールフェリカが悲鳴を上げて真横にいたキョウにしがみついた。
キョウはパールフェリカを抱え込み、しゃがむ。
一方、ネフィリムは軽さ故に宙に浮き上がった黒い“うさぎのぬいぐるみ”の耳を慌てて掴んで引っ張り寄せ、抱き込んだ。それらを包むように巨大化したティアマトの翼が広がり、爪を大地に突き立てて全員の上に覆い被さり、風から庇った。
轟音にパールフェリカの悲鳴さえかき消される。
辺りの木々が根こそぎ空へ奪われそうな大嵐、枝と葉の揺れる大きな音が耳を叩いた。
人間が為す術もなく四肢を地について暴風に耐える中、アザゼルのはっきりした声が響く。
『──あってはならない!!』
それを合図に、この烈風をものともせず、8天使が同時に空の闇へと飛び立った。