第66話 酔っぱらいのたわごと版『プレアデスの伝説』
「しかし、前の船もすごいと思いましたが、この船が別格ですね」
「ワインを飲みながらフランはしみじみと言ってきた。
「もともとからして目的が違うからな」
「目的ですか」
「ああ、今まで乗っていた船は戦船だな」
「戦船」
今度はダーナが聞いてきた。
「ああ、俺のいた世界では戦のためだけの船がたくさんある。
が、それ以上に物だけを運ぶ船、人を快適な旅に誘う船と言った感じで色んな目的に合わせた船の種類もたくさんあるんだ」
「この船がその人を快適に運ぶための船という訳ですか」
今度はサーシャが聞いてきた。
「いや、少し違うかな。
俺がこの世界に落とされる前に聞いた話だが、前に勇者がいたのだろう」
「はい、その勇者が作った国が帝国なんですが……」
何か言いたそうにしているが、まあ、おおよそ見当はつくからこの際無視して話を続ける。
「その時にもカミサマは勇者に船を送ったそうだ。
その船こそ快適な旅をするためだけの船だと俺は思うよ」
「この船は違うのですか」
フランがまた聞いてきた。
「この船はちょっとばかり特殊なんだ。
この船は快適性よりも自動車って言っても分からないか」
「ひょっとして魔動車のことでしょうか」
「俺はその魔動車を知らないからはっきりとは言えないけれど。多分そのことだと思うが、話を続けると、この船はたくさんの車を運ぶために作られた船なんだ。
なので、車を運転する人に少しでも快適に過ごせるようにとは施設もそろっているが、前の勇者にカミサマから渡された船とは全然違うよ」
俺の説明を聞いてもフランだけでなく俺の話を聞いていた全員が納得いっていないような顔をしている。
「まあ、そうだよな。
この船も軍艦なんかよりも十分に快適にできているしな」
俺はそう言って、刺身を食べながら日本酒を飲んでいる。
俺があまりにおいしそうに日本酒を飲むものだから、ついにケリーが俺に聞いてきた。
「守様。
水のようなものをお召のようですが、それはおいしいのですか」
「あ、これか、これは酒だ。
飲んでみるか」
「いいのですか。
それなら是非に」
するとダーナまでもが同じように欲しそうにしていたので、おれはもう一本酒とおちょこグラスを人数分用してみんなに少しずつ分けてみた。
やはりというか、フラン達弱年齢の女性には少しアルコールが強く感じたようだが、妙齢の女性たちには受けていた。
まあ、ワインも決してアルコール度数が低いものでもないが、この日本酒の方がやや強めだったのは確かだ。
あまり飲ませてもあとがおかしくなりそうなので、ほどほどのところでアルコールは止めた。
ほどほどの所で宴会のような食事を終えて、酔い覚ましのつもりで、皆を外にデッキに案内していく。
日もどっぷり暮れて辺りは暗くなっているが、この船から漏れる明かりがやたらとまぶしい。
あれ、これって周りにかなり迷惑をかけているような気がする。
……あ、そうか、窓のカーテンが皆開いているのか。
そりゃそうか、朝食終了時間くらいの船をコピーされたようだし、その時のままであるならばどの部屋もカーテンは閉めていないはずだ。
明日はこの船の片付けと、カーテンを閉めていくか。
それでもここから見る星空は素晴らしかった。
しかし、全く星座がわからない。
そういえば、最近やたらとプレアデスの名を聞くが、どこにも見当たらないのがそのプレアデス星団だ。
日本では車の名前にもなっているスバルの方が有名なのだが、あれってこんなきれいな夜空なら簡単に見つけられそうな気がするが、星が見えすぎるのも考え物かもしれない。
俺は物知りのエルムに聞いてみた。
「エルム。
この世界では星に名前がついているのか。
そうだな、いくつかの星をまとめて星座とか」
「ええ、有名なものだけですが、名はありますよ」
「なら教えてほしいのだが、どこにあるんだ、そのプレアデス星団とやらは」
「え? なんですか、その『プレアデス星団』って」
「え、無いのか。
最近やたらとプレアデスの姫だとか聞いたので、てっきりその名があるのかと思ったんだが」
「なんです、その話は。
私は聞いたことがありませんよ。
森の巫女様は聞いたことがありますか」
「いえ、私も知りません。
エルフの言い伝えも一通り学びましたが、その中にはありませんでしたね」
「なら、いったいどこからその名前が出て来たんだ。
俺のいた世界では神話にもあったくらいなのだが……」
「え、守様のいた世界でもプレアデスの姫の話が合ったのですか」
「プレアデスの姫の話か……そう言えなくもないが、ちょっと違うかもしれないが聞きたい?」
「ぜひ教えてください」
サーシャだけでなく全員が身を乗り出して聞いてきた。
俺は少し前に読んだ本から『行方知らずのプレヤード』の話を俺の記憶にアドリブを入れて話して聞かせた。
ただでさえ、うろ覚えに知ったかの入った話をしたものだから、どこまで令和日本で伝わっている話に合っているか怪しきなっている。
それでも俺の話を皆真剣に聞いていた。
酒の席でのという言い訳も無きにしも非ずだが、俺は少し盛って話していたようだ。
みんな、うっとりと俺の話を聞いていた。
うっとりとするよりも悲しい話になるのだと思うのだが、女性の悲哀についての話になるとそういう反応を示すものなのか。
それとも俺の話したことで、創作の部分にそういうところがあったのかは話していた俺自身でも何を話したかを覚えていないのでよくわからない。
完全にやらかしたことだったが後の祭りだ。
「守様の世界での話でしたか。
私たちにはプレアデスに関する伝説を知りませんでした」
あれ、ひょっとしてこれって、魔の勇者ってことは無いだろうが、それ以前にも連れてこられた人がいて、その人の趣味?ってことで伝説ができたってことは……俺も今しでかしたことを考えるとあながちないとも言い切れない。
まあいいか。
酒飲んで気持ちよくなって美女たちと星空を眺めていればそんなロマンチックな気分になっても許されるだろう。
そうでなくともあのカミサマにはやられたばかりなのだ。
俺にこのフェリーを探せと命じておきながら、見つからないように工夫して、なおかつ神話級の魔物とのバトルってなんだよ。
そんなクエストがあると知っていれば俺は最初から探さなかったよ。
俺の乗っていた巡視艇あがりの軍艦でも十分に生活できたのだからだ。




