第51話 敵との交戦
俺の船を難破している帆船に近づけていった。
帆船との距離が200mを切ったころになって、俺は船の操縦をケリーたちに任せた。
で、俺はというと艦長席から武器の準備を始める。
まあ、帆船程度ならばこの船のゴールキーパーだけで十分なのだが、今回は相手の心を折らないとまずダメだろうから、この世界に漂着?して……いや、この世界というよりも令和日本の海保時代からも自分で操作したことのない62口径5インチ砲を使ってみることにした。
一応相手からの攻撃に備えてゴールキーパーはいつでも操作できるようにはしてある。
そうこうしていると相手との距離が100mを切った。
それでケリーが俺に声を掛けてきた。
「守様。
さすがに現状ではこれ以上の接近は……」
「ああ、十分だ。
これくらい近づけば俺の声を届けられるだろう」
俺はそう言って、マイクを取り出した。
『え、え~、難破中の帆船諸君に問う。
貴殿たちはアンタレス教国船籍だとお見受けするが間違えないか」
俺の声が届いたのか、相手が騒ぎだした。
さすがに100mもの距離があるので相手の言っていることが分からない。なので上空大気中のドローンから声を拾ってもらった。
『船長、大変です。
なんだか怪しげな船が近づいてきます』
『何だ、この忙しいところに……そこ~、さっさと終わらせないか』
船長と思しき人がどれたちに向け怒鳴りながらこちらを見てきた。
「守様……」
「ああ、任せておけ」
俺は相手である船長の仕草をドローン越しに確認している。
とりあえずいきなりの攻撃は無さそうだ。
『私はハートポンド商業連合に与するものだ。
貴殿たちが抱えているハートポンドの民を我々に引き渡してもらいたい。
我々は貴殿たちを助ける用意がある』
『何をふざけるな~』
『船長。
あいつら敵ですぜ』
『さすがにこの状態でハートポンドのやつに出会うとは運が無いな……』
『ですが、あいつらの船には大砲のようなものは船首にある一門だけのようですぜ。
我々にもやりようがあるのでは』
『そうですぜ、逆にあいつらの船を乗っ取りましょう。
報奨金がたっぷりともらえますぜ』
何だか物騒なことを言っている。
そうこうしているうちに多分向こうの士官だろうか、船長ではないが偉そうな人が大声て怒鳴ってる。
『ハートポンド商業連合は負けたのだ。
我らは勝者だ。
勝った者の権利をどこのどいつか知らない者にゆずれるか~』
その後に続き船長が部下たちに怒鳴っている。
『そうだな、お前ら。
すぐに砲門を開け。
全門でぶっ放せばあいつらも黙るだろう』
どうやら、俺たちと戦うつもりのようだ。
おいおい、どこまで短絡的にしか考えられない連中なのだ。
十分に教育されていない一般の船員ならばわかるが船長がそれではだめだろう。
そもそもまともに動かせない状況なのに、ここで戦端を開くつもりのようだ。
「守様。
あいつらこちらを攻撃してくるつもりのようです」
望遠鏡で相手を監視していた騎士の一人が報告してくる。
帆船の側面にある訪門が開き大砲が顔を出してきた。
全部で20くらいあるか。
となると左右同じ数として40門の戦闘艦になるか。
戦列艦よりは劣るが大型船もしくは中型でもほとんど大型と言われるような艦種なのだろう。
そのあたり俺は詳しくないから知らないが、フリーゲートとか言っていたやつかもしれない。
三本マストの船のようだし、そのうち船首のマストが折れているようだが、だからなのか二本のマストが残っているので戦えると判断したのだろう。
だが、俺は敵の攻撃を待つようなお人よしでもない。
ゴールキーパーを使おうかとしていたら、相手の大砲のうち、一門から攻撃があった。
多分、狙いを定めるための試し撃ちのだろうが、もしももあるので相手の撃った弾を狙う。
しかし、金属それも鉄でできた大砲の弾ってやたらと頑丈だ。
ゴールキーパーから打ち出される30mmの弾丸でも10発以上撃ち込んではじめて割れた。
うん、やたらと効率が悪い。
そこで俺は、直接大砲を狙うことにした。
大砲も金属の塊ではあるが、青銅製ならばそれほど苦労もせずに壊せるだろう。
近くから空いている窓に向け30mm砲弾を連続で撃ち込んでいく。
ドローンで相手の船の中を監視していた騎士たちが驚くように俺に報告してくる。
「守様。
敵ですが、既に応戦能力を逸したようです」
「ここからは良く見えませんでしたが、小さな爆発が数カ所起こっているようです。
一層下のデッキで爆発があったものだと思います」
「ならば少し時間に余裕ができたかな」
俺はそう言って、もう一度マイクを取り相手に向け話しかける。
いや、脅すといった感じかな。
「交渉する以前に攻撃してきたところを見ると、我らに対して敵対するという訳だな。
ならばこちらからの遠慮なく攻撃をしよう。
お前らの船のマスト、残り二本あるが二本とも折ることにする。
それでも降伏しないのならば、それこそ遠慮なくそちらの船を沈める……いや一人ずつ殺していくからそのつもりで」
俺がそう宣言すると向こうの船の中からは怨嗟の声が上がったようだ。
ぎゃ~ぎゃ~騒いでいるが俺もこれ以上待つことはしない。
マニュアルを調べながら、初めて使う62口径5インチ砲の照準を相手のマストの根元に定めた。
ただマストを折るのにこんな物騒なものを使わなくともそれこそ30mm砲弾を数発打ち込めば済む話だが、相手が理解できないと意味が無い。
なので、ゆっくりと砲塔を動かして狙いを定め、一発撃つ。
相手からの大砲の弾でもあるまいし僅か100mの距離だと撃ったそばからマストが折れる。
続けて残りのマストも同様に撃ち込むと、先ほどまで騒いでいた連中が静かになったようだ。
俺はケリーに聞いてみる。
「どうした。
相手に変化はあったか」
「どうやら降伏するようですね。
二本のマストを折った瞬間から相手の戦意が無くなったようです」
「ならしばらく様子見かな」
「あ、見てください」
望遠鏡で相手を監視していた騎士の一人が大声で騒ぐ。
「どうした?」
「国旗が、相手のアンタレス国の国旗が降ろされています」
俺もドローンで確認すると士官の一人が船尾の国旗を降ろしている。
誰も止めようとしていない所を見ると船長の指示だな。
「ケリー、あれって」
「私は陸上専門でしたから確かなことは言えませんが、降伏の意思表示かと思います」
「なら呼び掛けてみようか」
「どうしますか?」
「船長と副官位をこちらに呼んでみるか」
「それって、危険では……」
「相手の方が明らかに大人数だ。
こちらから向こうに乗り込むよりもその方が確実だ。
それに、この船に乗せなければいいだけだ」




