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プレアデスの伝説 姫たちの建国物語  作者: のらしろ
第五章 プレアデス領国

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第107話 驚く使節団



 巡視艇に曳航された帆船が、ゆっくりと二ノ浜の湾内に入ってくる。

 俺たちの拠点であるこの浜は、穏やかな海に抱かれた天然の良港だ。

 その奥に鎮座する巨大なフェリーの姿が見えた時、帆船の甲板にいる使節団一行から、どよめきとも悲鳴ともつかない声が上がったのが、こちらにも聞こえてくるようだ。


「……まあ、そうなるよな」


 何度見ても、この世界では規格外の代物だ。

 俺の独り言に、隣で操舵桿を握るケリーがニヤリと笑う。


「守様、帆船は桟橋へ。我々はフェリーの隣でよろしいですね?」


「ああ、頼む。接岸したら、俺たちは先にフェリーに移って待っていよう」


「了解しました!」


 ケリーの返事も、もはや板についたものだ。

 指示通り、巡視艇は巨体を横たえるフェリーの隣にぴたりと接岸し、船体を固定する。

 その間に、帆船の方も無事に桟橋への係留を終えたようだった。

 船乗りたちが慌ただしく下船していくのが見える。


 俺たちは手早く巡視艇の固定を済ませると、タラップを渡って直接フェリーへと乗り移った。

 フランたちは、使節団をゴムボートでこちらへ運んでくる手筈になっている。

 一ノ浜の方は、まだ他国の賓客を迎えられるほど整備が進んでいない。それに、ダーナやフランにしてみれば、プレアデスの伝説に関わる者たちは、積極的にこのフェリーへ招き入れたいのだろう。


 いつものようにだだっ広い食堂で待っていると、やがてダーナを先頭にした一団が、緊張した面持ちで入ってきた。

 フランからの報告によれば、湾内に入ってフェリーの全容を見てから、彼らの驚きは最高潮に達していたらしい。

 そして今、その内部に足を踏み入れ、再び言葉を失っているというわけだ。


 特に、使節団長だというライオンの獣人は、その威風堂々とした見た目とは裏腹に、目を白黒させている。

 本来であれば、その場の空気を支配するほどの威圧感を放つのだろうが、今の彼からはそんな気配は微塵も感じられない。完全に度肝を抜かれたおっさんの姿がそこにあった。


 そんな中で、ひときわ異彩を放っている者がいた。

 後方で、ウサギの耳を持つ従者に手を引かれている、猫耳の少女。彼女が、獣人国の姫君なのだろう。

 彼女もまた、周囲の光景に驚いてはいるようだが、その大きな瞳の奥には、驚愕とは質の違う、何か確信めいた光が宿っているように見えた。


 後でフランから聞いた話になるんだが、プレアデスの姫に選ばれる者たちには、幼い頃から特別な教育が施されるらしい。

 その中には、俺……というより「使徒」に関する、かなりぶっ飛んだ言い伝えも含まれているという。

 曰く、ドラゴンすら一撃で屠る力を持ちながら、その人柄は慈愛に満ち、人々に幸運と恩恵をもたらす。

 曰く、ドラゴンですら追いつけない速度で空を駆る鋼鉄の甲冑を纏い、危機に瀕した同胞を救う。

 曰く、この世のものとは思えぬほどきらびやかな謁見の間にて、人々を迎え入れる……。


 ……あれ、その話って、どう考えてもここのことそのまんまやんけ。

 いかん、思わず訛ってしまった。

 だが、冷静に考えてみれば、シードラゴンは主砲で一撃だったし、空飛ぶ甲冑ってのはヘリのことだろう。攻撃ヘリなら、この世界のドラゴン相手でも十分通用するはずだ。対地ミサイルもあるし、最悪バルカン砲を顔面に叩き込めばどうにかなるだろう。

 そして、きらびやかな謁見の間、ねえ。

 今俺たちが必死こいて一ノ浜に建設中の迎賓館だって、このフェリーの食堂には及ばないだろうし、何より……食い物がな。


 特にドワーフたちにとって、キンキンに冷えたビールの魅力は抗いがたいものがあるに違いない。

 つまり、獣人国の姫君は、子供の頃から聞かされてきたおとぎ話が現実になった、くらいの認識なわけだ。そりゃ、驚きつつもどこか納得したような顔にもなるだろう。


 いい加減にしてほしいぜ、使徒とやら。


 あまりの衝撃に固まりかけていた使節団を、ダーナが柔らかな声で促し、席へと案内していく。

 そこへ、ドーラが浜にいたサーシャとアリエルを連れて食堂へとやってきた。タイミングは完璧だ。

 フランがダーナと共に立ち上がり、まずは俺たちの側の紹介から始めた。ダーナ、フラン、サーシャ、そしてアリエル。最後に、俺のことを「ここの代表であり、我々がお仕えする使徒様です」などと、とんでもない肩書で紹介し始めた。


 やめてくれ、と目で訴えるが、彼女たちは晴れやかな笑顔を返すだけだ。

 続いて、ライオンの獣人――宰相殿が、今度は自分たちの使節団を一人ずつ紹介していく。

 そして最後に、「我が国の希望」とまで言い切りながら、三人の少女を前に進ませた。


「プレアデスの姫が一人、ミャリーと申します。


 そして、プレアデスの伝説により選ばれし従者の兎獣人族のモモ。そして、その従者を務めます、兎獣人族のアンズにございます」


 ……モモと、アンズ。

 可愛らしい名前に、俺は何も言うまいと心に決めた。


 一通りの紹介が終わると、自然な流れで会食を兼ねた話し合いが始まった。

 当然、議題の中心はプレアデスの姫に関することだ。そして、俺の気持ちなど一切確認されることなく、その場で三人の姫……ダーナとフランも含めれば五人か? いや、サーシャとアリエルもいるから七人全員か? とにかく、彼女たちの共同生活が、あっさりと決定されてしまった。


 まあ、新しく来た二人も、猫耳のミャリー姫は可憐な少女といった感じで、ウサギ耳のモモとアンズは、その、なんだ。バニーガールそのものというか、愛嬌の中にも妙な色気がある。悪い話ではない、のかもしれない。

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>そこへ、ドーラが浜にいたミーシャとアリエルを連れて食堂へとやってきた。タイミングは完璧だ。 ドーラが連れてきたから最初違和感なかったけど、サーシャ(ハイエルフ)とアリエル(天使族)ですよね? ミー…
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