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海に行ったら呆然とするおっさんがいた

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/05/05

 5月です。

 初夏です。

 ありがたいことに祝日です。

 まぁ、もうすぐで連休終わりますけど……。


 実に暖かいです。

 なんなら少し暑いです。

 だからこそ思いました。


「海でも行こうかな。なんとなく」


 このなんとなくで動けるのが学生の良いところだと思います。

 まぁ、今年から就活始まりますけど。

 なんにせよ、私は海へ行きました。


 一緒に行く友達はいません。

 それどころか彼氏もいません。

 まぁ、突発ですしね。

 そりゃ、都合つきませんよ。


 いや、元々彼氏はいないし、友達もいないんですけどね。

 ちくしょう。


 さて、海に着きました。

 海って綺麗ですね。

 うん。

 実に綺麗だ。

 とっても綺麗。

 ……誰もいねえな。


 ここにきて自分のさもしい心に気づきました。

 私、ここで運命的な出会いをすることに期待していたようです。

 バカか。

 こんちくしょう。


「……かえろ」


 結構時間かけて来た海ですが、誰もいないんじゃなぁ。

 誰もってか、男いないし。

 なんて、思っていたら男がいましたよ。

 おっさんですが。

 砂浜から海を見て呆然としてやがります。


 背格好からして……わからない。

 ていうか、着ているものが滅茶苦茶でっせ。

 時代劇の撮影か何かか?

 とりあえず古風な格好しています。

 でも、どこか見覚えがあるような……そんな格好です。


 おっさんときたら海を見つめています。

 片腕に何か箱を抱えたまま、ずっと海を見つめていやがります。

 後ろに女の子がいるのに気づきもしません。


 声をかけようかなって思いましたが、どうにもそんな気持ちにはなれません。

 なので遠巻きに見つめていました。


 するとおっさんは意を決したように座り込むと抱えていた箱を静かに開けました。


「は?」


 私は思わず声を上げました。

 箱の中からもくもくと煙が上がってきたからです。


「え、なに? なになに?!」


 じっと見つめていると煙が静かに消えていき――。


「いや、なんでだよ!」


 思わず声を上げました。

 そこにはおっさんはおらず、代わりにおじいさんが居たからです。

 相変わらず呆然としたまま。


 私の声に気づいたおじいさんがこちらを向きました。


「あっ……」


 縋るように何か声を上げました。

 だから、私は――。



 逃げました。

 そりゃそうですよ。

 厄介事はごめんですから。


 帰りの電車で呟きます。


「一日を無駄にした……」


 スマホを開きます。

 これを家でいじっている方がまだマシだったような気さえしました。


 だってそうでしょう?


 私はさもしい心であったとはいえ、素敵な出会いを探しに行ったのです。

 決して奇妙な出会いなんて求めていませんから。


 まして、推定浦島太郎なんて私の日常には重すぎますよ。

 本当に。


 電車賃返せ。

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― 新着の感想 ―
鉄壁の平常心!! 就活には頼もしいスキル、圧迫面接も怖くくない。
ふと気付く。何処かで見たことがある様な、若づくりな格好のお婆さんが車窓に…………私は呆然としてへたり込んだ。  m(_ _;)m
 期待感の喪失に失った時間は、おっさんと主人公のどちらが上かなど言うに及ばず計り知れませんが、自身の感じた事のみが真実なのである。という皮肉的視点に描かれる非現実的な物語をも現代社会の闇が斬り裂く辛辣…
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