ゆいこのトライアングルレッスンM〜キスの嵐〜
「あ〜、もぉ!寒い!!」
朝からなんだか体がだるくてぼーっとする。
さっさと帰ろうと外に出ると今にも雪が降り出しそうな寒気に気分はさらに落ち込んだ。
「はぁ.....」
学校を出て何度目かになるため息をついた時だった。
「ゆいこねぇちゃん?」
聴き覚えのある声がわたしを呼んだ。
「むっくん!」
「どうした?なんかあった?」
「....そーゆーわけじゃないんだけど。....むっくんは塾?」
「うん」
「そっか....えらいね、頑張ってね」
若干無理して笑顔を作って見せる。
ヒラヒラと手を振って歩き出そうとした時。
「ゆいこ!」
むっくんの手がわたしの腕を掴んで引き寄せた。
「....何があったか知らないけど、元気出せよ」ちゅっ
怒ったようにボソッと呟いて、急に近づいてきたむっくんの唇が、わたしの額を掠った。
「え、ちょ、むっくん!?」
慌てて顔を上げたが、風にように走り去ったむっくんの後ろ姿はもうすでに小さくなっていた。
「....なんなの....」
額を抑えて呆然としていると、ぽんっと肩に大きな手が置かれた。
「え!?タ、タクミ!?」
「よぉ、何してんだ、こんなところで」
「タ...タクミ、今の見てた....?」
いつの間にかそこに立っていた笑顔のタクミだが、目が笑ってない気がして、思わず吃ってしまう。
「....今のって?」
「あ、ううん、見てないならいいの!気にしないで!!」
慌てて両手と頭をブンブン振るわたしをタクミが探るような目つきで見つめた。
「ゆいこ、顔真っ赤だけど大丈夫か?」
「ななななんでもないよ!」
「熱でもあるのか?」
タクミの顔がゆっくりと近づいてくる。
思わずぎゅっと目を閉じて身構えたわたしの額に、たくみの額が重なった。
「う〜ん....熱はないみたいだけど...」
「だ、大丈夫!」
「ムリ...すんなよ?」
いつになく優しくタクミがわたしを心配そうに覗き込む。
「風邪なら....オレにうつしとけ」ちゅ
タクミの若干乾燥した唇がわたしの唇に触れた。
「へっ!?え!?タ、タクミ!?」
「....送る」
挙動不審になるわたしとは裏腹に、まるで何事もなかったようにそう言ったタクミの耳は真っ赤に染まっていた。
「だ、大丈夫!走って帰るし!じゃぁね!!」
「あ、おい!ゆいこ!」
呼び止めようとするタクミの声を振り切ってわたしは全速力で走り出した。
家に辿り着くとわたしは制服のままベッドへとダイブする。
熱が上がってきたのか、むっくんとたくみの理解不能の行動のせいか。
フラつく頭を枕に押し付け、毛布を頭から被って丸くなる。
なんなの、なんなの、なんなの....もぅ!
頭の中でむっくんとタクミのキスがリプレイされて止まらない。
情緒がおかしくなって涙が溢れそうになった時。
コンコン
小さくドアがノックされた。
「....お母さん?ご飯ならいらない....」
布団を被ったままモゴモゴと答えるが聞こえなかったのか、カチャと静かにドアが開かれた。
静かな足音がして、ギシっとベッドが軋む。
そこに誰かが腰をかけた気配を感じた。
「....ゆいこ。大丈夫か?」
「ひろし?」
わたしは顔だけ毛布から覗かせた。
「風邪か?」
ひろしの大きな手がわたしの額を包み込む。
温かいひろしの手に等身大の安心感を覚えた。
「少し、熱いかもな。」
「....ちょっと...色々あって...」
言いながら涙が溢れそうだった。
「眠った方がいい。眠れそうか?」
「....ひろしが....手繋いでくれたら....」
ひろしの手がわたしの手をきゅっと握った。
反対の手でそっと髪の毛を撫でてくれる。
瞼がどんどん重くなって行く。
「....ゆいこ...?」
遠ざかる意識の中で大好きなひろしの声がわたしを呼んだ。
「....ん....?」
超絶な眠気に必死に抗いながら相槌を打つ。
「おやすみ....ゆいこ」ちゅ
ひろしの柔らかな唇を自分の唇に感じた。




