「あなたの魔王はいまここに」
タイトル頂いて書きましたー!
魔王、勇者、聖女……そんなものがこの世界には存在する。
そんなもののせいで、世界はいつも混沌に包まれていた。
人族も魔族も、疲弊しきっていた。
ならば、聖女の力で終わらせましょう――――。
「というわけで、はい、コレ」
「……え?」
魔王城の謁見の間。
ゴテゴテと装飾された玉座にちょこーんと座る黒い仔猫。
その仔猫を両手でドーンと指し示し、ニッコリ笑ってみせた。
「あなたの魔王はいまここに」
「は?」
魔王の右腕であるドラキュラ大公が、ぽかーんと口を開けたままでフリーズしていた。
「いえね、脳筋勇者は聖女の転移能力で一気に魔王城に乗り込みたくないとか言って、三万の兵士とともにここを目指して歩いてきているのよね」
「……三万!? ん? え……歩いて? 何年掛けるつもりだ?」
「ね? 聞いた瞬間に馬鹿ってわかるでしょう?」
「え……あ、うむ」
ドラキュラ大公に同意を求めてみた。
そして、同意を得られたので話を続ける。
「だから、とりあえず、先に来たのよ」
「え?」
黒猫を持ち上げて、玉座に座り、膝の上に黒猫を乗せる。
頭を撫で撫ですると、ペシッとショボい猫パンチをされた。
「だって、到着まで王城でくつろいでいたら怒られるでしょ?」
「……それはそうだろう」
「だから、こっちで待つわ」
ドラキュラ大公が頭を抱えて、仰け反りながら「意味がわからーん!」と叫んでいたけど、無視無視。
「魔力いっぱい使って疲れたから、部屋で寝るわね」
「は……?」
膝の上の仔猫を抱えて魔王城内を歩く。
通りすがりの魔族たちをちょっと教育的指導しつつ、魔王の私室を教えてもらった。
「はぁ。疲れた!」
魔王のベッドにダイブする。
聖女用のドレスがシワになるとか、裾が膝までずり上がってるとか知らない。監視の目も、怒る侍女もいない。
もっと早くにこうしていればよかった。
「ミャッ、ミャウッ(いい加減にしろ、元に戻せ)」
「いやよ」
真っ白な髪に銀色の瞳、膨大な魔力。
ただそれを持って平民の家に生まれただけだった。
言い伝えの聖女と同じ色というだけなのに。物心つく頃には『聖女』と呼ばれ、祀り上げられていた。
同じ年に生まれた勇者と二人で、魔王の討伐に行けと命令された。
勇者は筋力こそが全てだと思っている脳筋。勇者にしか使えないという聖剣があるのに、それも使わない。
「ミャ、ミャミャミャ……(それ、聖剣だろ……)」
「ええ。使わないって言うから。ずっと私が使ってるわ」
「……ミャウ(お前が勇者でいいじゃねぇか)」
「いやよ。これ以上の役職なんて、面倒くさいもの」
仔猫を抱きしめると、ほんわりと温かくて、睡魔が襲ってきた。
「おやすみ、魔王」
「ミャォォォ……(寝るのかよ……)」
真っ黒なツンツン髪をオールバックにした魔王。
煌めく紫の瞳と、男らしい顔立ち。
魔王の目の前に転移した瞬間に、一目惚れした。
頭の回転も素晴らしく早かった。
目が合った瞬間、防御シールドを五枚重ねし、私の手足に拘束魔法。
私が全ての魔法をキャンセルすると、「聖女だな」と即座に理解した。
勇者だったら……『ぎゃぁぁぁ! なんか目の前に現れた!』とか叫んで、『うぉらぁ!』とか殴りかかってきて、重力魔法に押し潰されながら『くそぅ! だが魔法なぞに負けるものか!』とか言って、起き上がろうとして、色んなところを骨折するのよね。
あぁ、考えただけで頭痛がする。
「寝るわよ。眠いもの」
「ミャォォォ、ミギャゥ(ハァァァァ、好きにしろ)」
「ねぇ、魔王」
「ミャ?(なんだ?)」
「勇者が来るまで時間があるし、私のこと好きになってね」
「ミ、ミキャウ!?(な、なんでだよ!?)」
ねぇ、魔王。
私ね、欲しいものは手に入れる主義なの。
覚悟しててね?
── おわり? ──
読んでいただきありがとうございます!
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汎野さん、タイトルありがとうございます!ヾ(*´∀`*)ノ