01 魔王、召喚しました
「ここより、魔術師の試練が始まります。召喚術を行いますよ!」
この場所は、異世界の魔法国立学校である。
この学校には、騎士や冒険者を目指す若者たちが集い、年齢の規定もなく、素人から学徒、またはベテランまで、様々な者たちが混沌とした学びの場を共有していた。
学科には、剣や槍、斧といった接近戦を学ぶ戦士科、魔術を学ぶ魔法科、そして銃や大砲など火薬を扱う遠距離戦闘や理論を学ぶ火器科がある。
俺の名前は、ローラン・バン・キャメロン。
実は、俺には前世の記憶が残っている。
その前世の記憶には、剣や弓矢が主流の世界があった。
そこでは、身体と鉄で殴り合うような荒々しい世界であった。
そして、死の淵に落ちた時、女神の声が聞こえ、気がついたら転生していた。
この異世界で、私が気づいたのは、魔術という不思議な力が存在するということであった。
魔法陣を描き、詠唱をすることで、自分の味方となる魔物を召喚することができる。
私のクラスメイトたちは、次々と魔物を召喚し、それに加えて、新たな魔物を召喚することもできる。
魔術に慣れ親しむことができれば、二匹、三匹と魔物を連れて行くことも可能だ。
「次は、ローラン君だよ。用意はいいかい?」
「はい、出来る限りのことはやってみます。」
俺は先生に呼ばれ、召喚の広間に立っていた。
教科書で暗記した魔法陣を描き、韻文を唱える。
同級生たちと同じように、魔法陣が輝き始めた。
しかし、俺の魔法陣は他のクラスメイトたちのものとは異なった。
それは漆黒に染まり、妖しげな煙が立ち上がっていた。
同級生たちは怯え、先生も身構えている。
やめるべきか、それとも続けるべきか。
だが、何も指示が与えられない。
勝手にやめてしまえば、未来を失うことになるかもしれない。
「ままよ!」という言葉が彼の口をついた。
強い意志の力が、どす黒い光を大きくさせ、教室を暗闇に包み込んだ。
光が消えた後、そこには女性が立っていた。
彼が生まれ変わる前に遭遇した、その女性の顔が、彼の心に深く刻まれていた。
女性は禍々しい角を生やし、ティアラのような装飾で自身の種族を主張していた。
彼女の黒髪は腰まで伸び、その瞳は闇よりも深く、貴族令嬢にも匹敵する気品を醸し出していた。
彼女は前世で熾烈な戦いを繰り広げた魔王であった。
魔法陣からは火花が散り、光が失われた。
そして、魔王の瞳がゆっくりと開かれた。
金色の瞳が彼を吸い込むように輝き、その美しさは世界でも類を見ないものだった。
「ま、魔王!?」
「アークデーモンだな!初めての召喚術でよくやった!」
俺が口を開こうとした瞬間、先生が教室に入ってきた。
アークデーモン?違う、目の前にいるのは確実に魔王だ。
彼女はかつて世界征服を目論んで、人々を恐怖に陥れ、そして俺が倒した敵だ。
魔王はこちらを見ると、身に着けるドレスの裾を掴んで、貴族のような品位を示した。
彼女の無言は、ますます不気味な雰囲気を醸し出す。
「知性を持った人型は素晴らしいものだ。ローラン、お前は進級だ」
そう言われ、俺はその場で進級を許された。
いつもなら飛び跳ねて喜ぶところだが、今はそんな余裕はない。
いつ彼女が暴れ出すか、警戒しなければならない。
「どうした?落ち着かない顔だな。気に入らなかったら消せばいいだろう?」
そうだ!召喚術は消せるはずだ!
キャンセル!
「消えろ!」
何も起こらない。慌てて色んなポーズを取ってみるが、やはり何も起こらない。
魔力の流れ方を変えてもだめだ。消えない……。
そこで、魔王は俺に近づき、頬に手を当てた。
本当に美しい魔王だ。
「私を消すつもりか……?」
悲しげな声だった。
そして、この言葉は前世でも強く記憶に残っている。
最後の一撃を放つとき、彼女が口にした言葉と同じだった。
「消えない……」
「そんなはずがないだろう?」
先生は疑い深い口調で言った。
しかし、消えないのだ。
「何故だ、こんなにも貧弱な魔族がいるのか?」
クラスの陽キャが、先生に告げられた進級の結果に不満を抱いていた。
そして魔王のあまりにも戦闘には不向きであろう様相に勝てると踏んだのだろう。
「よし、コカトリス!オレがこの貧弱な魔族を倒してやる!」
陽キャが魔王に向かってコカトリスを放った。
コカトリスという魔物は、石化魔法を使うことができる。
魔王の身体は、みるみるうちに石に変わっていく。
石化が全身を覆いつくすと、そこには魔王の石像が立っていた。
「何だ、こんなに弱い魔族では進級できないだろう!」
先生に注意されながらも、陽キャは態度を改めることはなかった。
さらに、彼は魔王の進級を取り消すよう主張した。
しかし、俺はその石像に見とれていた。
その微かなひび割れが次第に広がっていくのを見ていた。
「石化魔法を使ったらすぐに砕くのが常套手段でしょう。」
全員がその石像を見つめていた。
石が崩れ、魔王の石化魔法が解けた。
「まあ、そんなことはレジスト魔法で事前に済ませておりましたが」
魔王は冷静かつ冷酷に、石化の恐怖に震える陽キャを嘲笑った。
石片を払い落としながら、恐怖に取り付かれたような笑みを浮かべて陽キャを睨みつけた。
「ひっ!?コカトリス!もう一回だ!」
コカトリスが動こうとした時、魔王は手を突き出す。
コカトリスの影から無数の手が伸び、闇魔術で影を操る。
魔王はどこで魔術を学んだんだ?
手がコカトリスに絡みつき、影に引きずり込まれていく。
コカトリスの不愉快な悲鳴だけが教室に響き渡る。
「他愛無いですね」
陽キャはその光景に恐怖し、怯えながら後ずさる。
そして、魔王と目を合わせると、顔がみるみる青ざめる。
人が死と向き合ったときの、絶望の顔だ。
「ひ、ひぃぃい」
情けない声を出して、陽キャは教室から逃げ出した。
クラスメイトたちはその光景をただ見ているだけだった。
そしてその沈黙の中、魔王が再び俺の前に立つ。
にこりと笑顔を見せ、先程の陽キャに見せたような残忍さが消え、親しみを感じる笑顔に変わった。
だが、俺だけはそれを感じ取ることができなかった。
そして、魔王が鈴のような透き通った声でこう言った。
「これからは、よろしくお願いしますね、勇者」
たぶん、俺も相当青ざめていたと思う。
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