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魔法の世界に魔女はつきもの

あらすじ


なんやかんやあって魔導人形になったハルニアは、森から抜け出せず迷子になってしまった!

その最中、偶然出会った魔女に拾われるのだが……!?

 魔導人形『ハルニア』にインプットされた知識は通常、非アクティブ領域に保管されている。

 つまり、知識を手に入れたからといって、それを引き出す切っ掛けがない事には意味がないのである。

 今回引き出せたのは「魔女」に関する詳細なデータ。それによれば——


——————————


———


「それであなた、どこからこの森に来たの? 外国の子?」


「わからない……です」


「う〜ん……。困ったわねぇ」


 森の中を緩慢に歩く二人。薄暗い針葉樹林の中を女性は迷うことなく進む。女性が話すには、この先に住んでいる家があるらしいのである。


「あの、そういえばお名前はなんですか?」


「あ、名前まだ言ってなかったわね。——私の名前はカイザ。あなたのお名前は?」


「わたしはハルニアです。……カイザさん?」


「そう。カ、イ、ザ。

 ——見た目によらずしっかりした子ね、()()()()()()()。何歳?」


「あ〜、えっと……10歳? くらい?」


 他愛もない会話をしながら道なき道を歩いていると、「お、戻ってこれたわね」カイザは独り言のようにそう言って、小さく嘆息をついた。


 カイザ——そう名乗った人物は、長袖のチュニックにスボンとブーツを着用しており、背中には大きなバックパック、腰には山刀を引っ提げている長身の女性だ。武器を携帯している以上警戒すべき相手なのだろうが、現状疑う必要は殆どないだろうとハルニアは考えている。


 彼女は普段ここら一帯で狩りをしているらしく、今回は偶然ハルニアが襲われているところを目撃、咄嗟に助けようとしたのだそうだ。


(——まぁ、いざとなれば転移魔法で逃げることもできるし)


 ついて行くだけ吉である。はず。

 と、考えを纏めている内に、鬱蒼とした森へ差し込んでいる光が見えてきた。


 「あそこが私の家よ」とカイザは手で示し、その明るい方へ進んでいく。あたりにはいくつもの切り株があり、森に光が差し込んでいる理由を示している。


 遠くから少しだけ見えていた輪郭はより鮮明になっていき、その光の下に立派な木組みの家がある事に気づいた。


 差し込んだ陽光が、ログハウスを照らす。

 周辺は簡易的な木の柵で囲まれており、警戒心を表すかのように、削られた木の先端を外に向けていた。


 カイザはその柵の一部、開閉できる部分を押し開けて、言う。


「いらっしゃい、私の家へ」


 魔女の家に到着した。


——————————


———


 「魔女」とは何か。

 普遍的な視点から語ると、それは単に、人に(あだ)なす、人の形をした人ならざる者の呼称である。

 人間に対して攻撃的、排他的、否定的。大抵は分かりあえない存在で、そんな魔女が暮している森には近づいてはいけないと()()()()()

 ——わざわざこのような言い回しをする以上、実際の魔女は大きく違うのだが。


——————————


———


 紅茶でいいかという呼びかけに「あ、はい、大丈夫ですよ」と応えて数分後、出された紅茶を啜りながらハルニアはあたりを見回す。


 ……おそらくかなり中世風な家だ。それもヨーロッパ系統の。

 視界右手側、木製の壁にはワードローブと食器棚が並んでいる。どこからかパチパチと音がするが、おそらくそれは正面の暖炉の中から聞こえてきているのだろう。レンガ造りの暖炉の隣にはコンロがあり、暖を取りながら調理ができるようである。


「紅茶、おいしいです」


「本当? ごめんなさいね、お砂糖用意できなくって」


「いえいえ」


 ハルニア本人は紅茶に砂糖をあまり入れないので、これで満足である。

 そんな事より気になっている事が一件。そう思ったハルニアが疑問を投げるように視線を投げると、カイザは微笑んで、口を開いた。


「紹介するわね、この子はアラム。私の娘よ」


 左側のすぐ横、二人用なのだろう大きめのベットに腰掛けるカイザと、紹介された「アラム」という、少女、なのだろうか。ベッドに寝ているハルニアより幼いその子は


「こんにちは」


 と、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を向けて、ハルニアに挨拶をした。


「こんにちは。……娘さん、いらっしゃったんです、ね……?」


 どう尋ねれば良いのか分からず、しどろもどろになるハルニアにカイザは頷いて答える。


「ええ。

 ……この子のこれは生まれつきなの。"魔石病"って言ったら聞いたことあるかもしれないわね」


「あ〜、はい 聞いたことはあります」


 カイザはアラムの頭を撫でて目を細めた後、ハルニアに向き直って目を合わせた。


「ごめんなさいね、一度顔を合わせてからおはなしした方がわかりやすいと思って」


 そう語るカイザになるほどと相槌を打ちながら、ハルニアは脳内にある魔石病の情報を収集していく。


(『先天性疾患』『治療困難』『措置を取らなければ誕生時点で余命約12年』……んん、雲行きが怪しいぞ?

 ……あ、でも治療法あるのか。なら安心だ


「この子の父親——私の夫なんだけどね、街の方に治療法を探しに行っているのよ。絶対に治してみせる! って」


 な……んん?)


 雲行きは怪しくなるばかりである。

進んだ読者のための豆知識ライブラリ「魔石病」:

体内の魔力が制御できない場合に発症する病気。先天性のものが多く、罹れば最後、12歳までには死ぬとされている。古代には治療法があったそうだが、現代では有名な不治の病だ。

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