魔女と眠りの姫
昔々 とある自然豊かな国にお姫様がおりました。
国王は大層可愛がられ、お姫様の為に森林を伐採し遊び場や施設など造りました。
それを良く思わない西の魔女はお姫様を眠りにつかせてしまいました。
お姫様の目を覚まさせるにはある3つのモノが必要ですぐ集められるモノだと言いました。
王様は兵士に取ってくるよう頼むが誰一人とって来た者はおりません。
当時12歳だったお姫様は20歳になっておいでです。
王様は広くおふれを出すことにしました。
『姫を眠りから覚ました者には金貨1千枚、若しくはそれに相当する物を与える』
金貨1千枚は1人が一生遊んで暮らせるだけのお金だ。
それを見た1人の貴族が屋敷の下働きをしているリックに言いました。
「楽に取ってこれる物のようだから、お前が取ってこい。そしたらお前の妹を探し出して面倒見ると約束しよう」
妹は奴隷として売られたがリックは探せ出せずにいた。
探し出せたとしても買い取るお金もない。
そんなに楽なら他の誰かが取ってきそうなものだが…
下働きが貴族様に逆らう事も出来ないので受ける事にした。
まず、西の森に住む魔女を訪ねて行きました。
「お姫様を助けたいのですが、必要なモノを教えて頂けますか?」
魔女は言いました。
「一つ目はペガサスの鬣だよ
ペガサスは星の綺麗な夜、北の湖に現れる
取ってきたらまたここに来な」
お館様に馬を借りると北の湖で夜を待った。
すると、真っ暗な闇の水面がキラキラ輝きだし一頭のペガサスが現れた。
「我に何様ぞ、人間よ」
「貴方様の鬣が欲しいのですが…」
「ならば お前の髪と交換だ」
「はい!それで良ければ」
そう言うと、ペガサスの鬣とリックの髪が輝き、リックの頭にはペガサスの銀の髪になっていた。
「あ、ありがとうございます‼︎」
一つ目のモノは確かに直ぐ手に入った。
ーーーーーー
また西の魔女に伺いにやって来た。
「おぉ 鬣は無事手に入ったようだね
シシシシ…
それじゃ次は竜の血だよ
竜は東の岩山を寝ぐらにしててね、呼ぶと降りて来てくれるさ」
リックは今度は東に馬を飛ばし、岩山の下から竜を呼んでみた。
「東の竜よ!お願いがあって参りました。
どうか姿を見せて下さい。」
ズズッと大地が音をたてると岩山のてっぺんから竜が顔を覗かせた。
「我に何様ぞ、人間よ」
「貴方様の血が欲しいのですが…」
「ならば、お前の血と交換だ」
ペガサスの時と同じやり取りだ
「はい。それで良ければ」
そう言うとリックの体から透明な液のようなものが宙に湧き竜の上空に溜まった。
同じ様に竜から出た液がリックの顔の前に浮かぶ。
その液が口から入り体に駆け巡る。
少し疲れたが、これも直ぐ手に入った。
「あ、ありがとうございました」
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そして3度目 魔女の所にやって来た。
「竜の血も難なく手に入ったようだね…シシシシ
さぁ、最後はシルフの心臓だよ
心臓は…」
そこまで言うとリックが言葉を遮った。
「心臓ですか?」
「あぁそうだよ 何だい、やらないのかい?
まぁお前さんの自由だがね」
リックは考えた。
今までの事を振り返れば自ずとそれが見えてくる。
あぁだから誰も取ってきた者はいないのか…
ここで断れば屋敷には戻れないし、妹探しも遠くなる
そう思うと魔女に話の続きをお願いした。
「シルフは風吹く大地に現れる
南の草原に行くといい…そうだ何か花を持って行きな」
今度は南に馬を走らせた。
南の草原に着く前に魔女に言われたとおり花を買った。
色々迷ったが精霊に合いそうな白いサンカヨウの花を持参した。
「南に住むシルフよ お願いがあって参りました。」
「あたしに何か様かしら?人間さん」
「あなたの し、心臓が欲しい…のですが」
「ふふっ なら 貴方の心臓と交換よ」
「はい。あ、その前にこの花を」
リックはサンカヨウの花を差し出した。
「まぁ、珍しい花を持って来てくれたのね
では、心臓の交換をするわよ」
シルフの紡ぐ言葉によりお互いの心臓が体内で光り一時的に心臓が熱くなる。
うぅ…
そして 一気に冷めたかと思うとほのかに熱をもってきた。一度死んで生き返るような感じか…
治るとまた礼を言って南の草原を後にした。
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「来たかい?」
魔女は気配、いや既にこの未来が予測出来ていたかもしれないがリック来ると、ペガサスの鬣、竜の血、シルフの心臓を確認した。
「ひとつ教えてやるがね、お前の妹はもうこの世にいないよ」
「そんな!」
「だから選ばせてあげよう
妹を生き返らせるか、姫を眠りから醒すか」
リックはがっくりと項垂れたが、よく考えれば、救おうと思った妹は既にこの世にいない。
人の生をもて遊ぶのはどうだろう…
生きている姫を助けた方が理にそっているだろう。
「姫様を眠りから醒まして下さい。」
「それでよいのかい?」
魔女は意地悪そうに聞き返す
「元より命を掛けるつもりでいました。
妹もいない今 生きる張り合いも無くなった。
せめて姫様が幸せになってくれる事を祈ります。」
それでは明日一緒に城まで行くとしよう。
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魔女の魔法で城の門前まで移動してきた。
兵士はすぐさま門扉を開けると内側に別の兵士が待っており、城内の姫の眠る間まで案内してくれた。
そこには既に王様が待っており、お妃様、主治医、侍女、リックの雇い主の貴族も控えていた。
「じゃぁ始めるよ」
魔女が呪文を唱えると姫を取り巻く床に魔法陣が浮き上がり、リックの全身が輝き出した。
更に呪文を唱えるとふわっと風が吹きサンカヨウの花びらが宙を舞った。
輝きは姫に移り リックは力なく床に倒れた。
皆んな姫に近づき様子を伺う
「姫!姫!目を醒ましてくれ!」
すると、瞼がぴくりと動き、目をゆっくり開いた。
「お父様…お母様…」
「さて、約束は果たしたよ」
丸テーブルに置いてあった金貨の袋を魔法で拾いあげるとリックの体と共に消えてった。
「あ〜私が貰うはずの金貨が⁉︎」
貴族は金貨を取られ、その場に膝を折った。
お妃様はこれで元通り幸せに暮らせるわね!
そう王様に言うと、王様は目を虚ろ虚ろしながらベッドに前倒れになった。
主治医は直ぐ様王様の脈や瞳孔を調べると
「こ、今度は王様が眠ってしまったようです…」
お城は暫く慌ただしくなったが、王様不在?のもと
姫様が婿を迎え国を支えていった。
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「ねっ、リックは私の心臓を貰ったんだから死なないでしょ?」
「シルフは頭がいいね〜
人間としては生きられないがね、これからは精霊として生きていけばいいさ!妹と一緒に」
草原にサンカヨウの花がポポポポッと花を咲かせた。
空から雨が降るとサンカヨウは花びらを透明に変化させ、その中から妹のフィーニが現れた。
横たわっていたリックの体も小さな精霊へと変化した。
人の手のひら位な大きさになった2人はお互い手をとり精霊として幸せに暮しました。
読んで頂きありがとうございます。
つたない文章、語学力で申し訳ありません。
童話は正当なハッピーエンドでない場合が多いように思います。
そんな物語が書いてみたくてチャレンジした作品です。