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灯台下暗し



シルラーナが平常に戻ったのは二日後だった。


未だ反動で体を動かすのも億劫でベッドの住人となりつつも魔王に悪態を吐いて、例の勇者の息子などを食べてはいないかと疑ってかかった。


その為、折角彼女の為に甲斐甲斐しく世話をしてやったものを、と魔王はご立腹だ。



「お前があの状態であったのに何故小僧に構う必要がある?俺を愚弄し過ぎた。動けないお前の食事や下の世話まで見てやった礼がそれか」


「なっ、ななな、そんなこと……!」


「覚えてないとでも?熱で頭をやられたとしても記憶まではどうにかなるわけではないだろうに」



言わずとも良い事を口に出してはギャンギャンと恥ずかしさとやり場のない気持ちをぶつけるようにシルラーナも吠える。


暫くそうして言い合いをして、しかしまだ体力も気力も回復していない為に悔しげに口を(つぐ)むと彼女はもういい!と布団を被って魔王に背を向けて不貞寝の姿勢を貫いた。


まるで子どものようだと自身でも思ったが魔王も呆れたようにそんな彼女を見つめては頭を掻き、荒く溜め息を大きく吐き出し部屋の外へと向かう。



「小僧の様子を見てくる。アレが奪われ行き場がわからなくなるのは面倒だ」



勇者のみ扱う事の叶う武器をさし、決して小僧の心配などではないと放ちながら廊下へと出ると彼が借りた部屋の扉をノックする。


間違って鍵のかかった扉を開けようとすれば自身の怪力で扉を破壊してしまう恐れがあるからだ。そんな事で人ではないとバレるのは間抜けな話だ。


パタパタとかけてくる軽い足音の後に鍵を内側から開ける音、そして少し寝癖をつけた少年が魔王を見上げ少し前に顔を合わせた時と同じくぎょっとしたような反応を示す。


まだ自分たちのあれを気にしているのかと魔王は意地の悪い笑みを口許に貼り付け、少年に申し訳なさそうに謝罪した。



「先を急いでいるだろうに、俺たちの都合で留めて悪いな。こういった場所に来るのは久しくて、少し羽目を外し過ぎた。あと一日ほどでシルラーナも歩けるようになる。だから、それまでにここを出る仕度を整えてくれ」



表情と吐き出す言葉の差があったが少年は違和感を持つどころではなく、ぎこちなく笑みを返すとあたふたとしながら頷きそそくさと部屋に引っ込んでしまった。


まともな会話にならなかったものの、魔王は鼻で笑い飛ばし次に階下へと足を向けた。


随分と慣れた様子で二人分の食事をもらい、上へと器用に食器を持ちながら自身らの部屋にとそれらを運び入れる。


そしてまだ布団おばけと化しているシルラーナに飯だと声をかけて側に食事を置いて、自身は早々に食器に手をかざし食べたように偽装をするとドカリと一人がけの椅子に座り背を預けた。


また少年の預け先を何となく考えようと頭を働かせ始め、ふと無邪気に笑うココペリの事を思い出す。


子守りを任せてついでに城も任せてきたが、奴は子ども好きだ。少年も一応まだ子どもと見られる範囲の年頃。数年でそうではなくなってしまう年ではあるが、それでもココペリの故郷ならば女神の武器の存在もあまり詳しくはないはずだ。


何せ離れた土地。信仰する神々も違う、様々な種が寄り集まった国。それがココペリの指す故郷であるのだから。


門戸は広い。但し害悪を持ってその地を侵そうとの意志があればココペリも善き友人から悪神としての一面も覗かせる流れとなる。



神々もまた一面だけを持つとは限らない。生き神ならば尚の事。



「破滅の爪が本領を発揮するのを見たいが、累が及ぶのは少しな……」



今回は追い出されただけで牙も爪も交えていない為に戦いに対しての欲求不満を感じ己と同等、若しくはそれ以上と認めたココペリに対して何をやらかすか自身でもわからない。


それでもシルラーナと共に過ごした期間のそれで幾らか戦闘への欲求も薄まりつつある。


今ならココペリを呼んだとしても本能に振り回されない筈だと思いたい。


己の力を使って城に戻れない今、正体をばらさず穏便に勇者の息子をこの地から追い出すにはそれしかないのだから。



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